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第7話「狙われた食堂と怒れる騎士団長」
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王宮の晩餐会から数日後。ジークフリートが、国境付近で発生した魔物のスタンピードを鎮圧するため、緊急の任務で王都を離れることになった。
「しばらく店には来られない。何かあったら、すぐに部下に連絡を」
「大丈夫ですよ。気をつけて、行ってきてくださいね」
心配そうな彼を、梓は笑顔で送り出した。この時、ヴァルター宰相がこの機会を待っていたことに、彼女は気づいていなかった。
***
ジークフリートが王都を離れた、その夜。
『食堂きまぐれ』が、閉店後の静けさに包まれる中、店の扉が静かに、しかし有無を言わさぬ力で開かれた。そこに立っていたのは、黒装束に身を包んだ、複数の屈強な男たち。ヴァルター宰相が雇った傭兵だった。
「アズサ殿には、我々と一緒に来ていただく」
目的は、梓の身柄確保。有無を言わさぬ態度で迫ってくる男たちに、梓は恐怖で動けなかった。その時だった。
「アズサ様に、指一本触れさせない!」
店の奥から飛び出してきたリリィが、梓の前に立ちはだかり、猫のように背を弓なりにして威嚇する。しかし、子供の威嚇など傭兵たちには通じない。
一人の男がリリィを無造作に掴み上げる。
「リリィちゃん!」
「この小娘がどうなってもいいのか?」
人質を取られ、梓は抵抗できなくなった。リリィは傭兵たちに腕を縛られ、そのまま連れ去られてしまう。
「娘を返してほしければ、明日、一人で宰相閣下の屋敷へ来い。余計な真似をすれば、この子の命はないと思え」
卑劣な言葉を残し、傭兵たちは闇に消えた。
一人残された梓は、その場に崩れ落ちた。自分のせいで、リリィが危険な目に。後悔と絶望が、彼女の心を押し潰す。
***
どれくらいの時間が経っただろうか。店の扉が静かに開いた。そこに立っていたのは、任務を終え、急ぎ帰ってきたジークフリートだった。店内の荒れた様子と、泣き崩れる梓の姿を見て、彼は全てを察した。
梓から事情を聞いたジークフリートの体から、かつてないほどの静かな、しかし底知れない怒りのオーラが立ち上る。
「……ヴァルターめ。万死に値する」
「今すぐ騎士団を動かす。屋敷ごと、叩き潰してやる」
「待って、ジークさん!」
騎士団を動かそうとする彼を、梓は必死に制止した。
「これは罠です。騎士団が動けば、宰相の思う壺です。それに、これは私のお店の問題だから……私に行かせてください」
彼女の瞳には、涙の代わりに、強い決意の光が宿っていた。その手には、いつの間にか握りしめられた小さな包みがあった。中身は、昨日試作したばかりのクッキー。食べた相手を強制的に、しかし穏やかに眠らせる特殊なハーブを練り込んだものだった。
料理人としての、彼女なりの戦う覚悟。
それを見たジークフリートは、静かに首を横に振った。
「馬鹿を言うな。お前を一人で行かせるわけがないだろう」
彼は梓の手を強く握る。
「アズサは料理で戦え。俺は、お前とリリィを守るための剣になる。二人で、あの子を必ず救い出すんだ」
二人の視線が交錯する。絶望の闇の中に、確かな希望の光が灯った瞬間だった。
「しばらく店には来られない。何かあったら、すぐに部下に連絡を」
「大丈夫ですよ。気をつけて、行ってきてくださいね」
心配そうな彼を、梓は笑顔で送り出した。この時、ヴァルター宰相がこの機会を待っていたことに、彼女は気づいていなかった。
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ジークフリートが王都を離れた、その夜。
『食堂きまぐれ』が、閉店後の静けさに包まれる中、店の扉が静かに、しかし有無を言わさぬ力で開かれた。そこに立っていたのは、黒装束に身を包んだ、複数の屈強な男たち。ヴァルター宰相が雇った傭兵だった。
「アズサ殿には、我々と一緒に来ていただく」
目的は、梓の身柄確保。有無を言わさぬ態度で迫ってくる男たちに、梓は恐怖で動けなかった。その時だった。
「アズサ様に、指一本触れさせない!」
店の奥から飛び出してきたリリィが、梓の前に立ちはだかり、猫のように背を弓なりにして威嚇する。しかし、子供の威嚇など傭兵たちには通じない。
一人の男がリリィを無造作に掴み上げる。
「リリィちゃん!」
「この小娘がどうなってもいいのか?」
人質を取られ、梓は抵抗できなくなった。リリィは傭兵たちに腕を縛られ、そのまま連れ去られてしまう。
「娘を返してほしければ、明日、一人で宰相閣下の屋敷へ来い。余計な真似をすれば、この子の命はないと思え」
卑劣な言葉を残し、傭兵たちは闇に消えた。
一人残された梓は、その場に崩れ落ちた。自分のせいで、リリィが危険な目に。後悔と絶望が、彼女の心を押し潰す。
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どれくらいの時間が経っただろうか。店の扉が静かに開いた。そこに立っていたのは、任務を終え、急ぎ帰ってきたジークフリートだった。店内の荒れた様子と、泣き崩れる梓の姿を見て、彼は全てを察した。
梓から事情を聞いたジークフリートの体から、かつてないほどの静かな、しかし底知れない怒りのオーラが立ち上る。
「……ヴァルターめ。万死に値する」
「今すぐ騎士団を動かす。屋敷ごと、叩き潰してやる」
「待って、ジークさん!」
騎士団を動かそうとする彼を、梓は必死に制止した。
「これは罠です。騎士団が動けば、宰相の思う壺です。それに、これは私のお店の問題だから……私に行かせてください」
彼女の瞳には、涙の代わりに、強い決意の光が宿っていた。その手には、いつの間にか握りしめられた小さな包みがあった。中身は、昨日試作したばかりのクッキー。食べた相手を強制的に、しかし穏やかに眠らせる特殊なハーブを練り込んだものだった。
料理人としての、彼女なりの戦う覚悟。
それを見たジークフリートは、静かに首を横に振った。
「馬鹿を言うな。お前を一人で行かせるわけがないだろう」
彼は梓の手を強く握る。
「アズサは料理で戦え。俺は、お前とリリィを守るための剣になる。二人で、あの子を必ず救い出すんだ」
二人の視線が交錯する。絶望の闇の中に、確かな希望の光が灯った瞬間だった。
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