追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人

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番外編1「僕の心と、あなたの瞳」

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 僕、レオン・アレンの朝は、エリナの寝顔を見つめることから始まる。
 朝日を浴びてキラキラと輝く亜麻色の髪。安らかな寝息を立てる、愛しい人。
 この腕の中に彼女がいるという事実だけで、胸が温かいもので満たされていく。

 僕の中には、今も二つの意識が存在している。
 実直で、少し不器用な騎士団長だった『レオン・アッシュフォード』。
 冷静で、時に冷徹とさえ言われた宰相の『アレン・ヴァレンタイン』。
 聖獣コロの奇跡によって一つになった僕たちは、記憶も感情も共有しているが、時折、思考がぶつかり合うことがある。

「…今日の朝食は、エリナの焼いたパンが食べたいな」
 レオンとしての僕がそう思うと、すぐにアレンとしての僕が思考を重ねる。
「いや、昨夜の残りの煮込みを温め直した方が効率的だ。彼女の手を煩わせるべきではない」
 結局、僕がそっと寝台を抜け出して、煮込みを温め始めるのだから、いつもアレンの合理性が勝つことが多い。

 その日も、エリナと一緒に畑仕事を手伝っていた。
 彼女が『豊穣の祝福』を使うと、大地が喜ぶように輝き、作物が瞬く間に育っていく。何度見ても、神々しく、そして愛おしい光景だ。
 ふと、畑の隅に見たことのない花が咲いているのを見つけた。

「エリナ、この花は?」
 僕が尋ねると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、それは昨日見つけたんです。とても綺麗だから、少しだけ育ててみようと思って」

 その小さな白い花を見た瞬間、僕の中で二つの感情が同時に湧き上がった。
『なんて可憐な花だ。彼女の髪飾りにしたら、きっと似合うだろう』
 そう思うレオンの純粋な感嘆。
『まて、この花弁の形…古文書で読んだことがある。確か、高熱に効く薬草のはずだ。栽培法を確立すれば、多くの民を救える』
 そう分析するアレンの探求心。

「…あなたに、とてもよく似合います」
「…それに、これは貴重な薬草になるかもしれませんね」

 二つの言葉が、ほとんど同時に口から飛び出した。
 エリナはきょとんと目を丸くした後、くすくすと楽しそうに笑った。
「もう、レオン・アレンは正直ですね。でも、ありがとう。どちらのあなたも、大好きですよ」
 そう言って微笑む彼女の瞳には、ただ一人の『僕』が映っていた。

 ああ、そうだ。
 レオンであろうと、アレンであろうと、関係ない。
 僕の心は、ただ一つ。エリナ・クラウゼンバーグを、誰よりも深く愛している。
 その真実の前では、二つの魂の葛藤など、些細なことだった。
 僕は彼女をそっと引き寄せ、その唇に優しいキスを落とした。畑に吹く風が、祝福するように僕たちを撫でていった。
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