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第13話:届かぬ手、勇者たちの後悔
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一方その頃、カイを追放した勇者アレスのパーティーは、深刻な状況に陥っていた。
彼らは、魔王城へと続く最後の関門とされる「奈落の大迷宮」に挑んでいた。しかし、その攻略は完全に手詰まりとなっていた。
「くそっ! また行き止まりか! このダンジョン、どうなってるんだ!」
アレスは、苛立ちを隠せずに壁を殴りつけた。彼の自慢の聖剣も、硬い岩盤には傷一つ付けられない。
「アレス、ポーションがもう尽きそうですわ。それに、食料もあと一日分しか……」
魔術師のソフィアが、不安そうな顔で報告する。
「マルコ、次の階層への道はわからないのか? お前の探索魔法は何のためにあるんだ!」
「も、申し訳ありません、アレス様! このダンジョンは強力な魔力で守られており、私の魔法では……」
僧侶のマルコが、震えながら弁明する。
彼らは、気づいていなかった。いや、気づかないふりをしていた。自分たちが今、いかにカイという存在に依存していたのかを。
カイがいた頃は、こんなことにはならなかった。
カイは、ダンジョンに入る前に、必ず地図と睨めっこし、最も効率的なルートを予測していた。彼の予測は驚くほど正確で、無駄な消耗を避けることができた。
カイは、常にパーティーの所持品を完璧に管理していた。誰のポーションが減っているか、誰の矢が残り少ないか、すべてを把握し、的確に分配していた。
カイは、魔物と遭遇するたびに、その特徴や弱点を小声でアレスに伝えていた。アレスはそれを、さも自分が見抜いたかのように仲間たちに指示していただけだったのだ。
それらはすべて、カイの【整理整頓】スキルによる、情報収集と分析の賜物だった。だが、アレスたちはそれを、カイの地道な努力や、ただの雑用係の仕事だとしか思っていなかった。
「……なあ、アレス」
ソフィアが、おずおずと口を開いた。
「カイがいたら、今頃……」
「黙れッ!」
アレスが、ソフィアの言葉を遮るように怒鳴った。
「あのゴミスキル持ちの名前を出すな! あいつがいなくても、俺たちだけで魔王は倒せる! 俺は、聖剣に選ばれた勇者なんだぞ!」
虚勢を張れば張るほど、アレスの心の中では後悔と焦りが渦巻いていた。カイを追放してから、何もかもが上手くいかない。パーティーの雰囲気は最悪で、些細なことで言い争いが絶えない。
そんな折、王都から届いた一羽の伝令鳥が、アレスの焦燥に火を注いだ。
『――辺境の街アストリアにて、謎の超新星(スーパールーキー)出現。鑑定スキルを駆使し、FランクながらBランク級の依頼を次々と達成。その名は、カイ――』
「……カイ、だと……?」
アレスは、報告書を握りしめ、わなわなと震えた。あの役立たずが、辺境で名を上げている? 鑑定スキルだと? ふざけるな。あいつのスキルは【整理整頓】のはずだ。
だが、報告書には、カイが呪われた宝剣を浄化し、伝説の鍛冶師をスランプから救ったことまで書かれていた。信じがたいが、事実なのだろう。
アレスは、ようやく理解した。自分たちが捨てたものが、ただの石ころではなく、磨かれる前のダイヤモンドだったということを。
「あいつのスキルは……ゴミじゃなかったのか……。俺が、あいつの本当の価値を見抜けなかっただけだと……?」
嫉妬、後悔、そして屈辱。どす黒い感情が、アレスの心を支配する。
「ふざけるな……ふざけるなッ! 勇者はこの俺だ! あいつのような雑魚が、俺より評価されていいはずがない! 必ず、必ずあいつを連れ戻し、俺の道具として再びこき使ってやる……!」
アレスの瞳に、狂気の光が宿る。彼は、自分の過ちを認めるのではなく、カイの力を奪うことしか考えていなかった。
