ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人

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第十四話「逆転する名声」

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 アッシュ・スチュワートの名声は、日の出の勢いで王国中に広まっていた。
 Aランク冒険者として次々と高難易度の依頼を達成し、人々を魔物の脅威から守る英雄。
 領主代行として、不毛の地を甦らせ、新たな特産品を生み出して辺境の町を未曾有の好景気に導いた名君。
 二つの顔を持つ彼の噂は、吟遊詩人の歌に乗って、王都の酒場でもてはやされるようになっていた。
「聞いたか?辺境の英雄アッシュ様の話を!」
「ああ、鑑定の力で奇跡を起こすっていう、あの人だろ?」
「『暁の翼』は、今や王国最強のパーティだという噂だぜ」
 その一方で、勇者レオと「光の剣」の評判は、地に落ちていた。
 魔王軍幹部への敗走、任務の連続失敗。彼らがかつて持っていた輝きは完全に失われ、王家からの潤沢な支援も、ついに打ち切られてしまった。
 生活費に困った彼らは、日銭を稼ぐために低ランクの依頼を受けざるを得なくなる。しかし、アッシュがいた頃のような効率的な立ち回りはできず、ゴブリン相手にすら苦戦し、泥だらけになる始末。
 民衆の視線は、もはや冷ややかだった。
「あれが、勇者様ご一行か……」
「見る影もないな。すっかり落ちぶれちまって」
「辺境のアッシュ様の方が、よっぽど英雄らしいぜ」
 陰口を叩かれ、嘲笑を浴びる日々。パーティの雰囲気は、もはや最悪を通り越して、崩壊寸前だった。
 レオはプライドを傷つけられ、酒に溺れては「俺は勇者だぞ!」と荒れるようになった。カイルはそんなレオを見限り、他の貴族への鞍替えを画策し始める。セラは、心酔していたレオの惨めな姿に幻滅し、ただただ泣くだけの日々を送っていた。
 そして、ついにその日が来た。
 剣聖ソフィアが、レオの前に静かに立った。
「レオ。私は、このパーティを抜ける」
「……なんだと?」
 酒瓶を片手に持ったレオが、濁った目で彼女をにらむ。
「今のあなたに、もうついてはいけない。今のこのパーティは、もはや『光の剣』ではない。ただの、意地と見栄と嫉妬にまみれた集団だ」
 ソフィアの言葉は、静かだが、刃のように鋭かった。
「あなたには、最後までわからなかったのね。私たちが失ったものが、何だったのか」
「失ったものだと?あの無能な鑑定士のことか!まだあいつの事を!」
「ええ、そうよ!」
 ソフィアは声を張り上げた。
「私たちは、アッシュを失ったんじゃない!アッシュという『心臓』を、自らえぐり出して捨てたのよ!彼がいたから、私たちはSランクパーティでいられた。彼がいたから、あなたは『勇者』でいられた!その事実に、どうして気づかないの!」
 レオは、ソフィアの気迫に押されて言葉を失う。
「私は行くわ。噂を頼りに、彼に会いに行く。そして、私の過ちを謝罪する」
 ソフィアはそう言い残すと、背を向け、アジトから出て行った。彼女の瞳には、かつての仲間への憐れみと、アッシュへのつぐないの決意が燃えていた。
 残されたレオは、がっくりと膝をつき、手の中の酒瓶を床に叩きつけた。
 ガシャン!
 割れた瓶と同じように、勇者パーティ「光の剣」の絆は、完全に砕け散った。
 英雄と落ちぶれた勇者。二人の立場は、今や完全に逆転していた。
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