「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人

文字の大きさ
3 / 16

第2話「辺境の街と、月光の輝き」

しおりを挟む
 王都を後にしてから数日が過ぎた。
 リアムは【真理の瞳】を駆使して道中の森で薬草や食用キノコを見つけ、それを小さな村で売ることでなんとか路銀を稼ぎながら旅を続けていた。最初は半信半疑だったスキルの力も今では絶対的な確信に変わっている。この瞳があればどこでだって生きていける。そんな自信が彼の足取りを軽くしていた。

 そして彼が目指していたのは王国の東の果て、地図の端に小さく記された鉱山町「アークライト」。
 かつては豊富な鉱物資源で栄えたが鉱脈が枯渇してからは寂れる一方だと聞く。なぜそんな場所を目指すのか。それは鑑定した地図にこんな情報が見えたからだ。

【地名:アークライト】
【詳細:寂れた鉱山町。主な産業は廃れ、冒険者ギルドも撤退済み】
【隠された可能性:未発見の鉱脈、才能の原石、そして『再興の種』が眠る地。大きな運命の転換点を迎える可能性を秘めている】

 運命の転換点。
 その言葉にリアムは強く惹かれた。自分自身の運命を変えるために、この街は何かを与えてくれるかもしれない。そんな期待を胸に彼はついにアークライトの入り口に立つ。

 街の第一印象は噂通り「寂れている」の一言に尽きた。
 木造の建物は古びて傾き、道行く人々の顔にも活気がない。かつての繁栄を偲ばせる立派な石畳の道もところどころが砕け、雑草が顔を覗かせていた。

「まずは宿と食事だな……」

 リアムは懐にしまい込んだ、決して多くはない銅貨の感触を確かめながら一軒の古びた宿屋の扉を叩いた。
 人の良さそうな初老の主人が迎えてくれ、リアムは安い部屋を一つ借りる。食事は硬いパンと塩気の強い干し肉のスープだけだったが、温かいだけありがたかった。

 食事をしながらリアムは主人に街の様子を尋ねてみる。

「この街は昔はすごかったんだよ。山から採れる鉄や銅で武具作りが盛んでね。腕利きの職人もたくさんいたもんだ。だが十年前に鉱山が閉鎖されてからはこの通りさ。若いもんはみんな街を出てっちまった」

 主人は寂しそうにカウンターを磨きながらつぶやく。
 リアムが特に気になっていたのは街の外れに見える、巨大な岩山の麓に口を開けた廃坑のことだった。

「あの鉱山はもう何も採れないんですか?」

「ああ。ギルドの連中が何度も調査したが、もう価値のある鉱石はひとかけらも残ってないって話だ。おまけに最近はゴブリンなんかの魔物が住み着いちまってな。崩落もひどいし、危ないから誰も近寄らんよ。『呪われた山』なんて呼ぶやつもいるくらいさ」

 呪われた山。その言葉にリアムの鑑定士としての血が騒いだ。
 人々が価値なしと判断したものにこそ真実が眠っている可能性がある。彼はこれまでその真実を何度も見抜いてきた。

 翌日、リアムは簡単な食料とランプを手にその廃坑へと向かった。
 入り口には粗末な柵が立てられ「危険、立ち入り禁止」の看板が朽ちかけている。内部からはひやりとした湿った空気が流れ出し、不気味な静寂が満ちていた。

『よし、行こう』

 リアムはランプに火を灯し、慎重に坑道へと足を踏み入れた。
 中は蜘蛛の巣だらけで、あちこちに岩が崩れた跡がある。並の人間ならここで引き返すだろう。だがリアムには【真理の瞳】がある。

 彼はスキルを発動し坑道全体に意識を集中させた。すると彼の脳内には、まるで設計図のように坑道の三次元マップが広がる。

【警告:前方五メートル、天井に亀裂。崩落の危険性・高】
【情報:右手の分岐路、三十メートル先にゴブリンの巣。個体数五】
【情報:左手の分岐路、壁面に脆い箇所あり。その奥に隠された空洞が存在する可能性】

「こっちか……!」

 リアムは即座に左の道を選んだ。ゴブリンと戦うつもりはない。
 彼の目的はこの鉱山に眠る「再興の種」を見つけ出すことだ。

【真理の瞳】が示す安全なルートだけを進んでいく。それはまるで答えの書かれた地図を片手に迷路を進むようだった。
 一時間ほど歩いただろうか。リアムはスキルが示していた脆い壁の前にたどり着いた。

 壁を軽く叩いてみると確かにそこだけ空洞音がする。
 リアムは近くに落ちていたつるはしを手に取り、力任せに壁を打ち砕いた。ガラガラと音を立てて壁が崩れると、その向こうに新たな空間が広がっていた。

 空洞に足を踏み入れた瞬間、リアムは息をのんだ。

 そこはまるで星空を閉じ込めたかのような幻想的な空間だった。
 壁一面に月光のような淡い青白い光を放つ鉱石が無数に突き出ていたのだ。その神秘的な輝きにリアムはしばし我を忘れて見入っていた。

 我に返り、彼は震える手でその鉱石に触れスキルを発動する。

【名称:月光鋼(ムーンメタル)】
【等級:伝説級】
【詳細:魔力を帯びた月光が長い年月をかけて特殊な鉄鉱石に宿り生まれた奇跡の金属。極めて軽量でありながらオリハルコンに匹敵する強度を持つ。また内包する魔力により付与された魔法の効果を増幅させる特性がある】
【最適な加工法:満月の夜、聖水で清めたハンマーと金床を用い、精霊の祈りを込めて鍛え上げることでその真価を最大限に引き出すことができる】

「……伝説級、だと?」

 リアムの心臓が大きく跳ねた。
 伝説級の金属など王宮の宝物庫に眠る聖剣の逸話でしか聞いたことがない。それが今、目の前に壁一面に広がっている。ギルドの調査隊も誰一人として気づかなかった鉱山の真の宝。

『これだ……! これがこの街の……いや、俺の「再興の種」だ!』

 歓喜が体の内側から湧き上がってきた。
 リアムは坑道に響き渡るほどの声で叫びたい衝動を必死にこらえ、まずは拳ほどの大きさの月光鋼を一つ慎重に掘り出した。

 ずっしりとした重みはない。羽のように軽いのに指で弾くと澄んだ高い音がする。これがオリハルコンに匹敵する金属。

 リアムは月光鋼を布に丁寧に包み懐にしまった。もうゴブリンの心配など頭になかった。
 彼の心はこの奇跡の金属をどう活かすか、その可能性で満ち溢れていた。

 アークライトの街へ戻るリアムの足取りは来た時とは比べ物にならないほど力強かった。
 彼の追放から始まった物語は今、絶望から希望へと大きく舵を切り、新たな舞台でその輝きを増そうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「人の心がない」と追放された公爵令嬢は、感情を情報として分析する元魔王でした。辺境で静かに暮らしたいだけなのに、氷の聖女と崇められています

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は人の心を持たない失敗作の聖女だ」――公爵令嬢リディアは、人の感情を《情報データ》としてしか認識できない特異な体質ゆえに、偽りの聖女の讒言によって北の果てへと追放された。 しかし、彼女の正体は、かつて世界を支配した《感情を喰らう魔族の女王》。 永い眠りの果てに転生した彼女にとって、人間の複雑な感情は最高の研究サンプルでしかない。 追放先の貧しい辺境で、リディアは静かな観察の日々を始める。 「領地の問題点は、各パラメータの最適化不足に起因するエラーです」 その類稀なる分析能力で、原因不明の奇病から経済問題まで次々と最適解を導き出すリディアは、いつしか領民から「氷の聖女様」と畏敬の念を込めて呼ばれるようになっていた。 実直な辺境伯カイウス、そして彼女の正体を見抜く神狼フェンリルとの出会いは、感情を知らない彼女の内に、解析不能な温かい《ノイズ》を生み出していく。 一方、リディアを追放した王都は「虚無の呪い」に沈み、崩壊の危機に瀕していた。 これは、感情なき元魔王女が、人間社会をクールに観測し、やがて自らの存在意義を見出していく、静かで少しだけ温かい異世界ファンタジー。 彼女が最後に選択する《最適解》とは――。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら
ファンタジー
 勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。  居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。  仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。  周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。  追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。  自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。  “無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。  追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!

無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――勇者パーティーの【鑑定士】リアムは、戦闘能力の低さを理由に、仲間と婚約者から無一文で追放された。全てを失い、流れ着いたのは寂れた辺境の村。そこで彼は自らのスキルの真価に気づく。物の情報を見るだけの【鑑定】は、実は万物の情報を書き換える神のスキル【神の万年筆】だったのだ! 「ただの石」を「最高品質のパン」に、「痩せた土地」を「豊穣な大地」に。奇跡の力で村を豊かにし、心優しい少女リーシャとの絆を育むリアム。やがて彼の村は一つの国家として世界に名を轟かせる。一方、リアムを失った勇者パーティーは転落の一途をたどっていた。今さら戻ってこいと泣きついても、もう遅い! 無能と蔑まれた青年が、世界を創り変える伝説の王となる、痛快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。

緋村ルナ
ファンタジー
「お前のような女は王妃にふさわしくない!」――才色兼備でありながら“冷酷な野心家”のレッテルを貼られ、無能な王太子から婚約破棄されたアメリア。国外追放の末にたどり着いたのは、痩せた土地が広がる辺境の村だった。しかし、そこで彼女が見つけた一つの奇妙な種が、運命を、そして世界を根底から覆す。 前世である農業研究員の知識を武器に、新種の果物「ヴェリーナ」を誕生させたアメリア。それは甘美な味だけでなく、世界経済を揺るがすほどの価値を秘めていた。 これは、一人の追放された令嬢が、たった一つの果実で自らの運命を切り開き、かつて自分を捨てた者たちに痛快なリベンジを果たし、やがて世界の覇権を握るまでの物語。「食」と「経済」で世界を変える、壮大な逆転ファンタジー、開幕!

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

処理中です...