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第5章:守るための剣、変えるための鍬(くわ)
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アルベルトが王都に戻ってから数ヶ月、エリザベートの農園は目覚ましい変化を遂げていた。
彼女が指導した堆肥によって土壌は着実に肥沃になり、試験的に植えたカブやジャガイモは、これまでの収穫量とは比べ物にならないほど大きく育った。さらに、エリザベートは簡易的な測量技術を用いて等高線を引き、雨水を効率的に畑へ導くための小さな水路、灌漑設備を設計した。村人総出でその工事に取り掛かり、完成した水路が初めて畑を潤した日には、村中が歓声に包まれた。
作物の収穫祭は、村始まって以来の盛り上がりを見せた。採れたての野菜で作ったシチューは格別の味で、人々はエリザベートを「緑の姫様」と呼び、心からの感謝と尊敬を捧げた。エリザベートも、彼らの笑顔に囲まれ、これ以上ないほどの幸福を感じていた。
しかし、その成功は、思わぬ敵意を呼び寄せることになる。
辺境の地で起きている奇跡の噂は、やがて近隣の領主たちの耳にも届き始めた。中でも、グラウ領の隣に広大な領地を持つマクシミリアン辺境伯は、エリザベートの農園を脅威と感じていた。彼はこれまで、自身の豊かな領地からグラウ領へ高値で食料を売りつけ、利益を得ていたのだ。グラウ領が食料を自給自足できるようになれば、彼のうまみはなくなる。
「追放された小娘一人が、生意気な……」
マクシミリアン辺境伯は、エリザベートの農園を潰すため、ならず者を傭兵として雇い、村を襲撃させる計画を立てた。
ある嵐の夜、その計画は実行された。
突如として村に響き渡る怒号と悲鳴。松明を掲げた数十人の屈強な男たちが、剣を振り回しながら畑を荒らし、収穫物を納めた倉庫に火をつけようと押し寄せてきた。
「みんな、落ち着いて! 女子供は館へ!」
エリザベートは声を張り上げ、村人たちを避難させようとする。しかし、相手は訓練された傭兵たちだ。鍬や鋤しか持たない農民では、到底太刀打ちできない。
絶望的な状況。村人たちが築き上げてきたものが、無慈悲に破壊されていく。エリザベートが唇を噛みしめた、その時だった。
「そこまでだ、下衆ども!」
闇を切り裂くように、凛とした声が響き渡った。見ると、村の入り口に馬を駆る一団が現れた。先頭に立つのは、見慣れた旅の外套ではなく、王家の紋章が入った豪奢な鎧を身に着けた、アルベルトその人だった。
「殿下!?」
エリザベートの驚きの声も、傭兵たちの怒号にかき消される。
「何者だ!」
「我らは王太子アルベルト殿下の勅命を受けし者! この地を荒らす不埒者どもに、裁きを下す!」
アルベルトが率いてきたのは、王宮の精鋭騎士団だった。彼は「一人の男として関わる」と言ったが、それはただの言葉ではなかった。エリザベートの身に何かあった時のために、密かに騎士団を近くに待機させていたのだ。
精鋭騎士たちの力は圧倒的だった。数の上では劣っていても、一人一人の練度が違う。あっという間に傭兵たちは打ちのめされ、制圧されていった。
嵐が過ぎ去り、静けさを取り戻した村で、アルベルトは馬から降りてエリザベートの元へ歩み寄った。
「……怪我はないか、エリー」
その声には、隠しきれない安堵と心配が滲んでいた。
「ええ、私は。それより、なぜ殿下がここに……」
「君が心配だったからだ。それ以外に理由がいるか?」
アルベルトは、燃え残る倉庫の火を見つめながら言った。「襲撃の黒幕はマクシミリアン辺境伯だろう。私が王太子の権限で、厳罰に処す」
その言葉に、エリザベートは首を横に振った。
「お待ちください、殿下。それはなりません」
「なぜだ! 君たちを危険に晒した元凶だぞ!」
アルベルトは思わず声を荒げた。彼女を守るために駆けつけたのに、なぜ止められなければならないのか。
エリザベートは、そんな彼を静かな、しかし強い瞳で見つめ返した。
