追放された用済み聖女ですが、辺境の最強竜騎士に拾われて絶品料理で胃袋と心を掴んだら、常軌を逸した溺愛が始まりました。

黒崎隼人

文字の大きさ
8 / 9

番外編「氷の竜騎士が溶かされた日」

◆クロード視点

 吐き出す息は、瞬時に白く凍りついて空気に溶け込んでいく。
 鉄の味がする冷気が肺を満たし、吐き出すたびに体温が外の世界へと奪われていった。
 北の果て、魔の山嶺。
 一年の大半を雪と氷に閉ざされたこの不毛の地で、クロードはただ命を削りながら剣を振るい続けていた。
 周囲には、黒々とした血を流して倒れる数多の魔物の残骸が転がっている。
 雪原は赤と黒に汚染され、むせ返るような鉄と獣の悪臭が風に乗って鼻を突いた。
 戦闘は終わった。
 だが、クロードの胸中に安堵はない。
 足元で、相棒であるルルが苦痛に身をよじっていた。
 巨大な竜の姿から、魔力を温存するための小さな白い毛玉の姿へと戻っているが、その背中には深くえぐられた裂傷があり、真っ赤な血が絶え間なく雪を染めている。

「……すまない、ルル。俺の剣が遅かったばかりに」

 クロードは分厚い革手袋を外し、凍える手でルルを抱き上げようとした。
 しかし、傷の痛みに怯えるルルは、主であるクロードにすら牙を剥いて威嚇の声を上げる。
 触れることすら許されない。
 己の無力さが、鉛のように胃の腑を重くした。
 このまま砦に連れ帰っても、助かる見込みは薄い。
 辺境の砦には、高度な治癒魔法を使える魔術師など一人もいないのだ。
 絶望が足元から這い上がってくるのを感じながら、クロードは立ち上がり、周囲を見渡した。
 猛吹雪で視界が霞む中、雪だまりの陰に、不自然な黒い影がうずくまっているのが見えた。
 近づいてみると、それは一人の女だった。
 この極寒の地には到底似つかわしくない、紙のように薄い奇妙な作りの黒い服。
 唇は藤の花のように紫に染まり、肌は雪よりも蒼白に透き通っている。
 瞼は固く閉じられ、息をしているのかどうかも怪しい。
 追放者か。
 王都の連中が、また罪のない平民を身代わりに捨てたのだろう。
 クロードの胸に冷たい怒りがよぎったが、彼には他人の命を拾う余裕などなかった。
 ルルの命の灯火が、今まさに消えようとしているのだ。

「勝手にしろ。死ぬのも生きるのも、お前の自由だ」

 氷のように冷たい言葉を投げ捨て、背を向ける。
 だが、その背中に向かって、雪に埋もれていたはずの女が這いずるように手を伸ばしてきた。

「……させ、て」

 女の指先が、ルルの白い毛並みに触れた。
 クロードが止める間もなかった。
 見ず知らずの人間に触れられれば、ルルは最後の力で噛みつくはずだ。
 そう思った瞬間、奇跡が起きた。
 女の冷え切った小さな手のひらから、淡い桜色の光が溢れ出したのだ。
 それは、王都の魔術師たちが使うような閃光ではない。
 春の陽だまりを凝縮したような、柔らかく温かい光。
 光がルルの傷口に吸い込まれていくと同時に、空気を震わせるほどの熱が周囲に放たれた。
 クロードの頬を、柔らかな春の風が撫でた錯覚に陥る。
 パキパキという音を立てて、ルルの折れていた骨が繋がり、えぐれていた肉が塞がっていく。
 溢れ出ていた血は完全に止まり、新しい真っ白な毛並みがまたたく間に再生した。
 ルルが力強く鳴き、女の胸元に飛び込んだ。
 女は安心したように微笑み、そのまま糸が切れたように雪の上へ倒れ込んだ。
 クロードは咄嗟に手を伸ばし、崩れ落ちる彼女の体を抱きとめた。
 腕の中に収まった体は、ひどく軽かった。
 骨と皮ばかりのような細い肩。
 だが、彼女の首筋からは、ほのかに甘い香りがした。
 血と錆の匂いしか知らないクロードの脳を、優しく揺さぶるような未知の匂い。
 彼女の体温は雪のように冷たいのに、クロードが触れている胸の奥だけが、火の粉を落とされたように熱く疼き始めていた。

