ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人

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第十一話「受付嬢の正体」

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「暁の翼」の活躍は、もはや辺境の一都市に収まるものではなくなっていた。古代遺跡の発見と、そこから得られた莫大な富。Aランクモンスターを次々と討伐する圧倒的な実力。アッシュたちの噂は、風に乗って王都にまで届き始めていた。
 そんなある日の夕暮れ時、アッシュはギルドからの帰り道、アナスタシアに呼び止められた。
「アッシュさん。少し、お時間よろしいでしょうか」
 いつもと違う、真剣な表情。彼女はアッシュを人気のないギルドの裏手へと案内した。
「どうしたんですか、アナスタシアさん。改まって」
 アッシュが尋ねると、彼女はいつも掛けている知的な眼鏡を外し、まっすぐに彼を見つめた。眼鏡のないその素顔は、普段の親しみやすい雰囲気とは違う、人を惹きつけてやまない高貴なオーラを放っていた。
「アッシュさん。あなたに、私の本当の姿をお見せしなければなりません」
 そう言うと、彼女は深々と頭を下げた。
「私の本名は、アナスタシア・フォン・エルロード。このエルロード王国の、第一王女です」
「……え?」
 アッシュは思わず言葉を失った。王族に匹敵する、とは鑑定で出ていたが、まさか本物の王女だったとは。
 アナスタシアは顔を上げ、静かに語り始めた。
 現在の王国は、腐敗した貴族たちが権力を握り、私腹を肥やしていること。父である国王は病に伏せており、彼らの操り人形と化していること。民を思う一部の貴族たちは弾圧され、国は内側から崩壊しかけていること。
 そして、彼女自身も、腐敗貴族たちの筆頭である宰相一派との権力争いに敗れ、命からがら王都を逃れ、この辺境の町で身分を隠して再起の機会を窺っていたこと。
「私は、この国を……父上が愛したこの国を、民を、腐敗した者たちの手から取り戻したいのです」
 アナスタシアの瞳には、強い決意の光が宿っていた。
「あなたがこの町に来てから、すべてが変わりました。あなたは魔物を討伐し、人々を守り、古代遺跡の富で町を潤そうとしてくれている。その力、その人徳……あなたこそ、この国を救う希望の光だと、私は信じています」
 彼女は、王女としての誇りをかなぐり捨て、アッシュに向かって再び深く頭を下げた。
「どうか、私にあなたの力を貸してください。この腐敗した王国を正し、苦しむ民を救うために。お願いします、アッシュ・スチュワート」
 それは、一国の王女からの、魂の懇願だった。
 アッシュは黙って彼女の話を聞いていた。政治や権力争いには興味はない。だが、彼の脳裏に浮かんだのは、リンドウの町で暮らす人々の笑顔だった。
 アナスタシア、ルナ、ミーファ、シロ。ギルドで笑い合う冒険者たち。自分たちの活躍を喜んでくれる商店の店主。道ですれ違う子供たち。
 この町は、追放された自分を温かく受け入れてくれた、かけがえのない大切な居場所だ。
 もし、王国の腐敗がこの町にまで及ぶというのなら。もし、大切な仲間たちの笑顔が脅かされるというのなら。
「……俺は、難しいことはわかりません」
 アッシュは静かに口を開いた。
「でも、アナスタシアさん……いや、アナスタシア様が守りたいものが、俺の守りたいものと同じだというなら。俺の大切なこの居場所、リンドウの町を守るためになるのなら。力を貸します」
 その言葉に、アナスタシアは顔を上げた。彼女の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「……ありがとう、ございます。ありがとう、アッシュ」
 彼女はもはや王女ではなく、一人の女性として、心からの感謝を告げた。
 この日、辺境の町で交わされた約束が、やがて王国全体の運命を大きく動かしていくことになる。追放された鑑定士の物語は、今、新たな局面を迎えようとしていた。
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