役立たずと追放された俺の農業スキル、実は作物を兵器や霊薬に進化させる最強の力でした。

黒崎隼人

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第6章:裏切りと決戦

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 季節は巡り、約束の一年が経った。
 俺と領民たちが一丸となって取り組んだ農地改革は、目覚ましい成果を上げていた。
 俺が設計し、皆で作り上げた灌漑水路は、これまで見捨てられていた荒れ地をも潤し、青々とした畑へと変えた。そして、俺の【農業スキル】によって生み出された『進化種の種』は、領内のあらゆる畑で奇跡を起こした。
 黄金色に輝く麦の穂は、ずっしりと重く垂れ下がり、畑一面を埋め尽くす野菜は、どれもこれも規格外の大きさと瑞々しさを誇っていた。

 そして迎えた収穫の日。集計の結果、領地全体の総収穫量は、目標だった五倍を遥かに上回る、前年比七倍という驚異的な数値を記録した。
 領民たちは抱き合って喜び、俺を英雄として胴上げした。これで、あの悪徳領主バルザックの圧政から解放される。誰もがそう信じて疑わなかった。

 約束の日、俺は収穫報告書を携え、ミーヤと共に再び領主の館を訪れた。
「領主様、約束通り、収穫量を五倍以上にしてみせました。これで、増税の話は白紙にしていただけますね」
 自信満々に報告書を差し出す俺に、しかし、バルザックは玉座にふんぞり返ったまま、冷酷な笑みを浮かべた。

「見事だ、農民。実に見事な働きよ。おかげで我が領地は、かつてないほど豊かになった」
 彼はそう言うと、報告書をちらりと見ただけで、側に控えていた兵士に合図を送った。
「だが、約束を違えるのは貴様の方だ」
「なっ……! どういう意味です!」
「貴様の能力は、国家転覆すら可能な危険な代物。そのような危険分子を、野放しにはしておけん。よって、反逆罪の容疑で、今この場で貴様を拘束する!」

 あまりにも理不尽な言い掛かり。彼は最初から、約束を守る気などなかったのだ。俺の能力を利用して領地を豊かにさせ、その上で俺を排除し、成果を独り占めする。それが奴の狙いだった。
 館の扉が開き、重装備の兵士たちがなだれ込んでくる。

「耕作!」
 ミーヤが叫ぶ。だが、もう遅い。完全に包囲されてしまった。
 バルザックは、勝利を確信して高笑いを響かせる。
「馬鹿な男よ! 農民らしく、大人しく俺の道具になっていればよかったものを!」

 絶体絶命。しかし、俺は諦めていなかった。この一年、ただ畑を耕していただげじゃない。俺は、この日のために、ある『戦闘用作物』を密かに開発していたのだ。

「……領主様。あなたは、大きな間違いを犯した」
 俺は懐から、一掴みの『麦の種』を取り出した。それは、一見するとただの麦の種にしか見えない。
「農民を、敵に回すべきじゃなかった」
 俺がそう呟くと同時に、種を床にばら撒く。
「何を……ぐっ!?」
 兵士の一人が、突然膝から崩れ落ちた。それを皮切りに、包囲していた兵士たちが次々と体の自由を失い、その場に倒れ込んでいく。

「な、なんだこれは!? 貴様、何をした!」
 狼狽するバルザックに、俺は冷たく言い放った。
「それは『痺れ毒麦』の種だ。俺のスキルで進化したこの麦は、微量な毒素を空気中に放出する。吸い込めば、全身が麻痺して動けなくなるのさ」

 もちろん、致死性はない。ただ、一時的に体を動かせなくするだけの、平和的な(?)武器だ。俺がばら撒いたのは、空気の流れを計算して効果が最大になるように品種改良したもの。重い鎧を身につけている兵士たちは、あっという間に無力化されてしまった。

「ひ、ひぃぃぃ!」
 唯一、玉座の近くにいて効果範囲から外れていたバルザックが、腰を抜かして悲鳴を上げる。
「ミーヤ、今のうちに!」
「ええ!」

 俺たちは動けなくなった兵士たちの間をすり抜け、館から脱出した。
 村に戻ると、事の顛末を知った領民たちが、怒りに燃えていた。
「領主様は俺たちを裏切ったんだ!」
「こうなったら、俺たちも戦うぞ!」

 だが、農民が兵士とまともに戦って勝てるはずがない。
「みんな、聞いてくれ!」
 俺は集まった領民たちを前に、声を張り上げた。
「俺は、王都へ向かう。この不正を、国王陛下に直接訴えるんだ!」

 王都への直訴。それは、途方もない計画だった。しかし、今の俺には勝算があった。商人ギルドとの取引で手に入れた潤沢な資金、そして、何よりこの一年で培った領民たちとの固い絆。
 領民たちは、俺の計画にすべてを賭けてくれた。彼らは俺が王都へ向かうための食料や資金を用意し、領主の追手から俺たちを匿ってくれた。

 数日後、俺とミーヤは、領民たちの想いを背負い、王都へと旅立った。
 背後で、バルザックの怒号が聞こえる気がした。だが、もう振り返らない。俺たちの戦場は、もはやこの小さな領地ではない。国の中心、王都へと移ったのだ。
 俺は、この手で必ず正義を勝ち取り、悪徳領主を失脚させてみせる。そして、俺たち農民が、誇りを持って暮らせる未来を作るのだ。朝日が昇る王都への道を、俺たちは力強く進んでいった。
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