10 / 24
第9話:呪いも不純物も、お掃除します
しおりを挟む
エリアナから宝剣『星砕きの剣』を受け取ったカイは、ギルドの片隅にある談話スペースへと彼女を案内した。周囲の冒険者たちが、興味深そうにこちらを見ている。
「ここでやります。少しだけ、時間をください」
カイはテーブルの上に剣をそっと置いた。黒ずんだ刀身は、まるで病に侵されているかのように弱々しい光しか放っていない。
エリアナは固唾を飲んでカイの様子を見守っている。彼女にとって、この剣は家の希望そのもの。もしカイが失敗すれば、彼女の未来は完全に閉ざされてしまうだろう。
カイは深く息を吸い、剣の上に両手をかざした。
「【整理整頓】――」
スキルを発動すると、カイの意識は剣の内部構造へとダイブしていく。そこは、まるでゴミ屋敷のように、様々なものが乱雑に散らかった世界だった。
まず目につくのは、刀身全体に絡みつく、黒く粘着質な呪いの魔力。これが、剣の力を封じている元凶だ。次に、剣の素材である金属――ミスリル銀の結晶構造の内部に、微細な不純物が混じっているのが見えた。これは、鍛造された際に取り除ききれなかったものだろう。長年の間に、この不純物が魔力の流れを阻害し、呪いを引き寄せる原因の一つにもなっていた。
(なるほど……呪いを取り除くだけじゃダメだ。この剣を、本来あるべき〝完璧な状態〟に整理整頓しないと)
カイはまず、黒い呪いの魔力に意識を集中した。ルナの呪いを解いた時と同じ要領で、絡みついた呪いを一つ一つ丁寧に剥がし、〝ゴミ箱〟と認識した異空間へと捨てていく。
次に、素材の内部にある不純物だ。これは、まるで部屋の隅に溜まったホコリのようだった。カイは、目に見えないほどの小さな箒とちりとりをイメージし、ミスリル銀の結晶の隙間に入り込んだ不純物を、丹念に掃き集めて取り除いていく。
そして最後に、剣全体の魔力の流れを〝整理〟する。今まで詰まっていたパイプの汚れを落とし、綺麗に水が流れるように、剣の内部を巡る魔力回路を最適化していく。
カイの額には、玉のような汗が浮かんでいた。それは、今までで最も精密で、最も集中力を要する〝整理整頓〟だった。
エリアナが息を止めて見守る中、テーブルの上の剣に、ゆっくりと変化が現れ始めた。
黒ずんでいた刀身から、まるで煤が剥がれ落ちるように黒い靄が消えていく。そして、その下から現れたのは、磨き上げられた鏡のように輝く、清らかな銀色の刃だった。
チィィン―――……。
剣が、まるで喜ぶかのように、高く澄んだ音を鳴らした。そして、刀身から溢れ出したまばゆいばかりの聖なる光が、ギルドホール全体を照らし出した。
「な、なんだ!?」
「あの剣、光って……!?」
周りの冒険者たちが、驚きの声を上げる。
光が収まった時、そこに横たわっていたのは、もはや呪われた剣の面影など微塵もない、神々しいまでのオーラを放つ一振りの宝剣だった。
カイは汗を拭い、エリアナに向かって微笑んだ。
「お待たせしました、エリアナさん。これで、大丈夫だと思います」
エリアナは、夢でも見ているかのように、呆然と剣を見つめていた。彼女がゆっくりと手を伸ばし、剣の柄を握る。その瞬間、エリアナの体にも剣から清浄な魔力が流れ込み、彼女自身の力をも増幅させた。
「……すごい。これが、星砕きの剣の……本当の力……」
エリアナの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。それは、絶望の淵から救い出された、安堵と感謝の涙だった。
彼女は剣を胸に抱きしめ、カイに向かって深く、深く頭を下げた。
「カイ殿……。何とお礼を言えばいいのか……。あなたは、私の家と、私の未来を救ってくれた恩人です」
カイのスキル【整理整頓】。それは、単に呪いを解くだけでなく、物質そのものを本来あるべき完璧な姿へと〝再構築〟する、神の御業にも等しい力だった。その力の片鱗を目の当たりにしたエリアナは、この青年に、計り知れない可能性を感じずにはいられなかった。
「ここでやります。少しだけ、時間をください」
カイはテーブルの上に剣をそっと置いた。黒ずんだ刀身は、まるで病に侵されているかのように弱々しい光しか放っていない。
エリアナは固唾を飲んでカイの様子を見守っている。彼女にとって、この剣は家の希望そのもの。もしカイが失敗すれば、彼女の未来は完全に閉ざされてしまうだろう。
カイは深く息を吸い、剣の上に両手をかざした。
「【整理整頓】――」
スキルを発動すると、カイの意識は剣の内部構造へとダイブしていく。そこは、まるでゴミ屋敷のように、様々なものが乱雑に散らかった世界だった。
