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第7話「噂と移住者」
「最果ての地に、楽園があるらしい」
「ああ、聞いたぜ。どんな作物も黄金のように実り、魔物さえ寄せ付けない植物の要塞だとか」
「飢えも争いもない、夢のような場所だそうだ」
最初に村を訪れた行商人が広めた噂は、尾ひれがついて大陸中に広まっていった。圧政に苦しむ農民、飢饉にあえぐ人々、戦乱を逃れてきた者たちにとってその噂は一筋の光明だった。
そしてその光を求めて人々が俺たちの村へとやって来るようになった。
最初は数家族だった移住希望者は日を追うごとに増え続け、ついにはキャラバンを組んでやってくるまでになった。痩せこけた土地が広がるだけの小さな開拓村は、あっという間に活気あふれる町へと姿を変えていった。
人が増えれば問題も増える。住居の確保、食料の配分、そして何より共同生活のルール作り。素人集団である俺たちだけではすぐに限界が来ていただろう。だが俺たちにはセラフィーナがいた。
「町の区画整理は、私が計画します。住居区、商業区、農業区を明確に分け、効率的な都市機能を構築しますわ」
「移住者の方々には、まず戸籍の登録を行っていただきます。名前、年齢、そして以前の職業や特技を教えてください。適材適所で、皆さんに仕事を与えます」
「町の自治ルールを制定します。ここに住む者は皆が等しくこのルールに従うこと。破った者には罰則を与えます」
セラフィーナはまるで水を得た魚のようだった。彼女が持つ貴族としての教育、内政の知識が、この急造の町で遺憾なく発揮される。彼女が立てる計画は常に的確で公平だった。移住者たちは彼女の気品と誰もが見惚れるほどの知性に圧倒され、素直にその指導に従った。
俺は生産担当だ。
【絶対育成】を使い、増え続ける人口を賄うだけの食料を生産し続ける。町のインフラ整備に必要な木材もスキルで生み出した「超硬化樹木」で供給した。上下水道の整備には、水を浄化する能力を持つ「浄化草」を植えた水路を活用した。
アランは生産を、セラフィーナは統治を担った。
この完璧な役割分担によって俺たちの町は驚異的なスピードで発展していった。大工仕事が得意な者は家を建て、鍛冶の経験がある者は農具を作り、商売の心得がある者は行商人との交易を取り仕切る。誰もが自分の役割を見つけ、生き生きと働き、そして夜には美味い飯を腹いっぱい食べた。
子供たちの笑い声が町のあちこちで響いている。人々の顔には未来への希望が満ち溢れていた。
俺は町の高台からその光景を眺めていた。
「すごい町になったな」
「ええ。ですが、まだまだですわ。やるべきことは山積みです」
隣に立つセラフィーナが同じ景色を見ながら言う。
「なあ、セラフィーナ。この町に名前をつけないか?」
俺の提案に彼女は少し驚いたような顔をして、そして優しく微笑んだ。
「……そうですわね。では、『アルカディア』というのはどうでしょう。古の言葉で『理想郷』を意味します」
「アルカディア……。いい名前だ」
こうして俺たちの町は「アルカディア」と名付けられた。
辺境の地に生まれた小さくて、だけど世界で一番豊かで平和な理想郷。しかしその輝きが強ければ強いほど、その光を欲しがる者たちの黒い影もまた色濃くなっていく。
「ああ、聞いたぜ。どんな作物も黄金のように実り、魔物さえ寄せ付けない植物の要塞だとか」
「飢えも争いもない、夢のような場所だそうだ」
最初に村を訪れた行商人が広めた噂は、尾ひれがついて大陸中に広まっていった。圧政に苦しむ農民、飢饉にあえぐ人々、戦乱を逃れてきた者たちにとってその噂は一筋の光明だった。
そしてその光を求めて人々が俺たちの村へとやって来るようになった。
最初は数家族だった移住希望者は日を追うごとに増え続け、ついにはキャラバンを組んでやってくるまでになった。痩せこけた土地が広がるだけの小さな開拓村は、あっという間に活気あふれる町へと姿を変えていった。
人が増えれば問題も増える。住居の確保、食料の配分、そして何より共同生活のルール作り。素人集団である俺たちだけではすぐに限界が来ていただろう。だが俺たちにはセラフィーナがいた。
「町の区画整理は、私が計画します。住居区、商業区、農業区を明確に分け、効率的な都市機能を構築しますわ」
「移住者の方々には、まず戸籍の登録を行っていただきます。名前、年齢、そして以前の職業や特技を教えてください。適材適所で、皆さんに仕事を与えます」
「町の自治ルールを制定します。ここに住む者は皆が等しくこのルールに従うこと。破った者には罰則を与えます」
セラフィーナはまるで水を得た魚のようだった。彼女が持つ貴族としての教育、内政の知識が、この急造の町で遺憾なく発揮される。彼女が立てる計画は常に的確で公平だった。移住者たちは彼女の気品と誰もが見惚れるほどの知性に圧倒され、素直にその指導に従った。
俺は生産担当だ。
【絶対育成】を使い、増え続ける人口を賄うだけの食料を生産し続ける。町のインフラ整備に必要な木材もスキルで生み出した「超硬化樹木」で供給した。上下水道の整備には、水を浄化する能力を持つ「浄化草」を植えた水路を活用した。
アランは生産を、セラフィーナは統治を担った。
この完璧な役割分担によって俺たちの町は驚異的なスピードで発展していった。大工仕事が得意な者は家を建て、鍛冶の経験がある者は農具を作り、商売の心得がある者は行商人との交易を取り仕切る。誰もが自分の役割を見つけ、生き生きと働き、そして夜には美味い飯を腹いっぱい食べた。
子供たちの笑い声が町のあちこちで響いている。人々の顔には未来への希望が満ち溢れていた。
俺は町の高台からその光景を眺めていた。
「すごい町になったな」
「ええ。ですが、まだまだですわ。やるべきことは山積みです」
隣に立つセラフィーナが同じ景色を見ながら言う。
「なあ、セラフィーナ。この町に名前をつけないか?」
俺の提案に彼女は少し驚いたような顔をして、そして優しく微笑んだ。
「……そうですわね。では、『アルカディア』というのはどうでしょう。古の言葉で『理想郷』を意味します」
「アルカディア……。いい名前だ」
こうして俺たちの町は「アルカディア」と名付けられた。
辺境の地に生まれた小さくて、だけど世界で一番豊かで平和な理想郷。しかしその輝きが強ければ強いほど、その光を欲しがる者たちの黒い影もまた色濃くなっていく。
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