10 / 15
第9話「戦場の野戦病院と、宰相の陰謀」
そんな中、王国の北方を脅かしていた魔王軍の動きが、にわかに活発化したとの報せが王都にもたらされた。国境付近では激しい戦闘が繰り広げられ、多くの負傷者が出ているという。
これまでの戦争では、負傷兵は戦場に置き去りにされるか、後方の街に運ばれても、ろくな治療も受けられずに命を落とすのが常だった。
「そんなことはさせない」
俺は国王に直談判し、前線に「野戦病院」を設立することを提案した。負傷者をその場で治療し、一人でも多くの兵士の命を救うためのシステムだ。
「戦場で医療だと? 前代未聞だ!」
多くの貴族や将軍が反対した。しかし、俺に絶大な信頼を寄せる国王は、その提案を許可した。俺は医療チームを編成し、大量の医薬品と共に、すぐに北の国境地帯へと向かった。
戦場は、想像を絶するほど悲惨な場所だった。次々と担ぎ込まれてくる負傷兵たち。野戦病院は、瞬く間に血とうめき声で満たされた。
だが、俺たちは諦めなかった。俺が確立したトリアージ(重傷度選別)によって効率的に患者を振り分け、外科手術、薬物治療、そして衛生管理を徹底する。俺の知識と魔法、そしてエリアナをはじめとする医療チームの懸命な働きにより、これまでなら確実に死んでいたはずの重傷兵が、次々と命を取り留めていった。
兵士たちの士気は、飛躍的に上がった。「聖医様がいる限り、俺たちは死なない」。そんな言葉が、前線の合言葉になった。
しかし、その頃。王都では、宰相ダリウスの陰謀が最終段階に入っていた。
ダリウスは、俺が野戦病院の設立を提案したことすら、「魔王軍と内通し、王国の兵力を削ぐための策略だ」と吹聴した。そして、決定的な証拠を捏造する。魔法で作り出した、俺が魔王軍幹部と密会しているように見える偽の映像を、貴族たちの前で公開したのだ。
さらに、ダリウスは魔王軍に密使を送り、偽りの情報を流していた。「王国の聖医は、魔族の根絶を企んでいる。奴が開発した新薬は、魔族にとっての猛毒だ」と。
王都では、俺への疑念が急速に膨れ上がっていた。俺を英雄と称えていた民衆も、宰相の巧みな情報操作と、戦争への不安から、次第に俺を「国を売った裏切り者」と見るようになっていく。
「聖医カナタを、国家反逆罪で指名手配せよ!」
ついに国王の名をかたった偽の勅命が発令された。知らぬ間に、俺は王国全体から追われる身となっていたのだ。
前線で、ただひたすらに命を救い続けていた俺は、そんな王都の状況を知る由もなかった。味方であるはずの王国騎士団が、俺を捕縛するために静かに前線へと迫っていることにも気づかずに。
これまでの戦争では、負傷兵は戦場に置き去りにされるか、後方の街に運ばれても、ろくな治療も受けられずに命を落とすのが常だった。
「そんなことはさせない」
俺は国王に直談判し、前線に「野戦病院」を設立することを提案した。負傷者をその場で治療し、一人でも多くの兵士の命を救うためのシステムだ。
「戦場で医療だと? 前代未聞だ!」
多くの貴族や将軍が反対した。しかし、俺に絶大な信頼を寄せる国王は、その提案を許可した。俺は医療チームを編成し、大量の医薬品と共に、すぐに北の国境地帯へと向かった。
戦場は、想像を絶するほど悲惨な場所だった。次々と担ぎ込まれてくる負傷兵たち。野戦病院は、瞬く間に血とうめき声で満たされた。
だが、俺たちは諦めなかった。俺が確立したトリアージ(重傷度選別)によって効率的に患者を振り分け、外科手術、薬物治療、そして衛生管理を徹底する。俺の知識と魔法、そしてエリアナをはじめとする医療チームの懸命な働きにより、これまでなら確実に死んでいたはずの重傷兵が、次々と命を取り留めていった。
兵士たちの士気は、飛躍的に上がった。「聖医様がいる限り、俺たちは死なない」。そんな言葉が、前線の合言葉になった。
しかし、その頃。王都では、宰相ダリウスの陰謀が最終段階に入っていた。
ダリウスは、俺が野戦病院の設立を提案したことすら、「魔王軍と内通し、王国の兵力を削ぐための策略だ」と吹聴した。そして、決定的な証拠を捏造する。魔法で作り出した、俺が魔王軍幹部と密会しているように見える偽の映像を、貴族たちの前で公開したのだ。
さらに、ダリウスは魔王軍に密使を送り、偽りの情報を流していた。「王国の聖医は、魔族の根絶を企んでいる。奴が開発した新薬は、魔族にとっての猛毒だ」と。
王都では、俺への疑念が急速に膨れ上がっていた。俺を英雄と称えていた民衆も、宰相の巧みな情報操作と、戦争への不安から、次第に俺を「国を売った裏切り者」と見るようになっていく。
「聖医カナタを、国家反逆罪で指名手配せよ!」
ついに国王の名をかたった偽の勅命が発令された。知らぬ間に、俺は王国全体から追われる身となっていたのだ。
前線で、ただひたすらに命を救い続けていた俺は、そんな王都の状況を知る由もなかった。味方であるはずの王国騎士団が、俺を捕縛するために静かに前線へと迫っていることにも気づかずに。
