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第9話「緋色の逆転劇」
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建国記念パーティーは、華やかに、そして厳かに進行していた。各国の要人、王国の有力貴族たちが集い、談笑に花を咲かせている。誰も、このきらびやかな仮面の下で国家転覆という恐るべき陰謀が進行していることなど知る由もない。
私はアルフォンス殿下の隣に立ち、完璧な婚約者を演じていた。その様子を、リリアが少し離れた場所から憎しみの籠もった目で見ている。彼女からすれば、一度は排除したはずの邪魔者が再びアルフォンスの隣に返り咲いているのだ。心中、穏やかではないだろう。
やがて、国王陛下による祝辞が述べられ、パーティーが最高潮の盛り上がりを見せる。
その瞬間を、リリアは見逃さなかった。
彼女はすっと前に進み出ると、アルフォンスの隣にいた私を押し退けるようにして壇上の中央に立った。
「皆様、お静かに! この記念すべき良き日に、わたくしから皆様へ聖なる祝福を授けたいと思います!」
彼女が高らかに宣言すると、会場は歓迎の拍手に包まれた。これが、暁光団の計画の始まりの合図だ。
リリアは両手を広げ、目を閉じて祈りを捧げ始める。彼女の体から、眩いばかりの光が溢れ出した。それは今までで最も強く、そして美しい光だった。会場にいる誰もが、その神々しい光景に息を呑む。
彼らは知らない。その光が、自分たちの生命力を吸い上げ思考を奪う、禁術の輝きだということを。
リリアの唇が、勝利の笑みを刻む。彼女は、会場のすべてが自分の意のままになったと確信しただろう。
しかし。
数秒経っても、何も起こらなかった。人々はただうっとりと彼女を見つめているだけ。誰一人として、操られた様子はない。
「……え?」
リリアの顔に、初めて動揺の色が浮かんだ。彼女はもう一度魔力を高めようとする。だが、まるで底の抜けた器のように魔力が霧散していくだけだった。
そう、私が仕掛けた魔法無効化の結界が、彼女の術を完全に封じているのだ。
「そん、な……どうして……?」
術が破られ狼狽するリリア。会場が、彼女の異変に気づきざわめき始めた。
その瞬間を、私たちは待っていた。
「そこまでだ、偽りの聖女」
私が、冷たく言い放つ。私とアルフォンスが、ゆっくりとリリアの前に進み出た。
「スカーレット様……? アルフォンス殿下……?」
リリアは、何が起こったのか理解できず呆然と私たちを見つめている。
アルフォンスが、国王陛下とすべての貴族たちに向かって声を張り上げた。
「皆、聞いてくれ! 我々はこの女に騙されていた! 彼女は聖女などではない! 王国を内側から崩壊させるために送り込まれた、テロ組織『暁光団』の工作員だ!」
アルフォンスの衝撃的な言葉に、会場は水を打ったように静まり返る。
続いて私がリリアを指さし、断罪の言葉を紡いだ。
「彼女の使うその光は、人々の生命力を吸い取る禁術。その力であなた方の思考を少しずつ蝕み、自分に都合の良いように操っていたのです! 私が着せられた数々の汚名も、すべて彼女がこの術で捏造したものだったのです!」
次々と暴かれていく真実に、貴族たちは言葉を失い、ただリリアと私たちを交互に見るばかりだった。
「な、何を言うのですか! 私は、ただ皆様を祝福しようと……!」
リリアは涙を浮かべ、悲劇のヒロインを演じようとする。だが、もはやその嘘に騙される者はいない。
ゼノンが合図を送り、会場の扉が開かれる。そこに現れたのは、トーナメントでリリアの側近に買収された生徒や、禁術の文献を研究していた王立魔導院の学者たちだった。彼らが、動かぬ証拠を次々と提示していく。