しかし、彼らの手がカイに届くことは、もはやない。カイはすでに、彼らなど遥かに凌駕する仲間たちと共に、新たな道を歩み始めているのだから。勇者パーティーの凋落は、ここから加速度的に始まっていく。
彼らは、魔王城へと続く最後の関門とされる「奈落の大迷宮」に挑んでいた。しかし、その攻略は完全に手詰まりとなっていた。
「くそっ! また行き止まりか! このダンジョン、どうなってるんだ!」
アレスは、苛立ちを隠せずに壁を殴りつけた。彼の自慢の聖剣も、硬い岩盤には傷一つ付けられない。
「アレス、ポーションがもう尽きそうですわ。それに、食料もあと一日分しか……」
魔術師のソフィアが、不安そうな顔で報告する。
「マルコ、次の階層への道はわからないのか? お前の探索魔法は何のためにあるんだ!」
「も、申し訳ありません、アレス様! このダンジョンは強力な魔力で守られており、私の魔法では……」
僧侶のマルコが、震えながら弁明する。
彼らは、気づいていなかった。いや、気づかないふりをしていた。自分たちが今、いかにカイという存在に依存していたのかを。
カイがいた頃は、こんなことにはならなかった。
カイは、ダンジョンに入る前に、必ず地図と睨めっこし、最も効率的なルートを予測していた。彼の予測は驚くほど正確で、無駄な消耗を避けることができた。
カイは、常にパーティーの所持品を完璧に管理していた。誰のポーションが減っているか、誰の矢が残り少ないか、すべてを把握し、的確に分配していた。
カイは、魔物と遭遇するたびに、その特徴や弱点を小声でアレスに伝えていた。アレスはそれを、さも自分が見抜いたかのように仲間たちに指示していただけだったのだ。
それらはすべて、カイの【整理整頓】スキルによる、情報収集と分析の賜物だった。だが、アレスたちはそれを、カイの地道な努力や、ただの雑用係の仕事だとしか思っていなかった。
「……なあ、アレス」
ソフィアが、おずおずと口を開いた。
「カイがいたら、今頃……」
「黙れッ!」
アレスが、ソフィアの言葉を遮るように怒鳴った。
「あのゴミスキル持ちの名前を出すな! あいつがいなくても、俺たちだけで魔王は倒せる! 俺は、聖剣に選ばれた勇者なんだぞ!」
虚勢を張れば張るほど、アレスの心の中では後悔と焦りが渦巻いていた。カイを追放してから、何もかもが上手くいかない。パーティーの雰囲気は最悪で、些細なことで言い争いが絶えない。
そんな折、王都から届いた一羽の伝令鳥が、アレスの焦燥に火を注いだ。
『――辺境の街アストリアにて、謎の超新星(スーパールーキー)出現。鑑定スキルを駆使し、FランクながらBランク級の依頼を次々と達成。その名は、カイ――』
「……カイ、だと……?」
アレスは、報告書を握りしめ、わなわなと震えた。あの役立たずが、辺境で名を上げている? 鑑定スキルだと? ふざけるな。あいつのスキルは【整理整頓】のはずだ。
だが、報告書には、カイが呪われた宝剣を浄化し、伝説の鍛冶師をスランプから救ったことまで書かれていた。信じがたいが、事実なのだろう。
アレスは、ようやく理解した。自分たちが捨てたものが、ただの石ころではなく、磨かれる前のダイヤモンドだったということを。
「あいつのスキルは……ゴミじゃなかったのか……。俺が、あいつの本当の価値を見抜けなかっただけだと……?」
嫉妬、後悔、そして屈辱。どす黒い感情が、アレスの心を支配する。
「ふざけるな……ふざけるなッ! 勇者はこの俺だ! あいつのような雑魚が、俺より評価されていいはずがない! 必ず、必ずあいつを連れ戻し、俺の道具として再びこき使ってやる……!」
アレスの瞳に、狂気の光が宿る。彼は、自分の過ちを認めるのではなく、カイの力を奪うことしか考えていなかった。
しかし、彼らの手がカイに届くことは、もはやない。カイはすでに、彼らなど遥かに凌駕する仲間たちと共に、新たな道を歩み始めているのだから。勇者パーティーの凋落は、ここから加速度的に始まっていく。
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