7 / 16
第6話「猫耳商人の驚愕」
しおりを挟む
農園の入り口にある結界が反応した。
敵意はない。ただ、何者かが侵入してきた合図だ。
僕とフェンが様子を見に行くと、そこには一台の荷馬車と、二足歩行の猫がいた。
いや、猫の耳と尻尾を持つ獣人だ。立派な口髭を蓄え、上等な服を着ている。
「おやまあ、これは驚きました。死の荒野に、こんな楽園があるとは」
男は丸いサングラスを押し上げ、僕たちを見て丁寧に帽子を取った。
「怪しい者ではございません。わたくし、行商人のベルナルドと申します。風に乗って流れてくる、あまりにも芳醇な魔力の香りに誘われてきましてね」
彼の鼻がヒクヒクと動いている。
どうやら僕の野菜が放つ匂いに釣られたらしい。
「農場主のカイルだ。こっちはソフィア、それにフェン。迷い込んだってわけじゃないんだな?」
「ええ、商人の鼻は宝の在り処を逃しませんからな」
ベルナルドは興味津々といった様子で畑を見回した。
その視線が、一本のナスに釘付けになる。
濃い紫紺色で、大人の腕ほどもある【ドラゴン・エッグプラント】だ。
「……失礼ですが、あれを一つ、売っていただけませんか?金貨一枚出しましょう」
金貨一枚。普通のナスなら一生かかっても買えない値段だ。
だが、僕は首を振った。
「試食ならタダであげるよ。その代わり、感想を聞かせてくれ」
「なんと太っ腹な!」
僕はナスをもぎ取り、その場でスライスして軽く塩を振り、火魔法で炙って彼に渡した。
ベルナルドは恐る恐る口に運び……次の瞬間、全身の毛を逆立てて飛び上がった。
「ニャ――ッ!?」
「どうした?」
「な、ななな、なんですかこれはァアア!!」
彼は私の肩をガシッと掴んで揺さぶった。
「口の中で溶けました!トロトロです!そして爆発的な旨味!何より、長年悩んでいた腰痛が一瞬で消えました!これは野菜の皮を被ったエリクサーですか!?」
「まあ、品種改良してるからね」
「品種改良のレベルを超えています!」
ベルナルドは興奮冷めやらぬ様子で、懐から手帳を取り出し、猛スピードで何かを書き込み始めた。
「カイル様、あなたは知っていますか?今、世界は食糧危機と、それに伴う魔力枯渇に喘いでいることを」
「え、そうなの?」
「はい。特に隣国の王国などは悲惨です。ですが……この農園には、世界を救う可能性があります」
ベルナルドは真剣な眼差しで僕を見つめた。
「カイル様、商談です。わたくしと組んで、この作物を世界に売り出しませんか?いや、ただ売るだけじゃもったいない」
彼は芝居がかった仕草で両手を広げた。
「世界中の王族や貴族、大商人を集めて、ここで見本市を開くのです。名付けて『異世界万博』!あなたの作った野菜と、それを使った料理、そしてこの楽園そのものを展示するのです!」
「万博……?」
想像もしなかった言葉に、僕は呆気にとられた。
だが、隣で聞いていたソフィアの目が、強い光を宿した。
「それ、いいかもしれません。カイル様の素晴らしさを世界に知らしめ、私達を捨てた人たちを見返す、最高の機会になりますわ」
敵意はない。ただ、何者かが侵入してきた合図だ。
僕とフェンが様子を見に行くと、そこには一台の荷馬車と、二足歩行の猫がいた。
いや、猫の耳と尻尾を持つ獣人だ。立派な口髭を蓄え、上等な服を着ている。
「おやまあ、これは驚きました。死の荒野に、こんな楽園があるとは」
男は丸いサングラスを押し上げ、僕たちを見て丁寧に帽子を取った。
「怪しい者ではございません。わたくし、行商人のベルナルドと申します。風に乗って流れてくる、あまりにも芳醇な魔力の香りに誘われてきましてね」
彼の鼻がヒクヒクと動いている。
どうやら僕の野菜が放つ匂いに釣られたらしい。
「農場主のカイルだ。こっちはソフィア、それにフェン。迷い込んだってわけじゃないんだな?」
「ええ、商人の鼻は宝の在り処を逃しませんからな」
ベルナルドは興味津々といった様子で畑を見回した。
その視線が、一本のナスに釘付けになる。
濃い紫紺色で、大人の腕ほどもある【ドラゴン・エッグプラント】だ。
「……失礼ですが、あれを一つ、売っていただけませんか?金貨一枚出しましょう」
金貨一枚。普通のナスなら一生かかっても買えない値段だ。
だが、僕は首を振った。
「試食ならタダであげるよ。その代わり、感想を聞かせてくれ」
「なんと太っ腹な!」
僕はナスをもぎ取り、その場でスライスして軽く塩を振り、火魔法で炙って彼に渡した。
ベルナルドは恐る恐る口に運び……次の瞬間、全身の毛を逆立てて飛び上がった。
「ニャ――ッ!?」
「どうした?」
「な、ななな、なんですかこれはァアア!!」
彼は私の肩をガシッと掴んで揺さぶった。
「口の中で溶けました!トロトロです!そして爆発的な旨味!何より、長年悩んでいた腰痛が一瞬で消えました!これは野菜の皮を被ったエリクサーですか!?」
「まあ、品種改良してるからね」
「品種改良のレベルを超えています!」
ベルナルドは興奮冷めやらぬ様子で、懐から手帳を取り出し、猛スピードで何かを書き込み始めた。
「カイル様、あなたは知っていますか?今、世界は食糧危機と、それに伴う魔力枯渇に喘いでいることを」
「え、そうなの?」
「はい。特に隣国の王国などは悲惨です。ですが……この農園には、世界を救う可能性があります」
ベルナルドは真剣な眼差しで僕を見つめた。
「カイル様、商談です。わたくしと組んで、この作物を世界に売り出しませんか?いや、ただ売るだけじゃもったいない」
彼は芝居がかった仕草で両手を広げた。
「世界中の王族や貴族、大商人を集めて、ここで見本市を開くのです。名付けて『異世界万博』!あなたの作った野菜と、それを使った料理、そしてこの楽園そのものを展示するのです!」
「万博……?」
想像もしなかった言葉に、僕は呆気にとられた。
だが、隣で聞いていたソフィアの目が、強い光を宿した。
「それ、いいかもしれません。カイル様の素晴らしさを世界に知らしめ、私達を捨てた人たちを見返す、最高の機会になりますわ」
128
あなたにおすすめの小説
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました
黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」
ブラック企業で過労死した俺、相川大地。
女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!?
右も左もわからない荒野でのサバイバル。
だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに!
美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。
これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。
農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!
偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています
黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。
彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。
ようやく手に入れた穏やかな日々。
しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。
彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。
そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。
「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。
「いつものことだから、君のせいじゃないよ」
これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。
二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。
心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。
過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました
黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。
これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。
モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~
みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。
どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。
一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。
その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。
これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。
カクヨムにもサブタイ違いで載せています。
大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!
向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。
とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。
こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。
土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど!
一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた
黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆
毎日朝7時更新!
「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」
過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。
絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!?
伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!?
追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる