「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人

文字の大きさ
4 / 16

第3話「最初の一歩と、豪商の慧眼」

しおりを挟む
 アークライトに戻ったリアムは宿屋の主人に頼み込み、今は使われていない鍛冶場の隅を借りることに成功した。
 もちろん月光鋼のことはおくびにも出さず「拾った鉄くずでちょっとした物を作りたいだけ」と説明して。

 リアムは【真理の瞳】が示した『最適な加工法』を忠実に再現しようと試みた。
 満月の夜はまだ先だったが、まずは試作品を作ってみる必要がある。聖水は街の小さな教会で少し分けてもらった。精霊の祈りという部分はどうすればいいか分からなかったが、今は無視するしかない。

『まずは一番単純なものから……ナイフだ』

 リアムは鍛冶仕事などやったことがなかったが不思議と体は動いた。
 鑑定スキルがまるで熟練の職人のように、最適な槌の振り下ろし方、火の温度、金属を冷やすタイミングを脳内に直接伝えてくるのだ。

 カン、カン、とリズミカルな音が静かな夜の街に響く。
 額に汗を浮かべ火の粉を浴びながら、リアムは一心不乱に槌を振るった。試行錯誤を繰り返し数日後、ついに一本のナイフが完成した。

 それはお世辞にも美しいとは言えない不格好なナイフだった。
 だがその刀身は月光鋼ならではの淡い輝きを放ち、驚くべき切れ味を秘めていた。試しに鉄の棒を斬りつけてみると、まるで豆腐を切るかのように音もなく両断してしまった。

「すごい……これが月光鋼の力か」

 リアムは完成したナイフを手に、街の広場で小さな露店を開いた。
 もちろんナイフが「月光鋼」でできているなどとは言わない。「珍しい鉄で作った、よく切れるナイフ」という触れ込みだ。

 しかし寂れた街で足を止める者はほとんどいなかった。
 たまに手に取る者もその見た目の不格好さや、リアムが提示した「金貨一枚」という値段に鼻で笑って去っていく。

『やっぱり無名の人間が作ったものなんて誰も信用しないか……』

 心が折れかけ店じまいをしようかと考え始めた、その日の午後だった。
 一人の恰幅の良い男がリアムの店の前で足を止めた。派手な装飾のついた服、指にはめられたいくつもの宝石の指輪。いかにも裕福そうなその男は付き人を従えていた。

「ほう。面白い輝きをしたナイフだな。小僧、見せてみろ」

 男は尊大な態度で言うとナイフを手に取った。
 そして刀身を光にかざし指で軽く弾き、刃先を注意深く観察する。その目はただの物好きのそれではない。真贋を見極めんとする本物の商人の目だった。

「ふむ……。作りは素人そのもの。だがこの素材は……見たこともないな。小僧、お前これをどこで手に入れた?」

「それは……言えません。ただの拾い物です」

 リアムがそう答えると男はニヤリと笑った。

「そうか。まあいいだろう。切れ味を試させてもらうぞ」

 男はそう言うと付き人が持っていた鉄製の盾を指さした。
 そして次の瞬間、こともなげにナイフを振り下ろす。キィンという甲高い音と共に、分厚い鉄の盾が真っ二つに切り裂かれていた。

