婚約破棄された研究令嬢の辺境開拓日誌~前世の知識で特効薬を作ったら、冷徹公爵様が過保護になり、国から泣きつかれました~

黒崎隼人

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番外編:侍女は見た!氷の公爵様の溺愛日誌

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 私、エマは、エリアーナ様付きの侍女です。
 最初、エリアーナ様がこの城にいらっしゃった時は、正直どうなることかと思いました。王都から追放されてきた罪人のお嬢様。きっと気難しくて、我儘なんだろうなって。カイル様も、それはそれは冷たい態度でしたし。
 でも、私の予想は、良い意味で全部裏切られました!
 エリアーナ様は、とっても優しくて、真面目で、何より薬草のことになると、目がきらきら輝いて、本当に素敵なんです。彼女が作った霜焼けの薬には、私も助けられました。
 そして、何より驚いたのは、ご主人様であるカイル様のご変化です!
 あの『氷の公爵』と呼ばれ、万年真冬のようなお方だったのに、エリアーナ様と関わるようになってから、まあ、変わる変わる!
 最初は、遠くから温室を眺めているだけだったのが、いつの間にか毎日通うようになって。エリアーナ様が土で汚れた顔で笑いかけると、カイル様の口元がほんのり緩むんです!あのカイル様が!侍女仲間と「見ました!?今の!」って、こっそり大騒ぎですよ。
 ユーリ村から帰ってきてからなんて、もう大変!過保護、いえ、溺愛スイッチが全開です。
 エリアーナ様が「少し肌寒いですね」と呟けば、次の瞬間には最高級の毛皮のショールが五枚くらい用意されるし、「この資料、文字が小さいな」と言えば、大陸中から取り寄せた最新式の拡大鏡が十個は届きます。
 ある日のこと。エリアーナ様が研究に夢中になるあまり、昼食を抜こうとしたんです。
 そしたら、カイル様が自ら厨房にやってきて、「エリアーナが食べやすいように、一口サイズのサンドイッチを作れ。栄養バランスも考えろ。それと、彼女が好きだったはずのベリーを使ったデザートもだ。急げ」って、鬼気迫る表情でシェフに命令するんですから!
 シェフは震え上がりながら、人生最高のサンドイッチを作っていました。
 そして、極めつけはプロポーズの瞬間!私は、温室の陰からこっそり(いえ、エリアーナ様の身を案じて!)見守っていたんですけれど……。
 あのカイル様が、跪いて、あんなに熱烈な愛の言葉を……!もう、涙で前が見えませんでした!
 結婚されてからのカイル様は、さらに甘々です。執務中も、一時間に一度はエリアーナ様の様子を見に来ますし、二人きりになると、それはもう……。先日も、エリアーナ様の髪についた葉っぱを、カイル様がそれはそれは優しく取ってあげて、そのまま髪にキスを……。
 きゃー!もう見ていられません!でも見たい!
 最初は警戒していた追放令嬢は、今やこの領地を春に変えた、私たちの太陽です。そして、冷徹な主人は、太陽の前でだけ溶けてしまう、甘くて優しい雪だるまになりました。
 ああ、明日もカイル様の溺愛っぷりを観察するのが楽しみ!
 侍女エマの、秘密の楽しみは、まだまだ続きそうです。
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