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第4章「緑の楽園に迫る黒い影」
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クラウス王子が王都へ帰ってから数ヶ月。辺境の地は、見違えるように活気づいていました。私の指導のもと、住民たちは次々と新しい農法を取り入れ、畑は豊かに実り始めました。じゃがいもだけでなく、カボチャに似た野菜や、栄養価の高い豆類も収穫できるようになり、集落の食料事情は劇的に改善されたのです。物々交換のために、近隣の村からも人々が訪れるようになり、辺境はもはや見捨てられた土地ではなく、希望の地へと変わりつつありました。
しかし、光が強まれば、影もまた濃くなるものです。
ある朝、事件は起こりました。
「大変だ、セレスティア様! 畑が……畑が荒らされてる!」
血相を変えて駆け込んできた村人の報告に、私は急いで畑へと向かいました。そこに広がっていたのは、信じがたい光景でした。丹精込めて育ててきた野菜たちが、無惨にも引き抜かれ、踏み荒らされているのです。まるで、巨大な獣が暴れ回ったかのよう。しかし、その痕跡は明らかに人為的なものでした。
「なんてことを……」
呆然と立ち尽くす私に、住民たちが駆け寄ります。
「誰がこんな酷いことを……」
「きっと、俺たちの成功を妬んだ奴らの仕業だ」
皆の顔に、怒りと不安の色が浮かびます。ようやく掴みかけた希望を、理不-尽な暴力によって踏みにじられたのです。
私は、すぐに犯人の目星がつきました。クラウス様の側近であり、私を追放した張本人――ゲルトナー宰相です。彼が、辺境の成功を快く思うはずがありません。王子の政治視察でこの地の発展が報告された今、何らかの妨害工作を仕掛けてくることは予想していました。
「皆さん、落ち着いてください。下を向いていても、野菜は元には戻りません。今、私たちがすべきことは、犯人探しよりも、この畑を守り抜くことです」
私は気丈に振る舞い、皆を鼓舞しました。
「今夜から、見張りを立てます。そして、畑の周りに罠を仕掛けましょう」
幸い、私の知識の中には、畑を害獣から守るための知恵もありました。音を立てる仕掛けや、簡単な落とし穴。住民たちは私の指示に従い、一丸となって防衛策を練り始めました。かつてはバラバラだった彼らが、共通の敵を前に、一つの強い意志で結束していくのを感じました。
しかし、敵の妨害は一度では終わりませんでした。夜の見張りの目をかいくぐり、今度は貯水池に汚物を投げ込まれるという卑劣な嫌がらせを受けました。農業にとって、水は命です。これは、私たちの息の根を止めようとする、明確な攻撃でした。
絶望的な状況に、さすがの住民たちも動揺を隠せません。
「もうだめだ……。俺たちじゃ、王都の偉い人には逆らえないんだ……」
弱音を吐く者も現れ始めました。その時です。
「――支援物資をお持ちしました」
集落に現れたのは、王家の紋章を掲げた数台の馬車でした。そして、その荷台から降ろされたのは、大量の清水と、真新しい農具の数々。指揮を執っていたのは、王子の護衛騎士の一人でした。
「これは、クラウス王子殿下からの、ささやかな贈り物です。『何者かの妨害に屈することなく、開拓を続けてほしい』とのお言葉でした」
騎士はそう言うと、私に一通の手紙を差し出しました。そこには、クラウス様の筆跡で、こう書かれていました。
『君の努力を、無にはさせない。黒幕は必ず私が突き止める。今は耐えてくれ』
やはり、クラウス様も気づいていたのです。この妨害工作の裏に、宰相がいることを。そして、彼は王都で宰相派と戦いながら、密かに私たちを支援してくれていた。政治視察を名目に辺境を訪れたのも、宰相の目を欺き、私に警告と支援の道筋をつけるためだったのかもしれません。
彼の協力は、大きな力になりました。何より、住民たちの心を奮い立たせたのです。「王子様が、俺たちを見ていてくれる」。その事実が、彼らの絶望を希望へと塗り替えました。
私たちは、より一層結束を固めました。宰相の陰謀という明確な敵の存在は、私たちの覚悟を決めさせました。これは、ただの農業ではありません。私たちの生活と誇りを守るための、戦いなのだと。