◆ ◆ ◆

 砦に戻り、彼女を自分の寝台に寝かせた。
 分厚い毛布を何枚も重ねて体を温めさせたが、クロードの思考はひどく乱れていた。
 あの桜色の光。
 あれは間違いなく、最上級の治癒魔法に匹敵する奇跡だ。
 王都の連中は、これほどの力を持つ女をゴミとして捨てたのか。
 苛立ちと、得体の知れない高揚感が胸の中で渦を巻く。
 少し冷たい空気を入れようと部屋を出て、しばらくして戻ると、寝台はもぬけの殻だった。
 微かな物音を頼りに厨房へ向かうと、そこには信じられない光景があった。
 死の淵にいたはずの彼女が、鼻歌交じりに鍋の前に立っている。
 そして、厨房を満たしているのは、脳の奥まで痺れさせるような強烈な匂いだった。
 獣の脂が焦げる香ばしさ、香草の爽やかな刺激、煮込まれた野菜が放つ濃厚な甘み。
 それらが複雑に絡み合い、胃袋を直接鷲掴みにされるような食欲をかき立てる。
 彼女は振り返り、クロードを見つけると、花が咲くような笑みを浮かべた。
 アカリと名乗った彼女が差し出したのは、琥珀色に輝く熱いスープだった。
 警戒心がなかったわけではない。
 だが、その匂いに抗うことは、飢えた獣に肉を我慢させるに等しかった。
 木製のスプーンを受け取り、一口すする。
 瞬間、クロードの目が大きく見開かれた。
 熱い液体が喉を通り抜け、胃の腑に落ちた直後。
 腹の底から、爆発的な熱量が全身の血管を駆け巡ったのだ。
 酷使してすり減っていた筋肉の繊維が、一本一本太く再生していくような生々しい感覚。
 枯渇していた魔力炉に、澄み切った水が激流となって流れ込んでくる。
 右肩にあった深い古傷の疼きが、音を立てて消え去った。
 これは、ただの食事ではない。
 飲む治癒魔法。
 いや、それ以上の何かだ。
 クロードは無言のまま、皿の底を舐めるように最後の一滴まで飲み干した。
 体が、嘘のように軽い。
 だが、それ以上にクロードを揺さぶったのは、目の前で嬉しそうに笑うアカリの存在だった。
 王都は、彼女を不要だと言った。
 ならば、俺がもらう。
 彼女の力も、彼女が作る飯も、そして彼女自身も、すべて俺のものだ。
 クロードの胸の奥で、冬眠から目覚めた竜が重い瞼をこじ開け、咆哮を上げるのを感じた。
 それは、生まれて初めて知る執着という名の飢えだった。

◆ ◆ ◆

 アカリが砦の料理番となってからの日々は、クロードにとって試練の連続だった。
 彼女の料理は、砦の騎士たちを瞬く間に虜にした。
 死んだような目をしていた男たちが、食事の時間になるたびに顔を輝かせ、アカリの周りに群がる。
 食堂の入り口からその光景を見るたび、クロードの腹の底で黒い泥のような感情が煮え滾った。
 他の男たちが彼女に話しかける声。
 彼女に向ける熱を帯びた視線。
 すべてが目障りだった。
 あの笑顔を向けられるのは、俺だけでいい。
 彼女が差し出す皿を受け取るのも、俺だけでいい。
 彼女の肩に触れる男がいれば、その腕を切り落としてやりたいという残虐な衝動が湧き上がる。
 クロードは己の内に渦巻く獣性を必死に鎖で縛り付けながら、彼女と騎士たちの間に冷たい壁として立ち塞がった。