「武力で彼を罰しても、根本的な解決にはなりません。第二、第三のマクシミリアン辺境伯が現れるだけです。憎しみは、新たな憎しみしか生みません」
「ではどうしろと!? このまま黙ってやられていろとでも言うのか!」
「いいえ」とエリザベートはきっぱりと言った。「武力ではなく、農業で、私たちは国を変えるのです」
彼女の言葉に、アルベルトはハッとした。
「私たちの農園がもっと豊かになり、有り余るほどの食料を生産できるようになったら? 私たちは、それをマクシミリアン辺境伯の領地よりも安く、近隣の村々に供給することができます。そうなれば、人々は彼の領地からではなく、私たちから食料を買うようになるでしょう。彼の力は、自然と削がれていきます」
「……経済で、彼を打ち負かすと?」
「打ち負かすのではありません。私たちの豊かさを分かち合うことで、争う必要のない世界を作るのです。剣ではなく、鍬で。それが、私の戦い方です」
アルベルトは、言葉を失った。
自分は、彼女を襲った敵を断罪することしか考えていなかった。王太子として、権力と武力で問題を解決するのが当然だと思っていたからだ。
だが、彼女はもっと先を見ていた。憎しみの連鎖を断ち切り、より恒久的な平和を築く方法を。それは、彼が思いもよらなかった、まったく新しいアプローチだった。
「……君の言う通りかもしれない」
アルベルトは、敗北を認めるように呟いた。「だが、君たちの力がそれほど大きくなるまで、また同じような危険が及ぶかもしれん。その時は、私が君の剣となろう」
「殿下……」
「君が鍬で未来を耕すというのなら、私は剣で君の今を守る。それで、どうだ?」
二人の視線が、燃え盛る炎の中で交差する。
エリザベートは、小さく頷いた。
「……わかりました。今は、殿下の力をお借りします」
それは、二人の意見が対立した瞬間だった。
しかし同時に、それぞれの役割を認め合い、互いを補い合う、新たな協力関係が生まれた瞬間でもあった。一人は大地を、もう一人は国を。守るものと、変えるもの。二つの異なる力が、今、一つの目的に向かって歩み始めたのだ。
彼女が指導した堆肥によって土壌は着実に肥沃になり、試験的に植えたカブやジャガイモは、これまでの収穫量とは比べ物にならないほど大きく育った。さらに、エリザベートは簡易的な測量技術を用いて等高線を引き、雨水を効率的に畑へ導くための小さな水路、灌漑設備を設計した。村人総出でその工事に取り掛かり、完成した水路が初めて畑を潤した日には、村中が歓声に包まれた。
作物の収穫祭は、村始まって以来の盛り上がりを見せた。採れたての野菜で作ったシチューは格別の味で、人々はエリザベートを「緑の姫様」と呼び、心からの感謝と尊敬を捧げた。エリザベートも、彼らの笑顔に囲まれ、これ以上ないほどの幸福を感じていた。
しかし、その成功は、思わぬ敵意を呼び寄せることになる。
辺境の地で起きている奇跡の噂は、やがて近隣の領主たちの耳にも届き始めた。中でも、グラウ領の隣に広大な領地を持つマクシミリアン辺境伯は、エリザベートの農園を脅威と感じていた。彼はこれまで、自身の豊かな領地からグラウ領へ高値で食料を売りつけ、利益を得ていたのだ。グラウ領が食料を自給自足できるようになれば、彼のうまみはなくなる。
「追放された小娘一人が、生意気な……」
マクシミリアン辺境伯は、エリザベートの農園を潰すため、ならず者を傭兵として雇い、村を襲撃させる計画を立てた。
ある嵐の夜、その計画は実行された。
突如として村に響き渡る怒号と悲鳴。松明を掲げた数十人の屈強な男たちが、剣を振り回しながら畑を荒らし、収穫物を納めた倉庫に火をつけようと押し寄せてきた。
「みんな、落ち着いて! 女子供は館へ!」
エリザベートは声を張り上げ、村人たちを避難させようとする。しかし、相手は訓練された傭兵たちだ。鍬や鋤しか持たない農民では、到底太刀打ちできない。
絶望的な状況。村人たちが築き上げてきたものが、無慈悲に破壊されていく。エリザベートが唇を噛みしめた、その時だった。
