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第8話「決戦~貴族会議での対決~」
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技術流出の嫌疑をかけられ、俺は完全に追い詰められていた。王太子のアルフォンス殿下は俺の無実を信じてくれているようだったが、ヴァルド伯爵を中心とする反対派の貴族たちの声は日増しに大きくなっていく。このままでは、俺の改革官としてのキャリアも、ローレンツ家の未来も、全てが終わってしまう。
「シルヴィア、カールさんを呼んできてくれ。それと、ガレンにも至急王都へ来るよう伝えてほしい」
俺は、一人でこの陰謀に立ち向かうつもりはなかった。信頼できる仲間たちの力を借りる時が来たのだ。
すぐに王都へ駆けつけてくれたカールは、その広い情報網を駆使して、裏社会で取引されているという資料の出所を探り始めた。一方、ガレンは、王宮の警備兵の中にいる協力者と接触し、資料が盗まれた日の内部状況を洗い直してくれた。
そして、運命の貴族会議が開かれる前夜。俺たちは、ヴァルド伯爵の陰謀を打ち砕くための、決定的な証拠と作戦を手にしていた。
「――よって、国家への背信行為を働いたケンイチ・ローレンツ改革官の罷免、並びにローレンツ家の爵位剥奪を要求する!」
貴族会議の場で、ヴァルド伯爵は勝ち誇ったようにそう宣言した。周囲の貴族たちも、もはや俺が有罪であると確信しているような顔つきだ。
俺が反論しようと口を開きかけた、その時。
「お待ちください!」
会議場の扉が勢いよく開き、息を切らしたカールが入ってきた。彼の後ろには、数人の男たちが縛られた姿で引き立てられてくる。
「ヴァルド伯爵様!これはどういうことですかな?」
カールが突き出したのは、ヴァルド伯爵の署名と花押が入った一枚の羊皮紙だった。それは、裏社会の人間に対して、俺の部屋から資料を盗み出すよう依頼した、動かぬ証拠の「指示書」だった。
「なっ……!そ、それは偽物だ!俺は知らん!」
狼狽するヴァルド伯爵。だが、カールの追撃は止まらない。
「では、ここにいる者たちに見覚えは?彼らは、伯爵様の依頼で改革官殿の屋敷に忍び込んだ盗人です。そして、これは彼らへの報酬として支払われた金貨。この金貨袋には、ヴァルド家の紋章がくっきりと刻印されておりますが?」
カールが金貨袋を床にぶちまけると、チャリンという音と共に、見慣れた紋章が貴族たちの目に晒された。
さらに、ガレンが前に進み出る。
「加えて、資料が盗まれたとされる日、ヴァルド伯爵家の執事が、王宮の書庫官と密会していたという複数の証言も得ております」
次々と突きつけられる証拠に、ヴァルド伯爵の顔は青から白へと変わっていった。全てが、俺たちを罠にはめるために彼が仕組んだ自作自演だったのである。
形勢は、一瞬にして逆転した。
「ヴァルド伯爵。何か申し開きはあるか?」
王太子が、冷たく言い放つ。もはや、言い逃れの言葉も出てこない。
だが、俺はこのまま彼を断罪して終わりにするつもりはなかった。俺の目的は、彼の失脚ではない。王国の農業改革を前に進めることだ。
「お待ちください、王太子殿下」
俺は立ち上がり、全ての貴族に向かって宣言した。
「この一件は、私が未熟であったが故に起きたこと。ヴァルド伯爵だけを責めるわけにはいきません。それよりも、皆様に問いたい。我々が今なすべきは、このような内輪揉めでしょうか?それとも、国の未来を豊かにするための議論でしょうか?」
俺は一呼吸置いて、続けた。
「多くの皆様が、私の農業改革案を『机上の空論』だとお考えでしょう。ならば、証明してみせます」
俺は、ヴァルド伯爵に向き直った。
「ヴァルド伯爵。あなたの領地と私の領地で、競争しませんか。これから一年間、双方の領地で農業生産に取り組み、どちらがより多くの収穫を上げられるか。もし私が負ければ、改革官の地位を潔く返上し、ローレンツ領の全ての農業技術をあなたに差し上げましょう」
「な……!?」
「しかし、もし私が勝ったなら……。王国全土の農業改革に、全面的にご協力いただく。そして、私のやり方に一切の口出しをしないと、この場で誓っていただきたい」
とんでもない賭けだった。だが、俺には自信があった。一年もあれば、俺の農法が彼の旧態依然とした農法に負けるはずがない。
追い詰められたヴァルド伯爵は、もはやこの提案をのむしか選択肢はなかった。ここで断れば、自分の農法に自信がないと認めるようなものだ。
「……いいだろう。受けて立つ!貴様のような若造に、我がヴァルド家の伝統が負けるはずがない!」
こうして、俺とヴァルド伯爵の対決は、貴族会議の場で、全貴族の証人のもと、正式な競争という形で決着をつけることになった。
