異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人

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第12話「反撃開始!これが現代の商売術だ」

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 シルヴィア様の目の前で、自身の口から悪事のすべてを白状してしまったブラウン子爵。もはや、言い逃れのしようもなかった。

「ブラウン。貴様には、もはや申し開きの機会すら与えん。即刻、その身柄を拘束せよ!」

 シルヴィア様の厳命一下、兵士たちが崩れ落ちた子爵を取り押さえる。その顔は、絶望と恐怖で歪んでいた。

「ま、待ってください、シルヴィア様! これは、ゴルドマンに唆されて……! 私だけでは……!」

 往生際悪く命乞いをする子爵を、シルヴィア様は冷たく見下ろした。

「心配するな。バルトロ・ゴルドマンにも、既に向かわせている。貴様ら二人には、牢の中で、己の犯した罪について、たっぷりと語り合ってもらう」

 その言葉通り、ゴルドマン商会にも兵が差し向けられ、会長のバルトロは、子爵との共謀および横領、サンライズ商会への営業妨害、放火教唆、公務員買収など、数々の罪状で逮捕された。
 まさに、悪事のフルコース。もはや、再起は不可能だろう。
 こうして、長きにわたるゴルドマン商会との因縁は、俺たちの完全勝利という形で、ついに幕を閉じたのだった。

***

 牢から解放された俺を、リリアナやガンツ、トムをはじめとするサンライズ商会の全員が、涙ながらに迎えてくれた。

「カイリ様! ご無事で、本当によかったです……!」
「カイリ! 心配させやがって、この馬鹿野郎!」
「カイリさん! おかえりなさい!」

 みんなの温かい言葉に、俺の胸も熱くなる。本当に、良い仲間を持ったものだ。
 今回の事件は、シルヴィア様の裁定により、サンライズ商会が受けた被害に対する多額の賠償金が、ゴルドマン商会とブラウン子爵の没収された資産から支払われることで決着した。
 ゴルドマン商会は、主を失い、その悪事が白日の下に晒されたことで、あっけなく崩壊した。多くの取引先が離れ、残った資産も、賠償金の支払いでほとんどが消えてしまったという。
 まさに、因果応報。ざまぁみろ、としか言いようがない。

「さて、これで邪魔者はいなくなったわけだが……」

 事件が解決し、平穏が戻ったサンライズ商会。俺は、幹部――俺、リリアナ、ガンツ、そして従業員代表のトム――を集めて、今後の経営方針について会議を開いていた。

「ゴルドマン商会が扱っていた商品を、俺たちが引き継ぐ、というのはどうだろうか。食料品や日用品、奴らが握っていた市場は大きい。これを手に入れれば、サンライズ商会はさらに大きく飛躍できる」

 ガンツが、豪快に提案する。確かに、それは魅力的だ。だが、俺は首を横に振った。

「いや、それはやめておこう。ゴルドマンと同じことをしても、いずれまた、同じような争いが生まれるだけだ。俺たちは、俺たちのやり方で、この街の商業を、もっと面白くするべきだ」
「カイリ様の、やり方……?」

 リリアナが、不思議そうに首をかしげる。
 俺は、一枚の大きな地図をテーブルの上に広げた。それは、商業都市エトリアの詳細な地図だ。

「俺が提案するのは、『エトリア経済活性化プロジェクト』だ」
「けいざい、かっせいか……?」

 聞き慣れない言葉に、全員が怪訝な顔をする。

「簡単に言えば、この街全体の商売を盛り上げるための計画さ。主役は、サンライズ商会じゃない。この街で働く、すべての中小の商人たちだ」

 俺は、具体的なプランを説明し始めた。
 まず、ゴルドマン商会が崩壊したことで、多くの小売店が商品の仕入れ先に困っているはずだ。そこに、俺たちが介入する。

「俺たちが、新しい『卸売市場』を作るんだ。サンライズ商会の商品はもちろん、他の地域から安くて質の良い商品を俺たちが仕入れてきて、それを街の小売店に適正な価格で卸す。そうすれば、小売店は品揃えを充実させられるし、消費者も質の良い商品を安く手に入れられる」

 これは、現代でいうところの「商社」や「卸売業」の機能だ。生産者と小売店を繋ぎ、物流を最適化する。
 さらに、俺はもう一つの計画を打ち明けた。

「商人たちのための、互助組合を作る。名前は、『エトリア商人ギルド』だ」
「商業ギルドとは、別に作るのか?」
「ああ。商業ギルドは、大商人のための組織だ。俺たちが作るのは、小さな店でも加盟できて、みんなで助け合える組織さ。例えば、組合で金を出し合って、共同で商品を仕入れたり、新しい販売ルートを開拓したりする。病気や怪我で働けなくなった時のための、保険制度も作りたい」

 一つの大きな商会が市場を独占するのではなく、多くの小さな商会が手を取り合い、協力して、市場全体を大きくしていく。競争ではなく、「共存共栄」。それが、俺の目指す新しい商売の形だった。
 俺の壮大な計画に、最初は戸惑っていたリリアナたちも、話を聞くうちに、その目に興奮の色を宿し始めた。

「素晴らしいです、カイリ様! それなら、ゴルドマン商会のような、力による支配はもう生まれません!」
「がはは! なんだか、でっかい祭りの始まりみてえで、わくわくするじゃねえか!」

 俺の提案は、満場一致で可決された。
 俺たちは、すぐに計画を実行に移した。
 シルヴィア様の全面的な協力を得て、街の一角に広大な土地を確保し、「エトリア中央卸売市場」の建設に着手した。同時に、「エトリア商人ギルド」の設立を呼びかけると、ゴルドマン商会の圧政に苦しめられていた多くの中小商人たちが、こぞって賛同してくれた。
 サンライズ商会は、もはや単なる一企業ではない。この商業都市エトリアの、新しい経済の中心となる、巨大なプラットフォームへと生まれ変わろうとしていた。
 これは、誰かを打ち負かすための戦いじゃない。みんなで、豊かになるための、新しい挑戦だ。
 俺の現代知識と、この世界の人々の力が合わされば、きっと、とんでもなく面白い未来が作れるはずだ。
 反撃は終わった。ここからは、創造の始まりだ。俺は、活気に満ちた建設現場を見下ろしながら、胸の高鳴りを抑えきれなかった。
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