「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人

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第9話「新たな脅威と、街の試練」

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 リアムたちの努力と豪商バルガスの支援により、アークライトの街は目に見えて活気を取り戻していた。
 温泉施設は旅人たちの間で評判となり、星降り芋から作られた蒸留酒は王都でも高値で取引されるほどの人気を博していた。街には新しい店が次々と建ち移り住んでくる人々も増え、子供たちの笑い声が響くようになった。

 ギルド「方舟」も新たなメンバーが加わり順調に成長していた。
 リアムが見出したのは元大工のドワーフ、ボルガン。彼は頑固で口は悪いがその腕は確かで、リアムが持ち込んだ月光鋼の加工法を完璧にマスターし最高の武具職人となった。もう一人は元宮廷魔術師の老婆、エルミナ。彼女はとある事件で貴族の怒りを買い宮廷を追われた過去を持つが、その知識と経験はリアムたちにとって何よりの財産となった。

 リアム、リリア、フィン、ボルガン、エルミナ。
 少数精鋭ながら彼らのチームワークは完璧だった。街の周辺に現れる魔物の討伐や住民たちの困りごとを解決し、彼らはアークライトの守護者のような存在として人々から厚い信頼を寄せられていた。

『穏やかな日々だ……。俺が本当に欲しかったのは、こういう時間なのかもしれない』

 リアムはギルドハウスの窓から活気にあふれる街並みを眺め、そんな感慨にふけっていた。

 だがそんな平穏は長くは続かなかった。

 事件の知らせは血相を変えた街の衛兵によってもたらされた。

「大変だ! 鉱山の奥から見たこともない魔物たちが溢れ出してきている!」

 リアムたちが現場に駆けつけるとそこはまさに地獄絵図だった。
 月光鋼を採掘していた鉱夫たちが傷つき倒れ、廃坑の入り口からはおびただしい数の魔物――オークやゴブリン、さらにはリザードマンといったこの辺りでは見かけないはずの強力な魔物たちが次から次へと姿を現していた。

「リリア! 負傷者の治療を! フィン、ボルガン、エルミナさんは俺と一緒に前線を支えるぞ!」

 リアムの的確な指示が飛ぶ。リリアはすぐに負傷者の元へ駆け寄り【聖女の福音】の癒やしの光で彼らの傷を癒やしていく。

「フィン、オークの指揮官を狙え! ボルガンは前衛で壁になれ! エルミナさん、広範囲の魔法で敵の動きを止めてください!」

「おう、任せとけ!」

「心得た」

「分かっておるわい、若造!」

 フィンが放つ月光の矢がオークのリーダーの眉間を正確に射抜く。
 ボルガンは月光鋼で作られた巨大な戦斧を振り回しリザードマンの群れをなぎ倒す。エルミナが杖を掲げると地面から氷の壁が出現し、魔物たちの突進を阻んだ。

 リアム自身も鑑定スキルをフル活用し戦況を完全に把握していた。

【オーク・ジェネラル:弱点、右脇腹の古傷】
【ロック・ゴーレム:動力源、胸の中心にある魔石】
【警告:後方より、魔物の第二波接近中!】

「ボルガン、右にいるオークの脇を狙え! エルミナさん、第二波に備えてください!」

 リアムの指示はまるで未来予知のようだ。
 彼の言葉通りに動けば面白いように戦況は有利に進む。だが魔物の数はあまりにも多すぎた。倒しても倒しても坑道の闇の奥から無限に湧き出してくるように感じられた。

「きりがない……! リアムさん、一体どうなってるんですか!?」

 リリアが悲鳴に近い声を上げる。

「この魔物たち……何かに操られているような……妙な魔力を感じる……」

 エルミナが眉をひそめる。リアムもその異常事態には気づいていた。
 彼は【真理の瞳】の焦点を坑道のさらに奥深くへと集中させる。

 そして彼は見てしまった。

 鉱山の最深部、月光鋼の鉱脈があったあの巨大な空洞。
 その中心に禍々しい紫色の光を放つ巨大な『ゲート』が出現していたのだ。そしてそのゲートをこじ開けようとしている巨大な影の存在を。

【名称:影の支配者(シャドウ・ロード)】
【種族:古代悪魔(エンシェント・デーモン)】
【危険度:災害級】
【状態:不完全な召喚により力の大部分が封印されている。配下の魔物を使いゲートを完全に安定させようと画策中】
【攻略情報:ゲートが完全に開く前に、召喚の儀式を司る四つの『楔(くさび)』を破壊する必要がある】

「……まずいことになったな」

 リアムの額に冷たい汗が伝う。
 これはただの魔物の暴走ではない。何者かがこの鉱山を利用して古代の悪魔を呼び出そうとしているのだ。ゲートが完全に開いてしまえばこのアークライトの街どころか、王国全体が危機に瀕するだろう。

「みんな聞いてくれ! 敵の親玉は鉱山の最深部にいる! このままじゃ街が……いや、世界が危ない!」

 リアムは仲間たちに状況を説明した。そのあまりにも絶望的な内容に誰もが息をのむ。

「じゃあ、どうするんだよ、リアム!」

 ボルガンが叫ぶ。リアムは仲間たちの顔を一人一人見渡し、そして決然と言い放った。

「決まってる。俺たちでやるんだ。アークライトは俺たちが守り抜いてきた大切な場所だ。誰にも壊させたりはしない!」

 その言葉に仲間たちの目に再び光が宿る。

「はいっ!」

「……分かった」

「当然じゃ!」

「おうよ!」

 彼らの心は一つだった。
 アークライトの街の存亡をかけた、ギルド「方舟」の過去最大の試練が始まろうとしていた。彼らは自分たちが守るべきもののために絶望的な戦いへと身を投じていく。
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