俺は、ただ言葉で論破するのではなく、「実績」という最も雄弁な事実で、彼らを、そして王国全体を納得させる道を選んだのだ。
ヴァルド伯爵は、ひとまず罪を問われることは免れたものの、この競争に負ければ彼の政治生命は終わる。彼はもはや後には引けなくなった。
一方の俺も、もし負ければ全てを失う。
一年後、笑うのは耕作貴族か、それとも伝統の名門貴族か。王国の未来を賭けた、壮大な農業対決の幕が上がった。
「シルヴィア、カールさんを呼んできてくれ。それと、ガレンにも至急王都へ来るよう伝えてほしい」
俺は、一人でこの陰謀に立ち向かうつもりはなかった。信頼できる仲間たちの力を借りる時が来たのだ。
すぐに王都へ駆けつけてくれたカールは、その広い情報網を駆使して、裏社会で取引されているという資料の出所を探り始めた。一方、ガレンは、王宮の警備兵の中にいる協力者と接触し、資料が盗まれた日の内部状況を洗い直してくれた。
そして、運命の貴族会議が開かれる前夜。俺たちは、ヴァルド伯爵の陰謀を打ち砕くための、決定的な証拠と作戦を手にしていた。
「――よって、国家への背信行為を働いたケンイチ・ローレンツ改革官の罷免、並びにローレンツ家の爵位剥奪を要求する!」
貴族会議の場で、ヴァルド伯爵は勝ち誇ったようにそう宣言した。周囲の貴族たちも、もはや俺が有罪であると確信しているような顔つきだ。
俺が反論しようと口を開きかけた、その時。
「お待ちください!」
会議場の扉が勢いよく開き、息を切らしたカールが入ってきた。彼の後ろには、数人の男たちが縛られた姿で引き立てられてくる。
「ヴァルド伯爵様!これはどういうことですかな?」
カールが突き出したのは、ヴァルド伯爵の署名と花押が入った一枚の羊皮紙だった。それは、裏社会の人間に対して、俺の部屋から資料を盗み出すよう依頼した、動かぬ証拠の「指示書」だった。
「なっ……!そ、それは偽物だ!俺は知らん!」
狼狽するヴァルド伯爵。だが、カールの追撃は止まらない。
「では、ここにいる者たちに見覚えは?彼らは、伯爵様の依頼で改革官殿の屋敷に忍び込んだ盗人です。そして、これは彼らへの報酬として支払われた金貨。この金貨袋には、ヴァルド家の紋章がくっきりと刻印されておりますが?」
カールが金貨袋を床にぶちまけると、チャリンという音と共に、見慣れた紋章が貴族たちの目に晒された。
さらに、ガレンが前に進み出る。
「加えて、資料が盗まれたとされる日、ヴァルド伯爵家の執事が、王宮の書庫官と密会していたという複数の証言も得ております」
次々と突きつけられる証拠に、ヴァルド伯爵の顔は青から白へと変わっていった。全てが、俺たちを罠にはめるために彼が仕組んだ自作自演だったのである。
形勢は、一瞬にして逆転した。
「ヴァルド伯爵。何か申し開きはあるか?」
王太子が、冷たく言い放つ。もはや、言い逃れの言葉も出てこない。
だが、俺はこのまま彼を断罪して終わりにするつもりはなかった。俺の目的は、彼の失脚ではない。王国の農業改革を前に進めることだ。
「お待ちください、王太子殿下」
俺は立ち上がり、全ての貴族に向かって宣言した。
「この一件は、私が未熟であったが故に起きたこと。ヴァルド伯爵だけを責めるわけにはいきません。それよりも、皆様に問いたい。我々が今なすべきは、このような内輪揉めでしょうか?それとも、国の未来を豊かにするための議論でしょうか?」
俺は一呼吸置いて、続けた。
「多くの皆様が、私の農業改革案を『机上の空論』だとお考えでしょう。ならば、証明してみせます」
俺は、ヴァルド伯爵に向き直った。
「ヴァルド伯爵。あなたの領地と私の領地で、競争しませんか。これから一年間、双方の領地で農業生産に取り組み、どちらがより多くの収穫を上げられるか。もし私が負ければ、改革官の地位を潔く返上し、ローレンツ領の全ての農業技術をあなたに差し上げましょう」
「な……!?」
「しかし、もし私が勝ったなら……。王国全土の農業改革に、全面的にご協力いただく。そして、私のやり方に一切の口出しをしないと、この場で誓っていただきたい」
とんでもない賭けだった。だが、俺には自信があった。一年もあれば、俺の農法が彼の旧態依然とした農法に負けるはずがない。
追い詰められたヴァルド伯爵は、もはやこの提案をのむしか選択肢はなかった。ここで断れば、自分の農法に自信がないと認めるようなものだ。
「……いいだろう。受けて立つ!貴様のような若造に、我がヴァルド家の伝統が負けるはずがない!」
こうして、俺とヴァルド伯爵の対決は、貴族会議の場で、全貴族の証人のもと、正式な競争という形で決着をつけることになった。
俺は、ただ言葉で論破するのではなく、「実績」という最も雄弁な事実で、彼らを、そして王国全体を納得させる道を選んだのだ。
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