まず目につくのは、刀身全体に絡みつく、黒く粘着質な呪いの魔力。これが、剣の力を封じている元凶だ。次に、剣の素材である金属――ミスリル銀の結晶構造の内部に、微細な不純物が混じっているのが見えた。これは、鍛造された際に取り除ききれなかったものだろう。長年の間に、この不純物が魔力の流れを阻害し、呪いを引き寄せる原因の一つにもなっていた。
(なるほど……呪いを取り除くだけじゃダメだ。この剣を、本来あるべき〝完璧な状態〟に整理整頓しないと)
カイはまず、黒い呪いの魔力に意識を集中した。ルナの呪いを解いた時と同じ要領で、絡みついた呪いを一つ一つ丁寧に剥がし、〝ゴミ箱〟と認識した異空間へと捨てていく。
次に、素材の内部にある不純物だ。これは、まるで部屋の隅に溜まったホコリのようだった。カイは、目に見えないほどの小さな箒とちりとりをイメージし、ミスリル銀の結晶の隙間に入り込んだ不純物を、丹念に掃き集めて取り除いていく。
そして最後に、剣全体の魔力の流れを〝整理〟する。今まで詰まっていたパイプの汚れを落とし、綺麗に水が流れるように、剣の内部を巡る魔力回路を最適化していく。
カイの額には、玉のような汗が浮かんでいた。それは、今までで最も精密で、最も集中力を要する〝整理整頓〟だった。
エリアナが息を止めて見守る中、テーブルの上の剣に、ゆっくりと変化が現れ始めた。
黒ずんでいた刀身から、まるで煤が剥がれ落ちるように黒い靄が消えていく。そして、その下から現れたのは、磨き上げられた鏡のように輝く、清らかな銀色の刃だった。
チィィン―――……。
剣が、まるで喜ぶかのように、高く澄んだ音を鳴らした。そして、刀身から溢れ出したまばゆいばかりの聖なる光が、ギルドホール全体を照らし出した。
「な、なんだ!?」
「あの剣、光って……!?」
周りの冒険者たちが、驚きの声を上げる。
光が収まった時、そこに横たわっていたのは、もはや呪われた剣の面影など微塵もない、神々しいまでのオーラを放つ一振りの宝剣だった。
カイは汗を拭い、エリアナに向かって微笑んだ。
「お待たせしました、エリアナさん。これで、大丈夫だと思います」
エリアナは、夢でも見ているかのように、呆然と剣を見つめていた。彼女がゆっくりと手を伸ばし、剣の柄を握る。その瞬間、エリアナの体にも剣から清浄な魔力が流れ込み、彼女自身の力をも増幅させた。
「……すごい。これが、星砕きの剣の……本当の力……」
エリアナの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。それは、絶望の淵から救い出された、安堵と感謝の涙だった。
彼女は剣を胸に抱きしめ、カイに向かって深く、深く頭を下げた。
「カイ殿……。何とお礼を言えばいいのか……。あなたは、私の家と、私の未来を救ってくれた恩人です」
カイのスキル【整理整頓】。それは、単に呪いを解くだけでなく、物質そのものを本来あるべき完璧な姿へと〝再構築〟する、神の御業にも等しい力だった。その力の片鱗を目の当たりにしたエリアナは、この青年に、計り知れない可能性を感じずにはいられなかった。
216
あなたにおすすめの小説
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
神罰カウントが見える追放技師は、兵器開発を断って辺境港で遺物工房をひらく
蒼月よる
ファンタジー
反宗教国家の遺物管理局で働いていた技師ジンは、危険な接続実験を止めたせいで「臆病者」として追放された。
彼には遺物の危険度――神罰までの目盛りが見える。
流れ着いた辺境港アルヴァスで、壊れたポンプを直し、止まった航路灯を点け、生活道具だけを作る小さな工房を始めるが、評判はすぐに軍と闇市場へ届いてしまう。
「兵器にしろ」と迫る圧力。
「便利なら危険でもいい」と進める上層。
数字が赤くなる前に、守るべきは誰の暮らしか。
追放技師の逆転工房譚。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~
みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。
どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。
一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。
その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。
これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。
カクヨムにもサブタイ違いで載せています。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる