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番外編3「王子と元聖女の新たな道」
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アルフォンス王子は、イザベラという存在に触発され、身分や慣習にとらわれない、新しい国づくりを目指して、様々な改革に精力的に取り組んでいた。貴族中心の政治から、民の声をより多く取り入れるための制度を整え、産業を振興し、国民が豊かになれる政策を次々と打ち出していた。
一方、かつて、ゲームの本来のヒロインだった男爵令嬢リリアナは、シュヴァルツ侯爵に利用されていた過去の自分と決別し、新たな道を歩み始めていた。彼女は、自らが持つ聖女としての治癒の力を、本当に助けを必要としている人々のために使いたいと、ギルド連盟が運営する王都の孤児院で、献身的に子供たちの世話をしていた。
侯爵に唆され、王子に媚びていた頃の彼女の姿は、もうどこにもなかった。そこには、自分の意志で、自分の使命を見つけた、一人の自立した女性の姿があった。
***
ある日、アルフォンスは、福祉政策の一環として、その孤児院を視察に訪れた。そこで彼が見たのは、泥だらけになりながらも、子供たちと一緒になって笑い、怪我をした子の傷を、優しい光で癒しているリリアナの姿だった。
その生き生きとした表情は、彼が王城で見ていた、か弱く儚げな彼女とは、まるで別人のようだった。
「リリアナ嬢……」
アルフォンスが声をかけると、リリアナは驚いたように振り返ったが、すぐに穏やかな微笑みを浮かべて、深く一礼した。
「これは、アルフォンス殿下。ようこそおいでくださいました」
その立ち居振る舞いは、もはやただの令嬢ではなく、孤児院の責任者としての風格さえ感じさせた。
二人は、かつての淡い関係を懐かしむように、少しだけ気まずい沈黙の後、孤児院の庭を並んで歩いた。
「……見違えたな。君は、ここで、自分の居場所を見つけたようだ」
アルフォンスが言うと、リリアナは、晴れやかな顔で頷いた。
「はい。私は、ずっと、誰かに守られ、誰かに与えられることばかりを考えていました。でも、イザベラ様を見て、学んだのです。本当の強さとは、自分の力で誰かを幸せにすることなのだと」
彼女の口から、イザベラの名前が出たことに、アルフォンスは少し驚いたが、すぐに納得した。
「ここでの生活は、大変なことも多いです。でも、子供たちの笑顔を見ていると、心の底から満たされるのです。聖女の力は、王妃になるためにあるのではなく、こうして、名もなき人々を癒すためにこそ、あるのだと、今は信じています」
そう語る彼女の横顔は、気高く、そして美しかった。
アルフォンスは、深く感じ入っていた。イザベラだけでなく、彼女に関わった多くの人々が、良い方向に変わっていっている。リリアナもまた、その一人なのだ。
「君も、イザベラも、そして私も。皆、それぞれの場所で、この国を支えているのだな」
かつて、イザベラを悪役令嬢として断罪し、リリアナをヒロインとして選ぼうとした、あの卒業パーティーが、遠い昔のことのように思えた。
二人の間に、もはや恋愛感情はなかった。しかし、それ以上に、強く、確かな絆が、新たに生まれていた。
「リリアナ嬢。これからも、君の活動を、国として支援することを約束しよう」
「心より感謝いたします、殿下」
二人は、夕日に照らされた庭で、固い握手を交わした。
それは、この国を、それぞれの立場で支えていく、「同志」としての、友情の証だった。
王子と元聖女。二人が選んだ新たな道は、交わることはなくとも、同じ未来へと、確かに続いていた。
一方、かつて、ゲームの本来のヒロインだった男爵令嬢リリアナは、シュヴァルツ侯爵に利用されていた過去の自分と決別し、新たな道を歩み始めていた。彼女は、自らが持つ聖女としての治癒の力を、本当に助けを必要としている人々のために使いたいと、ギルド連盟が運営する王都の孤児院で、献身的に子供たちの世話をしていた。
侯爵に唆され、王子に媚びていた頃の彼女の姿は、もうどこにもなかった。そこには、自分の意志で、自分の使命を見つけた、一人の自立した女性の姿があった。
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ある日、アルフォンスは、福祉政策の一環として、その孤児院を視察に訪れた。そこで彼が見たのは、泥だらけになりながらも、子供たちと一緒になって笑い、怪我をした子の傷を、優しい光で癒しているリリアナの姿だった。
その生き生きとした表情は、彼が王城で見ていた、か弱く儚げな彼女とは、まるで別人のようだった。
「リリアナ嬢……」
アルフォンスが声をかけると、リリアナは驚いたように振り返ったが、すぐに穏やかな微笑みを浮かべて、深く一礼した。
「これは、アルフォンス殿下。ようこそおいでくださいました」
その立ち居振る舞いは、もはやただの令嬢ではなく、孤児院の責任者としての風格さえ感じさせた。
二人は、かつての淡い関係を懐かしむように、少しだけ気まずい沈黙の後、孤児院の庭を並んで歩いた。
「……見違えたな。君は、ここで、自分の居場所を見つけたようだ」
アルフォンスが言うと、リリアナは、晴れやかな顔で頷いた。
「はい。私は、ずっと、誰かに守られ、誰かに与えられることばかりを考えていました。でも、イザベラ様を見て、学んだのです。本当の強さとは、自分の力で誰かを幸せにすることなのだと」
彼女の口から、イザベラの名前が出たことに、アルフォンスは少し驚いたが、すぐに納得した。
「ここでの生活は、大変なことも多いです。でも、子供たちの笑顔を見ていると、心の底から満たされるのです。聖女の力は、王妃になるためにあるのではなく、こうして、名もなき人々を癒すためにこそ、あるのだと、今は信じています」
そう語る彼女の横顔は、気高く、そして美しかった。
アルフォンスは、深く感じ入っていた。イザベラだけでなく、彼女に関わった多くの人々が、良い方向に変わっていっている。リリアナもまた、その一人なのだ。
「君も、イザベラも、そして私も。皆、それぞれの場所で、この国を支えているのだな」
かつて、イザベラを悪役令嬢として断罪し、リリアナをヒロインとして選ぼうとした、あの卒業パーティーが、遠い昔のことのように思えた。
二人の間に、もはや恋愛感情はなかった。しかし、それ以上に、強く、確かな絆が、新たに生まれていた。
「リリアナ嬢。これからも、君の活動を、国として支援することを約束しよう」
「心より感謝いたします、殿下」
二人は、夕日に照らされた庭で、固い握手を交わした。
それは、この国を、それぞれの立場で支えていく、「同志」としての、友情の証だった。
王子と元聖女。二人が選んだ新たな道は、交わることはなくとも、同じ未来へと、確かに続いていた。
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