私はクラウス様からの手紙を強く握りしめました。敵対者との対立は、もう避けられません。そして、それは、私とクラウス様との関係にも、新たな局面をもたらすことになりました。私たちは図らずも、ゲルトナー宰相という共通の敵を持つ「共闘関係」になりつつあったのです。
しかし、光が強まれば、影もまた濃くなるものです。
ある朝、事件は起こりました。
「大変だ、セレスティア様! 畑が……畑が荒らされてる!」
血相を変えて駆け込んできた村人の報告に、私は急いで畑へと向かいました。そこに広がっていたのは、信じがたい光景でした。丹精込めて育ててきた野菜たちが、無惨にも引き抜かれ、踏み荒らされているのです。まるで、巨大な獣が暴れ回ったかのよう。しかし、その痕跡は明らかに人為的なものでした。
「なんてことを……」
呆然と立ち尽くす私に、住民たちが駆け寄ります。
「誰がこんな酷いことを……」
「きっと、俺たちの成功を妬んだ奴らの仕業だ」
皆の顔に、怒りと不安の色が浮かびます。ようやく掴みかけた希望を、理不-尽な暴力によって踏みにじられたのです。
私は、すぐに犯人の目星がつきました。クラウス様の側近であり、私を追放した張本人――ゲルトナー宰相です。彼が、辺境の成功を快く思うはずがありません。王子の政治視察でこの地の発展が報告された今、何らかの妨害工作を仕掛けてくることは予想していました。
「皆さん、落ち着いてください。下を向いていても、野菜は元には戻りません。今、私たちがすべきことは、犯人探しよりも、この畑を守り抜くことです」
私は気丈に振る舞い、皆を鼓舞しました。
「今夜から、見張りを立てます。そして、畑の周りに罠を仕掛けましょう」
幸い、私の知識の中には、畑を害獣から守るための知恵もありました。音を立てる仕掛けや、簡単な落とし穴。住民たちは私の指示に従い、一丸となって防衛策を練り始めました。かつてはバラバラだった彼らが、共通の敵を前に、一つの強い意志で結束していくのを感じました。
しかし、敵の妨害は一度では終わりませんでした。夜の見張りの目をかいくぐり、今度は貯水池に汚物を投げ込まれるという卑劣な嫌がらせを受けました。農業にとって、水は命です。これは、私たちの息の根を止めようとする、明確な攻撃でした。
絶望的な状況に、さすがの住民たちも動揺を隠せません。
「もうだめだ……。俺たちじゃ、王都の偉い人には逆らえないんだ……」
弱音を吐く者も現れ始めました。その時です。
「――支援物資をお持ちしました」
集落に現れたのは、王家の紋章を掲げた数台の馬車でした。そして、その荷台から降ろされたのは、大量の清水と、真新しい農具の数々。指揮を執っていたのは、王子の護衛騎士の一人でした。
「これは、クラウス王子殿下からの、ささやかな贈り物です。『何者かの妨害に屈することなく、開拓を続けてほしい』とのお言葉でした」
騎士はそう言うと、私に一通の手紙を差し出しました。そこには、クラウス様の筆跡で、こう書かれていました。
『君の努力を、無にはさせない。黒幕は必ず私が突き止める。今は耐えてくれ』
やはり、クラウス様も気づいていたのです。この妨害工作の裏に、宰相がいることを。そして、彼は王都で宰相派と戦いながら、密かに私たちを支援してくれていた。政治視察を名目に辺境を訪れたのも、宰相の目を欺き、私に警告と支援の道筋をつけるためだったのかもしれません。
彼の協力は、大きな力になりました。何より、住民たちの心を奮い立たせたのです。「王子様が、俺たちを見ていてくれる」。その事実が、彼らの絶望を希望へと塗り替えました。
私たちは、より一層結束を固めました。宰相の陰謀という明確な敵の存在は、私たちの覚悟を決めさせました。これは、ただの農業ではありません。私たちの生活と誇りを守るための、戦いなのだと。
私はクラウス様からの手紙を強く握りしめました。敵対者との対立は、もう避けられません。そして、それは、私とクラウス様との関係にも、新たな局面をもたらすことになりました。私たちは図らずも、ゲルトナー宰相という共通の敵を持つ「共闘関係」になりつつあったのです。
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