 周囲から驚きの声が上がる。男自身もその切れ味に目を見開いていた。

「な……! これは……とんでもない代物だぞ……!」

 男は興奮した様子でリアムに詰め寄った。

「小僧! このナイフ、金貨百枚でどうだ! いや、二百枚出す!」

 金貨二百枚。リアムが勇者パーティーにいた頃の一年分の稼ぎに匹敵する額だ。
 リアムは驚きつつも冷静に首を横に振った。

「売りません」

「な、何だと!? 金が足りないというのか! よかろう、三百……いや五百だ!」

「いえ、そうじゃありません。あなたにこの金属の独占契約を結んでいただきたいんです」

 リアムの言葉に男は目を丸くした。
 目の前の貧相な少年がとてつもなく大きな商談を持ちかけてきたのだから当然だ。男は一つ咳払いをして居住まいを正した。

「……面白い。俺はバルガス。この辺り一帯で手広く商売をやっている者だ。小僧、お前の名前は?」

「リアム・アシュフォードです」

「リアム、か。よかろう、その話、詳しく聞こうじゃないか」

 場所を移し街で一番高級な宿屋の一室で、リアムはバルガスと向き合っていた。
 リアムは月光鋼の存在を明かし、自分がそれを安定して供給できること、そしてその金属で武具や道具を作りバルガスの商会を通じて売り出したいという計画を語った。

 バルガスは腕を組み鋭い目でリアムの話を聞いていた。そして全てを聞き終えると大きくうなずいた。

「……信じがたい話だが、あのナイフの切れ味を考えれば嘘ではあるまい。お前の度胸と慧眼、気に入った。この話、乗ろう!」

 バルガスは懐から契約書を取り出しその場で契約を交わした。
 リアムは前金として金貨一万枚という、目のくらむような大金を受け取ることになった。それは寂れたアークライトの街ごと買い取れてしまうほどの金額だった。

「だがリアム君。君一人ではこの事業を動かすのは無理だろう。職人も護衛も何もかもが足りない。どうするつもりかね?」

 バルガスの的確な指摘にリアムは静かに答えた。

「ええ、分かっています。だから俺はギルドを設立します」

「ギルドだと? この街の冒険者ギルドはとっくの昔に撤退したぞ」

「ええ。だから俺が作るんです。かつての俺のように不遇なスキルや才能を理由に、世間から見捨てられた者たちが輝ける場所を。彼らの才能を俺の【真理の瞳】で見抜き育て、最高のチームを作る。そのギルドの名は――『方舟(アーク)』です」

 リアムの瞳には確かな野心と仲間への優しさが宿っていた。
 豪商バルガスは目の前の少年に計り知れない器の大きさを感じ、心からの笑みを浮かべた。

「面白い! 実に面白い! リアム君、君はとんでもない大物になるかもしれんな! よかろう、ギルド設立の件もこのバルガスが全面的に支援しよう!」

 こうしてリアムは莫大な資金と強力な後援者を得た。
 追放された鑑定士の、世界を変えるための最初の一歩が今、力強く踏み出されたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「人の心がない」と追放された公爵令嬢は、感情を情報として分析する元魔王でした。辺境で静かに暮らしたいだけなのに、氷の聖女と崇められています

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は人の心を持たない失敗作の聖女だ」――公爵令嬢リディアは、人の感情を《情報データ》としてしか認識できない特異な体質ゆえに、偽りの聖女の讒言によって北の果てへと追放された。 しかし、彼女の正体は、かつて世界を支配した《感情を喰らう魔族の女王》。 永い眠りの果てに転生した彼女にとって、人間の複雑な感情は最高の研究サンプルでしかない。 追放先の貧しい辺境で、リディアは静かな観察の日々を始める。 「領地の問題点は、各パラメータの最適化不足に起因するエラーです」 その類稀なる分析能力で、原因不明の奇病から経済問題まで次々と最適解を導き出すリディアは、いつしか領民から「氷の聖女様」と畏敬の念を込めて呼ばれるようになっていた。 実直な辺境伯カイウス、そして彼女の正体を見抜く神狼フェンリルとの出会いは、感情を知らない彼女の内に、解析不能な温かい《ノイズ》を生み出していく。 一方、リディアを追放した王都は「虚無の呪い」に沈み、崩壊の危機に瀕していた。 これは、感情なき元魔王女が、人間社会をクールに観測し、やがて自らの存在意義を見出していく、静かで少しだけ温かい異世界ファンタジー。 彼女が最後に選択する《最適解》とは――。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら
ファンタジー
 勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。  居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。  仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。  周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。  追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。  自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。  “無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。  追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

処理中です...