神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人

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第10話「王都の動揺」

「辺境伯の軍が、農民の町に敗れた、だと……?」

 王都にある王城の一室で、王太子アルフレッドは報告に来た使者を信じられないという顔で問い詰めた。

「は、はい。兵士たちの話によりますと、町が突如として巨大な森の壁に覆われ、近づく者は皆、謎の眠りに襲われたと……。まるで魔法か、あるいは悪魔の力かと」

「馬鹿馬鹿しい! そのような与太話を信じろと言うのか!」

 アルフレッドは報告書を床に叩きつけた。彼の隣には聖女ライラが心配そうな顔で寄り添っている。

「アルフレッド様、お気を鎮めてください。きっと、何か良くない力が働いているのですわ」

「うむ、ライラの言う通りだ。辺境の地でよからぬ輩が国に仇なそうとしているに違いない。断じて許せん!」

 ライラの言葉にアルフレッドは単純に思考を誘導される。彼はすでに彼女の精神感応能力の虜となり、国政を正しく判断する能力を失っていた。

 ***

 ここ最近、王都では不穏な空気が漂っていた。原因不明の不作が続き食料価格が高騰。民衆の間では不満が募り始めていたのだ。だがアルフレッドはそのような問題から目をそらし、ライラとの甘い時間ばかりを優先していた。

 そんな中で飛び込んできた辺境の「豊かな町」の噂。そしてその町が領主軍を撃退したという報告。

「聖女ライラよ、どう思う?」

「その町は、邪悪な魔女に率いられているのかもしれません。かつてアルフレッド様が追放なさった、あのセラフィーナという女が関わっているという噂もございます」

 ライラはさも憂いているかのように言った。もちろん彼女はセラフィーナが辺境にいることを知っていて、この機に完全に息の根を止めようと画策しているのだ。セラフィーナが再起するなど、彼女のプライドが許さなかった。

「やはりあの女か! 追放しただけでは生ぬるかったようだな!」

 アルフレッドはセラフィーナの名を聞いた途端、顔を憎悪に歪めた。

「直ちに討伐軍を編成する! 王国への反逆者は、根絶やしにせねばならん!」

「お待ちください、王太子殿下!」

 宰相をはじめとする良識派の貴族たちが慌てて止めに入る。

「辺境の町一つに正規軍を派遣するなど前代未聞です! それに今は国内の食糧事情が芳しくありません。大軍を動かすだけの兵糧を確保するのは困難かと……」

「黙れ! これは王国の秩序を守るための聖戦である! 兵糧がないなら民から徴収すればよかろう! 全ては聖女様のお導きに従うまで!」

 もはやアルフレッドの耳にまともな意見は届かなかった。ライラは彼の背後でほくそ笑んだ。

 こうして王太子アルフレッドと聖女ライラは、アルカディアを「王国への反逆者」と一方的に断定。王国正規軍による本格的な討伐軍の派遣を決定した。

 王都の愚かな判断は、自らの首を絞めることになるとも知らずに。

 一方、その頃のアルカディアでは、領主軍を撃退したことで俺たちの町は新たな発展のステージへと進もうとしていた。

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