転生したら無自覚に世界最強になっていた件。周りは僕を崇めるけど、僕自身は今日も日雇い仕事を探しています。

黒崎隼人

文字の大きさ
11 / 17

第10話「魔王、完全復活。そして戦場へ」

しおりを挟む
 聖なる秘宝を手に王都へ帰還した僕たちを待っていたのは、絶望的なニュースだった。

「魔王が……魔王が、完全に復活した……!」

 伝令兵の悲痛な叫びが、王宮に響き渡る。

 魔王は大陸中央の休火山を根城とし、魔王城を出現させると、そこから無数の魔物たちを世界中に解き放った。
 帝国は一夜にして壊滅し、自由都市国家群は次々と陥落。
 人類の版図は、瞬く間に塗り替えられていった。

 僕たちがいるヴァルハイト王国も、もはや風前の灯火だった。

「もはやこれまでか……」

 玉座で国王が天を仰ぐ。
 貴族たちはうろたえ、城内はパニック状態に陥っていた。

 その中で、リリアーナ王女だけは、毅然とした態度で僕の前に立った。

「ユウ。あなたがいれば、まだ希望はあると信じています」

 彼女のまっすぐな瞳が、僕の心に突き刺さる。

(僕が……希望?)

 ダンジョンでの一件で、自分の力が普通ではないと少しだけ自覚した。
 でも、魔王を倒せるなんて確信は全くない。
 怖い。逃げ出したい。

 でも、僕の脳裏に浮かぶのは、これまで出会った人々の顔だった。
 商隊のダリオスさん、スラムの子供たち、ランズデール辺境伯、騎士団のガイウス、魔術師のエリン、そして、リリアーナ王女。

 みんな、僕に親切にしてくれた。
 僕の「たまたま」や「偶然」を、信じてくれた。

(みんなを……助けたい)

 僕の原点は、いつもそこにあった。
 お人好しで、困っている人を見過ごせない。ただ、それだけだ。

「……行きます」

 僕は、手の中の聖なる秘宝を握りしめた。

「僕が、魔王のところへ行きます」

「悠殿!」「ユウ!」

 僕の決意に、皆が息をのむ。

「一人で行くというのか!? 無謀だ!」

 ガイウスが止めるが、僕は首を横に振った。

「大丈夫です。僕が行けば、きっと、なんとかなる……気がします」

 それは、何の根拠もない言葉だった。
 でも、不思議とそう思えた。
 ほんの少し芽生えた自己肯定感が、僕の背中を押してくれていた。

 国王は、王国の、いや人類の全ての希望を僕に託した。

「頼む……! 世界を、救ってくれ……!」

 僕はうなずき、たった一人で王都を飛び立った。

 目的地は、大陸中央の魔王城。

(あれ? 僕、今、空飛んでる? ……まぁ、いっか。急いでるし)

 無自覚な飛行能力に今更驚きもせず、僕は絶望に覆われた戦場へと、まっすぐに突き進んでいくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラック企業勤めで過労死した元社畜、インプに転生して無限体力で魔王軍をブラック企業からホワイト企業に大改革!

黒崎隼人
ファンタジー
「もう、働きたくない……」 三十歳目前、中間管理職として身を粉にして働いた末に過労死した柏木健人(けんと)。彼が次に目覚めたのは、なんと魔王軍の最下級兵士「インプ」のケントになっていた! 与えられたのは「無限の体力」と「タスク管理」というとんでもスキル。これでのんびりスローライフ……とはいかず、目の前の非効率な魔王軍の現状に、元社畜の血が騒いでしまう。 「この在庫管理、杜撰すぎる!」「サプライチェーンが崩壊している!」 気づけば5S、PDCA、ジャストインタイムといったビジネス用語を駆使して、巨大な魔王軍をホワイト企業に大改革! その異常な手腕は、やがて気まぐれな美少女魔王リリアの目に留まり、彼は「宰相補佐官」に大抜擢されてしまう。 「私のスローライフはどこへ!?」 これは、働きたくないのに有能すぎて休めない元サラリーマンが、その気はなくても世界を救ってしまう、異色の異世界改革ファンタジー!

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界で無自覚に最強だった俺、追放されたけど今さら謝られても遅い

eringi
ファンタジー
「お前なんかいらない」と言われ、勇者パーティーを追放された青年ルーク。だが、彼のスキル【成長限界なし】は、実は世界でも唯一の“神格スキル”だった。 追放された先で気ままに生きようとした彼は、助けた村娘から崇められ、魔王を片手で倒し、知らぬ間に国家を救う。 仲間だった者たちは、彼の偉業を知って唖然とし、後悔と嫉妬に沈んでいく── 無自覚な最強男が歩む、ざまぁと逆転の異世界英雄譚!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

処理中です...