役立たずと追放された俺の農業スキル、実は作物を兵器や霊薬に進化させる最強の力でした。

黒崎隼人

文字の大きさ
6 / 14

第5章:領主の陰謀

しおりを挟む
 ボアデストロイヤー撃退の一件で、俺は村の英雄になった。村人たちからの尊敬と感謝の眼差しは、くすぐったくもあったが、素直に嬉しかった。
 だが、その名声は、やがて厄介な人物の耳にも届くことになった。この辺境一帯を治める領主、バルザック侯爵だ。
 ある日、領主の使いと名乗る役人が、数人の兵士を連れて俺の農園にやってきた。

「貴殿が、かの藤田耕作殿か。領主バルザック様が、貴殿の能力に大変興味を持っておられる」

 役人は尊大な態度で、一枚の羊皮紙を突きつけてきた。それは、領主からの召喚状だった。断ることは許されない。俺とミーヤは、不安を抱えながら、領主の館へと向かった。
 壮麗だが、どこか悪趣味な装飾が施された館。謁見の間で待っていたのは、肥え太り、贅沢な衣装に身を包んだ、見るからに強欲そうな中年男だった。彼がバルザック領主だ。

「ほう、お前が魔物を倒したという農民か。見れば、なんとも貧相な男よ」
 バルザックは、ねめつけるような視線で俺を値踏みすると、本題を切り出した。
「貴様の作る特殊な作物、そしてそれを生み出す能力。素晴らしいな。気に入った。今日より、そのすべてを我が物として差し出すのだ。さすれば、我が庇護の下、安楽な暮らしを約束してやろう」

 あまりにも一方的で、横暴な要求だった。俺の畑も、スキルも、すべて奪い取ろうというのだ。

「お断りします」
 俺が即座に断ると、バルザックの顔が怒りで歪んだ。
「断るだと? この私に逆らう気か、一介の農民ふぜいが!」
「コウサクの能力は、彼自身のものです。誰にも奪う権利はありません」
 隣にいたミーヤも、毅然とした態度で言い放つ。

 激高したバルザックは、忌々しげに俺たちを睨みつけ、そして卑劣な笑みを浮かべた。
「ならば、力づくでも言うことを聞かせてくれるわ。よいか、このアルム村を含む、我が領地全域の税を、来年より十倍にする。払えなければ、村人全員を奴隷として売り飛ばしてくれるわ!」

 あまりの暴挙に、俺は言葉を失った。税を十倍にするなど、正気の沙汰ではない。村を人質に取って、俺を屈服させようというのだ。村人たちの顔が脳裏に浮かぶ。彼らにそんな仕打ちはさせられない。

「……待ってください」

 俺が声を絞り出すと、バルザックは勝ち誇った顔で「どうした、命乞いか?」と嘲笑った。
 その時、俺の隣で冷静に状況を分析していたミーヤが、そっと俺の耳元で囁いた。
「耕作、時間を稼ぐのよ。奴の要求を逆手に取るの」

 ミーヤの言葉に、俺は一つの賭けに出ることを決意した。

「領主様。一つ、ご提案があります」
 俺は覚悟を決め、バルザックをまっすぐに見据えた。
「俺に一年、時間をください。一年後、この領地全体の農作物の収穫量を、現在の五倍にしてみせます。もし達成できたなら、増税の話は白紙撤回。そして、俺たちの活動に一切干渉しないと約束していただきたい」

「収穫量を五倍だと?」
 バルザックは、最初は馬鹿にしたように笑っていたが、やがてその目に強欲な光が宿った。収穫量が五倍になれば、税収も大幅に増える。たとえ税率を上げずとも、莫大な富が転がり込んでくる計算だ。
「面白い……! よかろう、その賭け、乗ってやる! だが、もしできなかった場合はどうなるか、分かっておろうな?」
「ええ。その時は、俺のすべてを差し出します」

 こうして、領地の未来と俺自身の運命を賭けた、無謀とも思える約束が成立した。
 村に戻った俺は、村長や村人たちに事情を説明した。最初は絶望していた彼らも、俺の決意と計画を聞くうちに、次第にその顔に希望の色を取り戻していった。

 俺の計画は、壮大なものだった。
 まず、資金を使って、領地全体の灌漑システムを改良する。干ばつに弱い土地にも安定して水を供給できるように、大規模な水路を建設するのだ。幸い、商人ギルドとの取引で得た資金がまだ残っている。
 次に、俺の【農業スキル】で生み出した『進化種の種』を、領地内の他の農民たちにも配布する。俺の畑だけでなく、領地全体で作物の進化を起こすのだ。
 進化種の種は、通常の種よりも遥かに生命力が高く、成長も早い。痩せた土地でも力強く根を張り、多くの実りをもたらすはずだ。

「みんな、力を貸してくれ! 俺たち農民の力で、あの悪徳領主の鼻を明かしてやろうぜ!」

 俺の呼びかけに、村人だけでなく、噂を聞きつけた近隣の村々の農民たちも立ち上がってくれた。
 男たちは鍬を手に水路を掘り、女たちは種を仕分けし、子供たちでさえも小さな手で石拾いを手伝ってくれた。領地全体が、一つの大きな目標に向かって動き出す。
 それは、孤独だった俺が、この世界で初めて経験する大きな連帯感だった。
 俺は、地平線まで続く畑を見つめながら、固く誓った。必ずこの賭けに勝ってみせる。そして、俺たちを苦しめる権力者に、農民の底力を見せつけてやるのだ、と。一年後の収穫祭は、俺たちの勝利の祝宴になるはずだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

uzura
ファンタジー
平凡な村人・レオンは、勇者パーティの荷物持ちとして蔑まれ、ある日「役立たず」として追放される。 だが、彼の正体は神々が恐れ、世界の理を超越する“創世の加護”を持つ唯一の存在だった。 本人はまったくの無自覚——それでも歩くたび、出会うたび、彼によって救われ、惹かれていく者たちが増えていく。 裏切った勇者たちは衰退し、彼を捨てた者たちは後悔に沈む。 やがて世界は、レオン中心に回り始める。 これは、最弱を装う最強が、知らぬ間に神々を超える物語。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

勇者パーティを追放された地味な器用貧乏は、 魔王軍の女騎士とスローライフを送る

ちくわ食べます
ファンタジー
勇者パーティから「地味、英雄譚の汚点」と揶揄され追放された器用貧乏な裏方の僕。 帰る場所もなく死の森を彷徨っていたところ、偶然にも重傷を負った魔王軍四天王で最強の女騎士「黒鉄剣のリューシア」と遭遇する。 敵同士のはずなのに、なぜか彼女を放っておけなくて。治療し、世話をし、一緒に暮らすことになった僕。 これは追放された男と、敗北を重ね居場所を失った女の物語。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...