「俺の所有物に、気安く近づくな」

 低い声で威圧し、男たちを散らす。
 怯えたように肩をすくめるアカリを見ると、今度はどうしようもない庇護欲が胸を締め付けた。
 寒さで彼女の指先が白くなっているのを見れば、自分の外套を乱暴に脱いで巻きつける。
 分厚い黒狼の毛皮にすっぽりと包まれ、クロードの匂いに染まった彼女を見ると、奇妙な満足感が得られた。
 もっと、彼女を喜ばせたい。
 もっと、自分だけを見てほしい。
 その一心で、クロードは単騎で危険な氷谷へと向かった。
 標的は、最上級の魔物である氷鳥。
 普通の剣では傷一つつけられない硬い羽毛と、触れれば血が凍る冷気を放つ厄介な相手だ。
 だが、これを持ち帰れば、彼女はどんな顔をするだろうか。
 どんな新しい味を生み出してくれるのだろうか。
 頬を鋭い氷の刃で切り裂かれながらも、クロードの頭の中にあったのは、アカリの柔らかい笑顔だけだった。
 重い獲物を引きずって砦に戻り、彼女の前にそれを置いた時。
 驚き、そして心底嬉しそうに微笑んだ彼女の顔を見た瞬間、頬の傷の痛みなど完全に消し飛んでいた。
 夜、彼女の私室を訪れた時のことは、今でもクロードの理性を揺さぶる。
 暖炉の火に照らされた彼女は、ひどく無防備だった。
 頬に触れると、雪のように白い肌が火照り、赤い熱を帯びる。
 大きな瞳が揺れ、クロードを真っ直ぐに見つめ返す。
 逃げ出さない彼女の強さが、クロードの理性の鎖をさらに軋ませる。
 このまま彼女をベッドに押し倒し、俺の痕跡を全身に刻み込んで、二度と他の男の目に触れられないように奥深くへ閉じ込めてしまいたい。
 狂おしいほどの独占欲が、血管の中で暴れ回る。
 だが、ここで踏み込めば、彼女を壊してしまうかもしれない。
 クロードは奥歯を強く噛み締め、必死に欲望を飲み込んだ。
 彼女を抱き寄せることしかできなかった自分の不器用さに絶望しながらも、腕の中に収まる温かな体温だけが、クロードの唯一の救いとなっていた。

◆ ◆ ◆

 その平穏が、汚らわしい豚の足音によって踏みにじられたのは、春の兆しが見え始めた頃だった。
 王都からの使者。
 豪華な絹の外套を着膨れさせた、脂ぎった小太りの男。
 その口から飛び出したのは、アカリを再び地獄へ引きずり戻そうとする、身勝手で吐き気のするような要求だった。

「聖女様の力を不当に持ち出した泥棒」

 男がそう言い放った瞬間、クロードの視界は真っ赤な血の色に染まった。
 怒りという生ぬるいものではない。
 これは、明確な殺意だった。
 アカリがどれほど傷つき、泣きながら雪原を彷徨ったか。
 それを知ろうともせず、用済みだと捨てた手を再び伸ばしてくる厚顔無恥さ。
 震えるアカリの背中を見た瞬間、クロードの内で何かが完全に弾け飛んだ。
 大剣を引き抜く。
 石畳が砕け散る音が、食堂に響き渡った。

「俺の女に、気安く近づくな」

 口をついて出た言葉は、冷たく、重く、絶対の死を孕んでいた。
 使者の男の顔面が蒼白に染まるのを見て、クロードの内に残虐な喜びが湧き上がる。
 このまま首をはねてやる。
 四肢を切り刻み、魔物の餌にしてやる。
 大剣の切っ先を使者の鼻先に突きつけた時、クロードは本気で男の顔面を縦に両断するつもりだった。
 だが、背後で息を呑むアカリの気配が、すんでのところで剣を止めた。
 彼女の美しい記憶を、豚の血で汚すわけにはいかない。
 冷徹に法理を突きつけ、圧倒的な武力と暴力の気配で男たちを叩き出す。
 雪原を無様に這いずりながら逃げていく使者たちの背中を見送っても、クロードの胸で荒れ狂う嵐は治まらなかった。
 アカリを奪われるかもしれないという恐怖。
 自分の手の届かない場所へ、彼女が引きずられていくかもしれないという想像。
 それが、最強の竜騎士であるはずのクロードを、根底から震え上がらせた。

◆ ◆ ◆

 自室に戻り、扉を閉めた瞬間。
 クロードはもう、自分を抑え込むことができなかった。
 振り返り、怯えたような顔をするアカリの腕を掴む。
 彼女を抱きしめた時、クロードはようやく肺に酸素が戻ってきた気がした。
 細い腰を強く引き寄せ、自分の胸に押し付ける。
 鼓動が、体温が、彼女の甘い匂いが、暴走寸前だったクロードの狂気を少しずつなだめていく。

「お前を失うことだけは、耐えられないと思った」

 絞り出すようにこぼれ落ちたのは、情けないほどに素直な弱音だった。

「俺は強くなどない。お前がいなければ、もう息をすることすらできない。お前の作る飯がなければ、お前の温かい手が俺に触れなければ、俺はただの氷の塊に戻ってしまう」

 涙をこぼしながら、それでも真っ直ぐに自分を見上げてくるアカリの強さ。

「私、ここにいたいです。クロードさんの傍で、ずっと……温かいスープを作りたい。あなたを、癒やしたい……っ」

 その言葉が、クロードの最後の理性を焼き尽くした。
 気づけば、彼女の唇を塞いでいた。
 初めて触れるその場所は、想像していたよりもずっと柔らかく、そして熱かった。
 触れただけのキスでは到底足りない。
 彼女のすべてを味わい尽くし、自分という存在を彼女の奥深くまで刻み込みたい。
 角度を変え、何度も、深く唇を重ねる。
 彼女の小さな口内から、甘く熱い息が流れ込んでくる。
 腕の中で力が抜け、崩れ落ちそうになる彼女の体を、強靭な腕で抱え上げる。
 このまま骨の髄まで溶かして、一つになってしまいたい。
 彼女の甘い匂いが脳髄を犯し、思考を完全に停止させる。
 王都など、どうでもいい。
 世界がどうなろうと知ったことではない。
 俺の腕の中に、彼女がいる。
 ただそれだけで、クロードの世界は完全に満たされていた。
 氷のように冷え切っていた辺境の竜騎士は、平凡な女が作る温かいスープと、その無防備な笑顔によって、跡形もなく溶かされたのだ。
 もう二度と、氷結することはない。
 彼女の放つ甘く強烈な熱が、クロードの心臓を永遠に燃やし続けるのだから。

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (完結済ー本編16話+後日談6話)

結婚式当日に捨てられた私、隣国皇帝に拾われて過保護に溺愛されています~今さら姉を選んだ王子が後悔しても手遅れです~

唯崎りいち
恋愛
結婚式当日、私は“替え玉”として捨てられた。 本物の姉が戻ってきたから、もう必要ないのだと。 けれど—— 私こそが、誰も知らなかった“本物の価値”を持っていた。 世界でただ一人、すべてを癒す力。 そして、その価値を知るただ一人の人が、皇帝となって私を迎えに来る。 これは、すべてを失った少女が、本当に必要とされる場所へ辿り着く物語。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。 ⭐︎完結済ー本編8話・後日談8話⭐︎

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

一度目で黒狼公に討たれた私ですが、二度目の夜はお父様のそばでしか眠れません

師走
恋愛
八歳の冬、リリア・ヴァルグレイは父に殺された。 王国最強の討魔貴族――黒狼公レオンハルト・ヴァルグレイ。 人にも魔にも容赦のないその男は、黒花の災厄に呑まれかけた実の娘を、自らの手で討ったのだ。 けれど次に目を覚ました時、リリアは赤ん坊に戻っていた。 もう二度と、お父様に剣を向けられたくない。 そう願うのに、夜になるとまた黒花の囁きが忍び寄る。甘くやさしいその声は、孤独な心に触れて、静かに破滅へと導こうとする。 そして、その囁きがぴたりと止むのは――世界でいちばん怖いお父様のそばだけだった。 一度目の父は、同じ城で暮らしていても遠い人だった。 リリアを見ない。抱かない。呼びもしない。 そのくせ二度目の父は、相変わらず冷たいまま、なぜか夜ごとリリアを放っておいてくれない。侍女を替え、部屋を守らせ、怯えて眠れない娘を黙って自分の近くへ置いてしまう。 人にはあれほど容赦がないのに、リリアにだけ少しずつおかしくなっていく。 怖い。近づきたくない。 それでも、その腕の中でしか眠れない。 またあの冬が来る。 また同じように、黒花はリリアを呑み込もうとするかもしれない。 今度こそ囁きに負けないために。今度こそ父に剣を抜かせないために。 一度目で父に討たれた娘は、二度目の人生でもっとも恐ろしいその人のそばへ、自分の意志で手を伸ばしていく。 小説家になろう様でも掲載中

​【完結】生贄として捨てられた不遇聖女、氷の公爵に拾われる〜魔獣を愛でて領地を温めていたら重すぎる執着心に目覚めたようです〜

みみ
恋愛
「生贄」として、北の最果てへ追放された聖女セレスティーヌ。 待っていたのは、冷酷非情な「氷の公爵」ヴィクトールと、飢えた魔獣たちの牙……のはずだった。 ​だが、セレスティーヌが瀕死の魔狼ヴォルグを慈愛で救ったことで、絶望の運命は一変する。 不思議な熱を持つ魔獣テラ・コッタ、白銀の神獣アウローラ。 恐ろしいはずの魔獣たちは次々と彼女に懐き、不毛だった北の大地は、彼女の祈りと共に春のようなぬくもりに満ちていく。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。