追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人

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番外編3「我ら、もふもふ聖獣騎士団!」

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 我輩の名はコロ。
 主(あるじ)、エリナに仕える聖獣である。
 最近、我輩には悩みがある。それは、主が我輩たち以外の「もふもふ」にも笑顔を向けることだ。

 事の発端は、騎士団の男たちが我輩たちを「もふもふ様」と呼び、こぞってこの村にやってくるようになってからだ。彼らは主の作る美味いイモが目当てなのは明らかだが、同時に我輩たちに頭を下げ、恐る恐るその毛を撫でてくる。

「おお…これが噂の聖獣様…なんという神々しい毛並みだ…」
「触れるだけで寿命が延びる気がする…!」

 ふん、人間とは単純な生き物よ。
 我輩は主の相棒であるぞ。安易に触れて良い存在ではないのだ。
 …まあ、主が嬉しそうだから、少しだけ撫でさせてやらんでもないが。

 そんなある日、一人の若い騎士が、一匹の子犬を抱いて主に泣きついてきた。
「エリナ様! 我が隊のアイドル、ポチが病気で何も食べないのです! どうか、お力をお貸しください!」
 ポチと呼ばれたそれは、茶色い毛並みの、どこにでもいるただの子犬だった。ぐったりとして元気がない。

 主は優しくポチを抱き上げると、その口元に、自らのスキルで育てた薬草をそっと近づけた。
「さあ、お食べなさい。すぐに元気になるわ」
 するとどうだろう。あれほど弱っていたポチが、薬草をむしゃむしゃと食べ始め、みるみるうちに元気を取り戻したではないか。

「おお! ポチが! エリナ様、ありがとうございます!」
 若い騎士は涙を流して喜び、主は「よかったわ」とポチの頭を優しく撫でた。
 その笑顔を見て、我輩の心は少しだけ、ちくりと痛んだ。

 その夜。我輩と、我輩の片割れであるコロスケは、こっそりと家を抜け出した。
 向かうは、騎士たちが寝泊まりしている駐屯地だ。
 我輩たちの目的はただ一つ。ライバル(?)であるポチの様子を探ることである。

 そっと中を覗くと、すっかり元気になったポチが、騎士たちの中心で尻尾を振っていた。
「ポチ、元気になってよかったな!」
「これも全部、エリナ様と『もふもふ様』のおかげだぞ!」
 騎士たちがそう話しているのが聞こえた。
 …ふむ。我輩たちへの敬意も忘れてはおらんようだな。よろしい。

 その時、ポチが我輩たちの存在に気づき、くんくんと匂いを嗅ぎに近づいてきた。
 我輩が「我こそは主の第一の相棒、コロである」と威厳を示そうと胸を張った瞬間、ポチは我輩の足元にぺたりと座ると、尊敬の眼差しでじっと見上げてきた。そして、まるで「兄貴!」とでも言うように、我輩の足にすり寄ってきたのだ。

 …むぅ。なんだか、悪い気はしない。
 コロスケも、まんざらでもない顔でポチに頭を撫でられている。

 翌朝、我輩たちが目を覚ますと、なぜか駐屯地にいた全ての子犬や猫たちが、我輩たちの周りに集まり、行進するように後ろをついてきていた。
 先頭に立つのは、もちろん我輩とコロスケだ。
 その後ろにはポチが続き、さらにその後ろに十数匹の動物たちが続く。

 その光景を見た主は、お腹を抱えて笑い転げた。
「ふふっ、なあに、それ! コロ、『聖獣騎士団』でも作ったの?」

 主の最高の笑顔を見て、我輩は誇らしく胸を張った。
 嫉妬など、我輩には似合わぬ感情だったようだ。
 主の笑顔を守るためなら、我輩はどんな動物たちとも手を取り合おう。
 こうして、辺境の村に、世界で一番平和で、もふもふな騎士団が誕生したのだった。
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