追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人

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第9話:呪いも不純物も、お掃除します

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 エリアナから宝剣『星砕きの剣』を受け取ったカイは、ギルドの片隅にある談話スペースへと彼女を案内した。周囲の冒険者たちが、興味深そうにこちらを見ている。

「ここでやります。少しだけ、時間をください」

 カイはテーブルの上に剣をそっと置いた。黒ずんだ刀身は、まるで病に侵されているかのように弱々しい光しか放っていない。

 エリアナは固唾を飲んでカイの様子を見守っている。彼女にとって、この剣は家の希望そのもの。もしカイが失敗すれば、彼女の未来は完全に閉ざされてしまうだろう。

 カイは深く息を吸い、剣の上に両手をかざした。
「【整理整頓】――」

 スキルを発動すると、カイの意識は剣の内部構造へとダイブしていく。そこは、まるでゴミ屋敷のように、様々なものが乱雑に散らかった世界だった。

 まず目につくのは、刀身全体に絡みつく、黒く粘着質な呪いの魔力。これが、剣の力を封じている元凶だ。次に、剣の素材である金属――ミスリル銀の結晶構造の内部に、微細な不純物が混じっているのが見えた。これは、鍛造された際に取り除ききれなかったものだろう。長年の間に、この不純物が魔力の流れを阻害し、呪いを引き寄せる原因の一つにもなっていた。

(なるほど……呪いを取り除くだけじゃダメだ。この剣を、本来あるべき〝完璧な状態〟に整理整頓しないと)

 カイはまず、黒い呪いの魔力に意識を集中した。ルナの呪いを解いた時と同じ要領で、絡みついた呪いを一つ一つ丁寧に剥がし、〝ゴミ箱〟と認識した異空間へと捨てていく。

 次に、素材の内部にある不純物だ。これは、まるで部屋の隅に溜まったホコリのようだった。カイは、目に見えないほどの小さな箒とちりとりをイメージし、ミスリル銀の結晶の隙間に入り込んだ不純物を、丹念に掃き集めて取り除いていく。

 そして最後に、剣全体の魔力の流れを〝整理〟する。今まで詰まっていたパイプの汚れを落とし、綺麗に水が流れるように、剣の内部を巡る魔力回路を最適化していく。

 カイの額には、玉のような汗が浮かんでいた。それは、今までで最も精密で、最も集中力を要する〝整理整頓〟だった。

 エリアナが息を止めて見守る中、テーブルの上の剣に、ゆっくりと変化が現れ始めた。

 黒ずんでいた刀身から、まるで煤が剥がれ落ちるように黒い靄が消えていく。そして、その下から現れたのは、磨き上げられた鏡のように輝く、清らかな銀色の刃だった。

 チィィン―――……。

 剣が、まるで喜ぶかのように、高く澄んだ音を鳴らした。そして、刀身から溢れ出したまばゆいばかりの聖なる光が、ギルドホール全体を照らし出した。

「な、なんだ!?」
「あの剣、光って……!?」

 周りの冒険者たちが、驚きの声を上げる。
 光が収まった時、そこに横たわっていたのは、もはや呪われた剣の面影など微塵もない、神々しいまでのオーラを放つ一振りの宝剣だった。

 カイは汗を拭い、エリアナに向かって微笑んだ。
「お待たせしました、エリアナさん。これで、大丈夫だと思います」

 エリアナは、夢でも見ているかのように、呆然と剣を見つめていた。彼女がゆっくりと手を伸ばし、剣の柄を握る。その瞬間、エリアナの体にも剣から清浄な魔力が流れ込み、彼女自身の力をも増幅させた。

「……すごい。これが、星砕きの剣の……本当の力……」

 エリアナの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。それは、絶望の淵から救い出された、安堵と感謝の涙だった。

 彼女は剣を胸に抱きしめ、カイに向かって深く、深く頭を下げた。
「カイ殿……。何とお礼を言えばいいのか……。あなたは、私の家と、私の未来を救ってくれた恩人です」

 カイのスキル【整理整頓】。それは、単に呪いを解くだけでなく、物質そのものを本来あるべき完璧な姿へと〝再構築〟する、神の御業にも等しい力だった。その力の片鱗を目の当たりにしたエリアナは、この青年に、計り知れない可能性を感じずにはいられなかった。
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