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エピローグ「夜明け、あるいは無の始まり」
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眩い光に包まれ意識が遠のいていく。
最後に感じたのは自分の体を支える、オフィーリアの温もりだった。
ああ、これで終わりか。
だが不思議と悔いはなかった。
自分の手でくだらない物語を終わらせることができた。
そして最期に、孤独ではなかった。
それだけで司書レオンの人生は十分に報われていた。
――どれくらいの時が、流れたのだろう。
不意に頬を撫でる優しい風を感じた。
微かに花の香りがする。
ゆっくりと重い瞼を開くと、最初に目に飛び込んできたのは、どこまでも広がる青い空だった。
見たこともないほど澄み渡った空。
「……ここは……」
掠れた声でつぶやくと、すぐ側から聞き慣れた、しかし今は心から安堵できる声が聞こえた。
「気がついた? レオン」
見るとオフィーリアがすぐ隣に座り、穏やかな顔でこちらを見つめていた。彼女の背後には見渡す限りの緑の草原が広がっている。色とりどりの名も知らぬ花が風に揺れていた。
「オフィーリア……。俺は……生きて……?」
「ええ、そうみたいね。あなたも、私も」
オフィーリアはそう言って柔らかく微笑んだ。その笑顔は彼女が「悪役令嬢」の仮面を被っていた時には一度も見せたことのない、心からの笑顔だった。
レオンはゆっくりと自分の体を見下ろした。透けかかっていた体はいつの間にか元に戻っている。それどころか魔力を使い果たしたはずの体には、不思議な力が満ちているような感覚さえあった。
「……世界は、どうなったんだ? ここは、どこなんだ?」
「分からないわ」とオフィーリアは首を横に振った。「聖域から脱出した後、私たちはここにいた。空も大地も風も、全てが私たちの知っている世界とはまるで違う。……もしかしたらここは、全く新しい世界なのかもしれない」
あるいは女神の支配から解放された、本来の世界の姿か。
それとも全てが消え去った後の「無」に、二人の願いが創り出した幻影か。
答えは分からない。
だがもう、どうでもいいことのように思えた。
「……そうか」
レオンはそれだけ言うと、草原の上に大の字に寝転がった。
吸い込んだ空気はどこまでも澄んでいて、美味しかった。
もう誰かの筋書きに怯える必要はない。
役割を演じる必要もない。
ただ自分たちの意志で生きていけばいい。
これから何が起こるのか。
この世界に他に人間はいるのか。
何もない不便な生活が待っているのかもしれない。
だがその全てが輝かしく思えた。
「ねえ、レオン」
隣に寝転がったオフィーリアが空を見上げながら言った。
「これから、どうする?」
その問いに、レオンは満面の笑みで答えた。
「さあ。まずはこの世界の図書館を探すところから、始めますかね」
「ふふっ。相変わらずね、あなたは」
二人の笑い声が風に乗って、どこまでも、どこまでも響き渡っていく。
脚本家のいない、真っ白なページ。
そこにどんな物語を記すかは、彼ら自身が決めることだ。
絶望の淵から始まった二人の反逆の物語は、こうして、静かな希望の夜明けと共に最初の頁をめくったのだった。
おしまい
最後に感じたのは自分の体を支える、オフィーリアの温もりだった。
ああ、これで終わりか。
だが不思議と悔いはなかった。
自分の手でくだらない物語を終わらせることができた。
そして最期に、孤独ではなかった。
それだけで司書レオンの人生は十分に報われていた。
――どれくらいの時が、流れたのだろう。
不意に頬を撫でる優しい風を感じた。
微かに花の香りがする。
ゆっくりと重い瞼を開くと、最初に目に飛び込んできたのは、どこまでも広がる青い空だった。
見たこともないほど澄み渡った空。
「……ここは……」
掠れた声でつぶやくと、すぐ側から聞き慣れた、しかし今は心から安堵できる声が聞こえた。
「気がついた? レオン」
見るとオフィーリアがすぐ隣に座り、穏やかな顔でこちらを見つめていた。彼女の背後には見渡す限りの緑の草原が広がっている。色とりどりの名も知らぬ花が風に揺れていた。
「オフィーリア……。俺は……生きて……?」
「ええ、そうみたいね。あなたも、私も」
オフィーリアはそう言って柔らかく微笑んだ。その笑顔は彼女が「悪役令嬢」の仮面を被っていた時には一度も見せたことのない、心からの笑顔だった。
レオンはゆっくりと自分の体を見下ろした。透けかかっていた体はいつの間にか元に戻っている。それどころか魔力を使い果たしたはずの体には、不思議な力が満ちているような感覚さえあった。
「……世界は、どうなったんだ? ここは、どこなんだ?」
「分からないわ」とオフィーリアは首を横に振った。「聖域から脱出した後、私たちはここにいた。空も大地も風も、全てが私たちの知っている世界とはまるで違う。……もしかしたらここは、全く新しい世界なのかもしれない」
あるいは女神の支配から解放された、本来の世界の姿か。
それとも全てが消え去った後の「無」に、二人の願いが創り出した幻影か。
答えは分からない。
だがもう、どうでもいいことのように思えた。
「……そうか」
レオンはそれだけ言うと、草原の上に大の字に寝転がった。
吸い込んだ空気はどこまでも澄んでいて、美味しかった。
もう誰かの筋書きに怯える必要はない。
役割を演じる必要もない。
ただ自分たちの意志で生きていけばいい。
これから何が起こるのか。
この世界に他に人間はいるのか。
何もない不便な生活が待っているのかもしれない。
だがその全てが輝かしく思えた。
「ねえ、レオン」
隣に寝転がったオフィーリアが空を見上げながら言った。
「これから、どうする?」
その問いに、レオンは満面の笑みで答えた。
「さあ。まずはこの世界の図書館を探すところから、始めますかね」
「ふふっ。相変わらずね、あなたは」
二人の笑い声が風に乗って、どこまでも、どこまでも響き渡っていく。
脚本家のいない、真っ白なページ。
そこにどんな物語を記すかは、彼ら自身が決めることだ。
絶望の淵から始まった二人の反逆の物語は、こうして、静かな希望の夜明けと共に最初の頁をめくったのだった。
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