あなたにおすすめの小説
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
王宮追放された没落令嬢は、竜神に聖女へ勝手にジョブチェンジさせられました~なぜか再就職先の辺境で、王太子が溺愛してくるんですが!?~
結田龍
恋愛
「小娘を、ひっ捕らえよ!」
没落令嬢イシュカ・セレーネはランドリック王国の王宮術師団に所属する水術師だが、宰相オズウェン公爵によって、自身の娘・公爵令嬢シャーロットの誘拐罪で王宮追放されてしまう。それはシャーロットとイシュカを敵視する同僚の水術師ヘンリエッタによる、退屈しのぎのための陰湿な嫌がらせだった。
あっという間に王都から追い出されたイシュカだが、なぜか王太子ローク・ランドリックによって助けられ、「今度は俺が君を助けると決めていたんだ」と甘く告げられる。
ロークとは二年前の戦争終結時に野戦病院で出会っていて、そこで聖女だとうわさになっていたイシュカは、彼の体の傷だけではなく心の傷も癒したらしい。そんなイシュカに対し、ロークは甘い微笑みを絶やさない。
あわあわと戸惑うイシュカだが、ロークからの提案で竜神伝説のある辺境の地・カスタリアへ向かう。そこは宰相から実権を取り返すために、ロークが領主として領地経営をしている場所だった。
王宮追放で職を失ったイシュカはロークの領主経営を手伝うが、ひょんなことから少年の姿をした竜神スクルドと出会い、さらには勝手に聖女と認定されてしまったのだった。
毎日更新、ハッピーエンドです。完結まで執筆済み。
恋愛小説大賞にエントリーしました。
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
「役立たず」と捨てられた仮面聖女、隣国の冷徹皇帝に拾われて真の力が目醒める〜今さら戻ってこいと言われても溺愛されすぎて忙しいので無理です
まさき
恋愛
「役立たずの偽聖女め、その不気味な仮面ごと消えてしまえ!」
十年もの間、仮面で素顔を隠し、身代わり聖女として国を支えてきたリゼット。
しかし、異母妹が聖女として目醒めたことで、婚約者の第一王子から婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
捨てられた先は、凶悪な魔獣が跋扈する『死の森』。
死を覚悟したリゼットだったが、仮面の下の本音は違った。
(……あー、やっとあのブラック職場からおさらばですわ! さっさと滅びればいいんですわ、あんな国!)
清々した気持ちで毒を吐くリゼットの前に現れたのは、隣国の冷徹皇帝・ガイウス。
彼はリゼットの仮面の下に隠された「強大すぎる魔力」と、表の顔とは裏腹な「苛烈な本性」を瞬時に見抜き、強引に連れ去ってしまう。
「気に入った。貴様は今日から、私のものだ」
バルディア帝国へと連行されたリゼットを待っていたのは、冷徹なはずの皇帝からの、逃げ場のない過保護な溺愛だった……。
一方、真の聖女(リゼット)を失った王国は、守護の結界が崩壊し絶体絶命の危機に陥る。
「戻ってきてくれ」と泣きつく王子たちに対し、皇帝の腕の中に収まったリゼットは、極上のスイーツを頬張りながら優雅に言い放つ。
「お断りいたしますわ。私、今とっても忙しい(溺愛されている)んですもの」
仮面の下で毒を吐くリアリスト聖女と、彼女を離さない執着皇帝の、大逆転溺愛ファンタジーが開幕!
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
【完結】竜王に嫁いだら、推しの半竜皇子の継母になりました〜冷酷な夫には興味ありませんが、闇落ち予定の皇子は私が全力で幸せにします!〜
せりもも
恋愛
転生したのは、web小説の世界だった。物語が始まる前の時間、隣国の竜王へ嫁ぐ薄幸の王女、デジレに。
結婚相手である竜王ワッツァは、冷酷非道で人間を蔑む恐ろしい竜人だ。彼はデジレを、半竜(半分竜で半分人間)である息子の養育係としかみていない。けれどその息子バートラフこそ、前世の「わたし」の最オシだった。
この世界のバートラフはまだ5歳。懸命に悪ガキぶっているけど、なんてかわいいの!? 小説のバートラフは、闇落ちして仲間の騎士たちに殺されてしまうけど、そんな未来は、絶対に許さないんだから!
幼いバートラフに対する、愛情いっぱいの子育ての日々が始まる。やがて彼の成竜への通過儀礼を経て、父の竜王は、デジレに対して執着を見せ始める。
ところが、竜と人間の戦争が始まってしまう。おとなになったバートラフは人間側につき、聖女の騎士団に入った。彼は、父の竜王に刃を向けられるのか? そして、転生者デジレに与えられたスキル「プロットを破断する者」を、彼女はどう発動させるのか。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。