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第9話「大飢饉と救いの手」
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王宮からの召喚状を受け取ったカイトは、フェン、リリア、ミーナと共に王都へと旅立った。初めて訪れる王都は巨大な城壁に囲まれ、壮麗な建物が立ち並ぶ、ヴェルデの町とは比較にならないほどの大都市だった。
王城に到着したカイトたちは、謁見の間へと通された。きらびやかな装飾が施された広大な空間。その最奥にある玉座には威厳に満ちた壮年の男性、国王アルフォンスが座っていた。そしてその隣には、あの視察の時に出会った少女が、美しいドレスをまとって立っていた。
「面を上げよ、カイトとやら」
国王の重々しい声が響く。カイトが顔を上げると、隣に立つ少女と目が合った。彼女はカイトに気づき、わずかに微笑んだ。
国王は、視察の報告を受けてカイトの功績を高く評価していることを告げた。
「辺境の不毛の地を、あれほどの楽土に変えるとはまこと見事である。その功に報いるため、お前を男爵位に叙し、ヴェルデの地を正式な領地として与えることとする」
「は……! ありがたき幸せにございます」
予想外の叙勲に、カイトは驚きながらも頭を下げた。これで、もうゲッコーのような役人に理不尽な搾取をされる心配はなくなった。
謁見が終わり、カイトたちは王女セレスティアに城内を案内されることになった。
「驚かせてしまってごめんなさい。身分を隠していたこと、お許しくださいね」
セレスティアは、悪戯っぽく笑いながら言った。
「いえ、とんでもないです。王女殿下が自らあのような辺境まで足を運んでくださるとは……」
「私のことは、セレスティアと呼んでください、カイトさん」
彼女の親しみやすい態度に、カイトも自然と緊張が解けていった。
セレスティアは、カイトの町がなぜあれほど発展できたのか、そして人々の表情がなぜあれほど幸福に満ちていたのか、その理由を知りたがっていた。カイトは、特別なことは何もしていない、ただ土と作物に真摯に向き合ってきただけだと語った。
その時、城に慌ただしい様子の伝令が駆け込んできた。
「申し上げます! 北方のアルト地方で大規模な干ばつが発生! このままでは、大規模な飢饉となるのは必至との報告です!」
その報告に、国王や大臣たちの顔色が変わった。アルト地方は王国の主要な穀倉地帯の一つだ。そこが機能不全に陥れば、王国全体が深刻な食糧危機に見舞われることになる。
「なんと……備蓄の食料はどれくらいあるのだ!」
「はっ! しかし、この規模の飢饉となれば半年も持たないかと……!」
重苦しい空気が謁見の間を支配する。貴族たちは自分たちの領地の食料を供出することに難色を示し、議論は紛糾するばかり。
セレスティアは、苦しむ民を思い悲痛な表情で唇を噛んでいた。
その様子を見ていたカイトは、静かに前に進み出た。
「国王陛下。もし、よろしければ俺に手伝わせてもらえませんか」
その場にいた全員の視線が、カイトに集中する。
「カイト男爵……お前に、何か策があるというのか?」
国王が問いかける。
「はい。俺の領地、ヴェルデには作物がたくさんあります。それに俺の育てる作物は、普通の何倍もの速さで育ちます。今から種をまいても、飢饉が本格化する前には十分な量の食料を収穫できるはずです」
彼の言葉に、大臣の一人が鼻で笑った。
「馬鹿なことを。たかが一つの町の生産量で、国全体の飢饉がどうにかなるものか」
しかしセレスティアはカイトの言葉に、希望の光を見ていた。彼女は、あの町の奇跡的な光景をその目で見たのだ。
「父上、お願いします! カイトさんに任せてみてはいかがでしょうか!」
セレスティアの真剣な訴えに、国王はしばらく考え込んだ後、決断を下した。
「……よかろう。カイト男爵。お前に、この国家の危機を救う全権を委ねる。もし成功した暁には、相応の褒賞を約束しよう。だが、もし失敗すれば……分かっておるな?」
「はい。必ず、やり遂げてみせます」
カイトは力強くうなずいた。
カイトはすぐにヴェルデへと戻り、町の人々に事情を説明した。
「北の地方で、たくさんの人たちが食べるものに困っている。だから俺たちの力で、その人たちを助けたいんだ。みんな、協力してくれるか?」
彼の言葉に、反対する者は一人もいなかった。
「当たり前だ、カイト!」
「俺たちも、あんたの野菜に救われた命だ。今度は俺たちが誰かを助ける番だぜ!」
ヴェルデの人々は、かつて自分たちが貧しさの中にいたことを忘れていなかった。だからこそ、今苦しんでいる人々の痛みが分かるのだ。
その日から、ヴェルデの町は国家的な食料生産拠点としてフル稼働を始めた。
カイトは『万能農具』の力を最大限に解放し、次々と畑を広げていく。リリアは少ない水でも育つ品種の改良に取り組み、ミーナは収穫した食料を効率的に輸送するためのルートを確保した。町の誰もが、自分の役割を懸命に果たした。
