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第8話:呪われた宝剣と騎士令嬢
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カイの噂がアストリアの街に定着し始めたある日の午後。カイはギルドの依頼掲示板の前で、次に受けるクエストを探していた。
「高難易度クエスト……『呪われた沼の主、ヒュドラの討伐』。報酬は破格だけど、推奨ランクはAランクか。今の僕たちにはまだ早いな」
カイがそう呟いていると、ふと、隣で同じ依頼書をじっと見つめている女性がいることに気づいた。
腰まで伸びる艶やかな黒髪をポニーテールにし、着古されてはいるが上質な作りの軽鎧を身に着けている。背筋がぴんと伸び、その立ち姿からは、彼女がただ者ではないことが窺えた。そして何より、カイの目を引いたのは、その凛とした横顔に浮かぶ、深い憂いの色だった。
彼女は、何かを決心したように、ヒュドラ討伐の依頼書に手を伸ばそうとする。その時、彼女の腰に下げられた一振りの長剣が、カイの目に留まった。
装飾は見事だが、全体がどことなく黒ずんでおり、禍々しいオーラを放っている。カイが【整理整頓】の鑑定能力を無意識に使うと、その剣の情報が脳内に流れ込んできた。
【名称:星砕きの剣(劣化)】
【状態:呪い(能力封印・使用者への反動)】
【詳細:かつて英雄が用いた伝説の剣。だが、長年の不浄な魔力への接触により、強力な呪いに蝕まれている。本来の力は一割も発揮できず、使用者は生命力を吸われる】
(なんてことだ……あんな剣を使ったら、命がいくつあっても足りない)
カイは思わず声をかけた。
「あの、すみません。そのクエスト、その剣で受けるつもりですか?」
女性は驚いたようにカイを振り返った。深い青色の瞳が、カイを射抜く。
「……何か問題でも? あなたには関係のないことでしょう」
彼女の声は、鈴の音のように美しいが、どこか人を寄せ付けない冷たさがあった。
「いえ、そういうわけでは……。ただ、その剣、かなり危険な状態にあるように見えたので。もし、それでヒュドラに挑むというのなら、無謀すぎると言わざるを得ません」
カイの言葉に、女性は目を見開いた。
「……あなた、この剣が呪われていることを見抜いたのですか?」
「ええ、まあ。僕、鑑定が得意なので」
カイがそう言うと、彼女は少しだけ警戒を解いたようだった。
「私の名はエリアナ。エリアナ・フォン・ラングフォードと申します。あなたが噂の、超新星のカイ殿ですね」
「僕のこと、知ってるんですか」
「ええ。あなたの噂はかねがね。まさか、これほどの方だったとは」
エリアナはそう言うと、自嘲気味に微笑んだ。
「お見通しのようですね。この剣は、我がラングフォード家に伝わる家宝。しかし、ご覧の通り呪われており、本来の力を発揮できません。我が家は……今、没落寸前でして。このクエストを成功させ、家を再興するしか、私には道がないのです」
彼女の瞳に宿る、悲壮な覚悟。家を守るため、自分の命を危険に晒してまで、高難易度クエストに挑もうとしている。その姿に、カイはかつてパーティーのために必死で尽くしていた自分を重ね合わせた。
放っておけない。この人を、助けたい。
「あの、エリアナさん」
カイは、意を決して口を開いた。
「もし、信じてもらえるなら……その剣、僕に少しだけ見せてもらえませんか? もしかしたら、僕のスキルで、その呪いをどうにかできるかもしれません」
「……なんですって?」
エリアナは、信じられないという顔でカイを見つめた。呪われた武具の浄化は、高位の神官でも滅多に成功しない至難の業だ。それを、会ったばかりの、Fランクの新人冒険者ができると言う。
普通なら、戯言だと一笑に付すところだろう。しかし、カイの瞳は、どこまでも真摯で、嘘を言っているようには見えなかった。
エリアナはしばらく黙考した後、覚悟を決めたように、腰の剣を静かに鞘から抜いた。
「……わかりました。あなたを信じてみましょう。私の、ラングフォード家の希望を、あなたに託します」
彼女から手渡された呪われた宝剣。そのずしりとした重みは、彼女が背負う運命の重さそのもののように、カイには感じられた。
「高難易度クエスト……『呪われた沼の主、ヒュドラの討伐』。報酬は破格だけど、推奨ランクはAランクか。今の僕たちにはまだ早いな」
カイがそう呟いていると、ふと、隣で同じ依頼書をじっと見つめている女性がいることに気づいた。
腰まで伸びる艶やかな黒髪をポニーテールにし、着古されてはいるが上質な作りの軽鎧を身に着けている。背筋がぴんと伸び、その立ち姿からは、彼女がただ者ではないことが窺えた。そして何より、カイの目を引いたのは、その凛とした横顔に浮かぶ、深い憂いの色だった。
彼女は、何かを決心したように、ヒュドラ討伐の依頼書に手を伸ばそうとする。その時、彼女の腰に下げられた一振りの長剣が、カイの目に留まった。
装飾は見事だが、全体がどことなく黒ずんでおり、禍々しいオーラを放っている。カイが【整理整頓】の鑑定能力を無意識に使うと、その剣の情報が脳内に流れ込んできた。
【名称:星砕きの剣(劣化)】
【状態:呪い(能力封印・使用者への反動)】
【詳細:かつて英雄が用いた伝説の剣。だが、長年の不浄な魔力への接触により、強力な呪いに蝕まれている。本来の力は一割も発揮できず、使用者は生命力を吸われる】
(なんてことだ……あんな剣を使ったら、命がいくつあっても足りない)
カイは思わず声をかけた。
「あの、すみません。そのクエスト、その剣で受けるつもりですか?」
女性は驚いたようにカイを振り返った。深い青色の瞳が、カイを射抜く。
「……何か問題でも? あなたには関係のないことでしょう」
彼女の声は、鈴の音のように美しいが、どこか人を寄せ付けない冷たさがあった。
「いえ、そういうわけでは……。ただ、その剣、かなり危険な状態にあるように見えたので。もし、それでヒュドラに挑むというのなら、無謀すぎると言わざるを得ません」
カイの言葉に、女性は目を見開いた。
「……あなた、この剣が呪われていることを見抜いたのですか?」
「ええ、まあ。僕、鑑定が得意なので」
カイがそう言うと、彼女は少しだけ警戒を解いたようだった。
「私の名はエリアナ。エリアナ・フォン・ラングフォードと申します。あなたが噂の、超新星のカイ殿ですね」
「僕のこと、知ってるんですか」
「ええ。あなたの噂はかねがね。まさか、これほどの方だったとは」
エリアナはそう言うと、自嘲気味に微笑んだ。
「お見通しのようですね。この剣は、我がラングフォード家に伝わる家宝。しかし、ご覧の通り呪われており、本来の力を発揮できません。我が家は……今、没落寸前でして。このクエストを成功させ、家を再興するしか、私には道がないのです」
彼女の瞳に宿る、悲壮な覚悟。家を守るため、自分の命を危険に晒してまで、高難易度クエストに挑もうとしている。その姿に、カイはかつてパーティーのために必死で尽くしていた自分を重ね合わせた。
放っておけない。この人を、助けたい。
「あの、エリアナさん」
カイは、意を決して口を開いた。
「もし、信じてもらえるなら……その剣、僕に少しだけ見せてもらえませんか? もしかしたら、僕のスキルで、その呪いをどうにかできるかもしれません」
「……なんですって?」
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