「私は、リリア様の側近の方にカイエン様の剣に細工をするよう頼まれました!」
「この文献によれば、彼女の魔法は間違いなく古代の禁術『生命吸収(ライフドレイン)』に酷似している!」
追い詰められたリリアは、みるみるうちにその表情から可憐さを消し、憎悪に歪んだ素顔を晒した。
「……黙れ、黙れ、黙れぇ!」
彼女は甲高い叫び声を上げると、隠し持っていた短剣を抜きアルフォンスに襲いかかった。
「こうなれば、ここで王太子を殺すまで!」
もはや、演技すらやめて本性を現したのだ。
同時に、会場のあちこちに潜んでいた暁光団の構成員たちが一斉に武器を抜き、行動を開始する。会場は一瞬にしてパニックに陥った。
だが、それもすべて私たちの計算通りだった。
「そこまでだ!」
カイエンの鋭い声が響き渡る。会場の全ての扉から、彼が率いる精鋭騎士たちがなだれ込んできたのだ。彼らはレオからの情報で正確にマークしていた暁光団の構成員たちを、瞬く間に、そして的確に制圧していく。
そして、リリアの凶刃がアルフォンスに届く寸前、その間に割って入ったのはカイエンその人だった。
キィン、と甲高い金属音を立てて、彼の剣がリリアの短剣を受け止める。
「お前の好きにはさせない」
カイエンの冷たい眼差しに、リリアは完全に戦意を喪失し、その場にへたり込んだ。
偽りの聖女が断罪され、暁光団の残党もすべて捕らえられる。あっという間の出来事だった。
静寂を取り戻した大広間で、国王陛下が威厳に満ちた声で宣言した。
「聖女リリア、及びテロ組織『暁光団』の者共を、国家反逆罪で捕らえる! そして、ヴァレンティナ公爵令嬢スカーレットの潔白は、今この場をもって完全に証明された!」
その言葉と共に、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。それは私に向けられた、賞賛と謝罪の拍手だった。
私は緋色のドレスを翻し、すべての貴族たちを見渡した。
1度目の人生で私を蔑み、断罪した者たちが、今、私に喝采を送っている。
長かった復讐劇が、ついに幕を閉じた瞬間だった。
私はアルフォンス殿下の隣に立ち、完璧な婚約者を演じていた。その様子を、リリアが少し離れた場所から憎しみの籠もった目で見ている。彼女からすれば、一度は排除したはずの邪魔者が再びアルフォンスの隣に返り咲いているのだ。心中、穏やかではないだろう。
やがて、国王陛下による祝辞が述べられ、パーティーが最高潮の盛り上がりを見せる。
その瞬間を、リリアは見逃さなかった。
彼女はすっと前に進み出ると、アルフォンスの隣にいた私を押し退けるようにして壇上の中央に立った。
「皆様、お静かに! この記念すべき良き日に、わたくしから皆様へ聖なる祝福を授けたいと思います!」
彼女が高らかに宣言すると、会場は歓迎の拍手に包まれた。これが、暁光団の計画の始まりの合図だ。
リリアは両手を広げ、目を閉じて祈りを捧げ始める。彼女の体から、眩いばかりの光が溢れ出した。それは今までで最も強く、そして美しい光だった。会場にいる誰もが、その神々しい光景に息を呑む。
彼らは知らない。その光が、自分たちの生命力を吸い上げ思考を奪う、禁術の輝きだということを。
リリアの唇が、勝利の笑みを刻む。彼女は、会場のすべてが自分の意のままになったと確信しただろう。
しかし。
数秒経っても、何も起こらなかった。人々はただうっとりと彼女を見つめているだけ。誰一人として、操られた様子はない。
「……え?」
リリアの顔に、初めて動揺の色が浮かんだ。彼女はもう一度魔力を高めようとする。だが、まるで底の抜けた器のように魔力が霧散していくだけだった。
そう、私が仕掛けた魔法無効化の結界が、彼女の術を完全に封じているのだ。
「そん、な……どうして……?」
術が破られ狼狽するリリア。会場が、彼女の異変に気づきざわめき始めた。
その瞬間を、私たちは待っていた。
「そこまでだ、偽りの聖女」
私が、冷たく言い放つ。私とアルフォンスが、ゆっくりとリリアの前に進み出た。
「スカーレット様……? アルフォンス殿下……?」
リリアは、何が起こったのか理解できず呆然と私たちを見つめている。
アルフォンスが、国王陛下とすべての貴族たちに向かって声を張り上げた。
「皆、聞いてくれ! 我々はこの女に騙されていた! 彼女は聖女などではない! 王国を内側から崩壊させるために送り込まれた、テロ組織『暁光団』の工作員だ!」
アルフォンスの衝撃的な言葉に、会場は水を打ったように静まり返る。
続いて私がリリアを指さし、断罪の言葉を紡いだ。
「彼女の使うその光は、人々の生命力を吸い取る禁術。その力であなた方の思考を少しずつ蝕み、自分に都合の良いように操っていたのです! 私が着せられた数々の汚名も、すべて彼女がこの術で捏造したものだったのです!」
次々と暴かれていく真実に、貴族たちは言葉を失い、ただリリアと私たちを交互に見るばかりだった。
「な、何を言うのですか! 私は、ただ皆様を祝福しようと……!」
リリアは涙を浮かべ、悲劇のヒロインを演じようとする。だが、もはやその嘘に騙される者はいない。
ゼノンが合図を送り、会場の扉が開かれる。そこに現れたのは、トーナメントでリリアの側近に買収された生徒や、禁術の文献を研究していた王立魔導院の学者たちだった。彼らが、動かぬ証拠を次々と提示していく。
「私は、リリア様の側近の方にカイエン様の剣に細工をするよう頼まれました!」
「この文献によれば、彼女の魔法は間違いなく古代の禁術『生命吸収(ライフドレイン)』に酷似している!」
追い詰められたリリアは、みるみるうちにその表情から可憐さを消し、憎悪に歪んだ素顔を晒した。
「……黙れ、黙れ、黙れぇ!」
彼女は甲高い叫び声を上げると、隠し持っていた短剣を抜きアルフォンスに襲いかかった。
「こうなれば、ここで王太子を殺すまで!」
もはや、演技すらやめて本性を現したのだ。
同時に、会場のあちこちに潜んでいた暁光団の構成員たちが一斉に武器を抜き、行動を開始する。会場は一瞬にしてパニックに陥った。
だが、それもすべて私たちの計算通りだった。
「そこまでだ!」
カイエンの鋭い声が響き渡る。会場の全ての扉から、彼が率いる精鋭騎士たちがなだれ込んできたのだ。彼らはレオからの情報で正確にマークしていた暁光団の構成員たちを、瞬く間に、そして的確に制圧していく。
そして、リリアの凶刃がアルフォンスに届く寸前、その間に割って入ったのはカイエンその人だった。
キィン、と甲高い金属音を立てて、彼の剣がリリアの短剣を受け止める。
「お前の好きにはさせない」
カイエンの冷たい眼差しに、リリアは完全に戦意を喪失し、その場にへたり込んだ。
偽りの聖女が断罪され、暁光団の残党もすべて捕らえられる。あっという間の出来事だった。
静寂を取り戻した大広間で、国王陛下が威厳に満ちた声で宣言した。
「聖女リリア、及びテロ組織『暁光団』の者共を、国家反逆罪で捕らえる! そして、ヴァレンティナ公爵令嬢スカーレットの潔白は、今この場をもって完全に証明された!」
その言葉と共に、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。それは私に向けられた、賞賛と謝罪の拍手だった。
私は緋色のドレスを翻し、すべての貴族たちを見渡した。
1度目の人生で私を蔑み、断罪した者たちが、今、私に喝采を送っている。
長かった復讐劇が、ついに幕を閉じた瞬間だった。
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