「そこまでだ、下衆ども!」
闇を切り裂くように、凛とした声が響き渡った。見ると、村の入り口に馬を駆る一団が現れた。先頭に立つのは、見慣れた旅の外套ではなく、王家の紋章が入った豪奢な鎧を身に着けた、アルベルトその人だった。
「殿下!?」
エリザベートの驚きの声も、傭兵たちの怒号にかき消される。
「何者だ!」
「我らは王太子アルベルト殿下の勅命を受けし者! この地を荒らす不埒者どもに、裁きを下す!」
アルベルトが率いてきたのは、王宮の精鋭騎士団だった。彼は「一人の男として関わる」と言ったが、それはただの言葉ではなかった。エリザベートの身に何かあった時のために、密かに騎士団を近くに待機させていたのだ。
精鋭騎士たちの力は圧倒的だった。数の上では劣っていても、一人一人の練度が違う。あっという間に傭兵たちは打ちのめされ、制圧されていった。
嵐が過ぎ去り、静けさを取り戻した村で、アルベルトは馬から降りてエリザベートの元へ歩み寄った。
「……怪我はないか、エリー」
その声には、隠しきれない安堵と心配が滲んでいた。
「ええ、私は。それより、なぜ殿下がここに……」
「君が心配だったからだ。それ以外に理由がいるか?」
アルベルトは、燃え残る倉庫の火を見つめながら言った。「襲撃の黒幕はマクシミリアン辺境伯だろう。私が王太子の権限で、厳罰に処す」
その言葉に、エリザベートは首を横に振った。
「お待ちください、殿下。それはなりません」
「なぜだ! 君たちを危険に晒した元凶だぞ!」
アルベルトは思わず声を荒げた。彼女を守るために駆けつけたのに、なぜ止められなければならないのか。
エリザベートは、そんな彼を静かな、しかし強い瞳で見つめ返した。
「武力で彼を罰しても、根本的な解決にはなりません。第二、第三のマクシミリアン辺境伯が現れるだけです。憎しみは、新たな憎しみしか生みません」
「ではどうしろと!? このまま黙ってやられていろとでも言うのか!」
「いいえ」とエリザベートはきっぱりと言った。「武力ではなく、農業で、私たちは国を変えるのです」
彼女の言葉に、アルベルトはハッとした。
「私たちの農園がもっと豊かになり、有り余るほどの食料を生産できるようになったら? 私たちは、それをマクシミリアン辺境伯の領地よりも安く、近隣の村々に供給することができます。そうなれば、人々は彼の領地からではなく、私たちから食料を買うようになるでしょう。彼の力は、自然と削がれていきます」
「……経済で、彼を打ち負かすと?」
「打ち負かすのではありません。私たちの豊かさを分かち合うことで、争う必要のない世界を作るのです。剣ではなく、鍬で。それが、私の戦い方です」
アルベルトは、言葉を失った。
自分は、彼女を襲った敵を断罪することしか考えていなかった。王太子として、権力と武力で問題を解決するのが当然だと思っていたからだ。
だが、彼女はもっと先を見ていた。憎しみの連鎖を断ち切り、より恒久的な平和を築く方法を。それは、彼が思いもよらなかった、まったく新しいアプローチだった。
「……君の言う通りかもしれない」
アルベルトは、敗北を認めるように呟いた。「だが、君たちの力がそれほど大きくなるまで、また同じような危険が及ぶかもしれん。その時は、私が君の剣となろう」
「殿下……」
「君が鍬で未来を耕すというのなら、私は剣で君の今を守る。それで、どうだ?」
二人の視線が、燃え盛る炎の中で交差する。
エリザベートは、小さく頷いた。
「……わかりました。今は、殿下の力をお借りします」
それは、二人の意見が対立した瞬間だった。
しかし同時に、それぞれの役割を認め合い、互いを補い合う、新たな協力関係が生まれた瞬間でもあった。一人は大地を、もう一人は国を。守るものと、変えるもの。二つの異なる力が、今、一つの目的に向かって歩み始めたのだ。
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