そして一月後。ヴェルデの広大な大地には、見渡す限りの黄金色の麦畑と太陽の光を浴びて輝く野菜たちが実っていた。それは一つの町が生み出したとは到底思えない、まさに奇跡としか言いようのない光景だった。
大量の食料を積んだ荷馬車の列が、ミーナの指揮のもと飢饉に苦しむ北方へと次々と出発していく。
それは絶望の淵にいた王国にとって、一筋の、しかし何よりも力強い希望の光となった。カイトという一人の男がもたらした奇跡は、今や国全体を救う大きな力へと変わろうとしていた。
王城に到着したカイトたちは、謁見の間へと通された。きらびやかな装飾が施された広大な空間。その最奥にある玉座には威厳に満ちた壮年の男性、国王アルフォンスが座っていた。そしてその隣には、あの視察の時に出会った少女が、美しいドレスをまとって立っていた。
「面を上げよ、カイトとやら」
国王の重々しい声が響く。カイトが顔を上げると、隣に立つ少女と目が合った。彼女はカイトに気づき、わずかに微笑んだ。
国王は、視察の報告を受けてカイトの功績を高く評価していることを告げた。
「辺境の不毛の地を、あれほどの楽土に変えるとはまこと見事である。その功に報いるため、お前を男爵位に叙し、ヴェルデの地を正式な領地として与えることとする」
「は……! ありがたき幸せにございます」
予想外の叙勲に、カイトは驚きながらも頭を下げた。これで、もうゲッコーのような役人に理不尽な搾取をされる心配はなくなった。
謁見が終わり、カイトたちは王女セレスティアに城内を案内されることになった。
「驚かせてしまってごめんなさい。身分を隠していたこと、お許しくださいね」
セレスティアは、悪戯っぽく笑いながら言った。
「いえ、とんでもないです。王女殿下が自らあのような辺境まで足を運んでくださるとは……」
「私のことは、セレスティアと呼んでください、カイトさん」
彼女の親しみやすい態度に、カイトも自然と緊張が解けていった。
セレスティアは、カイトの町がなぜあれほど発展できたのか、そして人々の表情がなぜあれほど幸福に満ちていたのか、その理由を知りたがっていた。カイトは、特別なことは何もしていない、ただ土と作物に真摯に向き合ってきただけだと語った。
その時、城に慌ただしい様子の伝令が駆け込んできた。
「申し上げます! 北方のアルト地方で大規模な干ばつが発生! このままでは、大規模な飢饉となるのは必至との報告です!」
その報告に、国王や大臣たちの顔色が変わった。アルト地方は王国の主要な穀倉地帯の一つだ。そこが機能不全に陥れば、王国全体が深刻な食糧危機に見舞われることになる。
「なんと……備蓄の食料はどれくらいあるのだ!」
「はっ! しかし、この規模の飢饉となれば半年も持たないかと……!」
重苦しい空気が謁見の間を支配する。貴族たちは自分たちの領地の食料を供出することに難色を示し、議論は紛糾するばかり。
セレスティアは、苦しむ民を思い悲痛な表情で唇を噛んでいた。
その様子を見ていたカイトは、静かに前に進み出た。
「国王陛下。もし、よろしければ俺に手伝わせてもらえませんか」
その場にいた全員の視線が、カイトに集中する。
「カイト男爵……お前に、何か策があるというのか?」
国王が問いかける。
「はい。俺の領地、ヴェルデには作物がたくさんあります。それに俺の育てる作物は、普通の何倍もの速さで育ちます。今から種をまいても、飢饉が本格化する前には十分な量の食料を収穫できるはずです」
彼の言葉に、大臣の一人が鼻で笑った。
「馬鹿なことを。たかが一つの町の生産量で、国全体の飢饉がどうにかなるものか」
しかしセレスティアはカイトの言葉に、希望の光を見ていた。彼女は、あの町の奇跡的な光景をその目で見たのだ。
「父上、お願いします! カイトさんに任せてみてはいかがでしょうか!」
セレスティアの真剣な訴えに、国王はしばらく考え込んだ後、決断を下した。
「……よかろう。カイト男爵。お前に、この国家の危機を救う全権を委ねる。もし成功した暁には、相応の褒賞を約束しよう。だが、もし失敗すれば……分かっておるな?」
「はい。必ず、やり遂げてみせます」
カイトは力強くうなずいた。
カイトはすぐにヴェルデへと戻り、町の人々に事情を説明した。
「北の地方で、たくさんの人たちが食べるものに困っている。だから俺たちの力で、その人たちを助けたいんだ。みんな、協力してくれるか?」
彼の言葉に、反対する者は一人もいなかった。
「当たり前だ、カイト!」
「俺たちも、あんたの野菜に救われた命だ。今度は俺たちが誰かを助ける番だぜ!」
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そして一月後。ヴェルデの広大な大地には、見渡す限りの黄金色の麦畑と太陽の光を浴びて輝く野菜たちが実っていた。それは一つの町が生み出したとは到底思えない、まさに奇跡としか言いようのない光景だった。
大量の食料を積んだ荷馬車の列が、ミーナの指揮のもと飢饉に苦しむ北方へと次々と出発していく。
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