追放された鉄道オタクの俺、悪役令嬢と辺境で蒸気機関車を作ったら王国最強になってた件。

黒崎隼人

文字の大きさ
19 / 24

第18話:鉄路を駆ける要塞

しおりを挟む
 魔物の大群が迫る最前線では、王国騎士団がまさに崩壊寸前だった。次から次へと現れる魔物に、騎士たちは疲弊しきっていた。物資の補給は途絶え、負傷者は増える一方。誰もが、もはやこれまでかと絶望しかけていた、その時だった。

「ボーーーーッ!」

 地平線の彼方から、これまで聞いたこともない力強い汽笛の音が響き渡り、大地が揺れた。騎士たちが驚いてその方向を見ると、黒い煙を上げて、巨大な鉄の塊が猛スピードでこちらへ向かってくるではないか。

「な、なんだ、あれは!?」
「敵か!? いや、違う!」

 装甲列車『ジークフリート』は、魔物の群れのど真ん中を突っ切るように敷設された線路の上を、猛然と突き進んできた。魔物たちがそれに気づき、襲いかかろうとするが、列車の速度の方が遥かに速い。

 列車が前線基地のすぐ近くで停車すると、側面の装甲扉が開き、中から完全武装した騎士団の増援部隊が、次々と降りてきた。さらに、大量の矢やポーション、食料といった補給物資が運び出される。

「補給部隊と増援だ! まだ我々は戦えるぞ!」
 騎士団の士気は、一気に高まった。

 しかし、装い列車の真価はここからだった。
「全砲門、開け! 目標、前方の魔物ども! 撃て!」
 僕の号令と共に、列車に搭載された大砲が一斉に火を噴いた。轟音と共に放たれた砲弾が、魔物の群れの中心で炸裂し、凄まじい爆風で敵を木っ端微塵に吹き飛ばす。屋根のバリスタからは、巨大な矢が放たれ、大型の魔物を串刺しにしていく。

 それは、もはや一方的な蹂躙だった。装甲列車は、線路上を前進、後退しながら、自在に射撃位置を変える。まさに、鉄路を駆ける移動要塞だ。これまで騎士たちを苦しめていた魔物の大群が、圧倒的な火力の前に次々と数を減らしていく。

「すごい…これが、アスターの…」
 機関室の隣の指揮車両で、セレスが息を呑む。彼女もまた、窓から強力な攻撃魔法を放ち、列車に近づこうとする魔物を焼き払っていた。

「セレス、援護を頼む! 右翼が手薄だ!」
「ええ、任せて!」

 戦場で、僕たちの呼吸は完璧に合っていた。僕が戦術を指示し、彼女が魔法でそれを補う。互いの背中を守り合いながら、僕たちは共に戦っていた。この危機を乗り越えた時、僕たちの絆は、これまで以上に固く、そして強いものになっているだろう。

 装甲列車の出現により、戦いの流れは完全に変わった。鉄道を活用したアスターの斬新な戦術――兵站の確保と移動砲台としての運用――は、王国騎士団の戦い方を根底から変えた。騎士団長は、この鉄の要塞に全幅の信頼を寄せ、僕の指揮に従って的確に部隊を動かした。

 劣勢だった戦局は、完全に逆転した。兵士たちは、いつでも補給と援護が受けられるという安心感から、本来の力を取り戻し、残った魔物を次々と討伐していく。

 空が白み始める頃には、あれほど王国を恐怖に陥れた魔物の大群は、ほぼ壊滅状態となっていた。朝日に照らされた鉄の要塞は、無数の傷を負いながらも、静かに戦場に佇んでいた。
 僕たちは、勝ったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は廃墟農園で異世界婚活中!~離婚したら最強農業スキルで貴族たちが求婚してきますが、元夫が邪魔で困ってます~

黒崎隼人
ファンタジー
「君との婚約を破棄し、離婚を宣言する!」 皇太子である夫から突きつけられた突然の別れ。 悪役令嬢の濡れ衣を着せられ追放された先は、誰も寄りつかない最果ての荒れ地だった。 ――最高の農業パラダイスじゃない! 前世の知識を活かし、リネットの農業革命が今、始まる! 美味しい作物で村を潤し、国を救い、気づけば各国の貴族から求婚の嵐!? なのに、なぜか私を捨てたはずの元夫が、いつも邪魔ばかりしてくるんですけど! 「離婚から始まる、最高に輝く人生!」 農業スキル全開で国を救い、不器用な元夫を振り回す、痛快!逆転ラブコメディ!

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢ロゼリアは、王太子から「悪役令嬢」の汚名を着せられ、大勢の貴族の前で婚約を破棄される。だが彼女は動じない。前世の記憶を持つ彼女は、法的に完璧な「離婚届」を叩きつけ、自ら自由を選ぶ! 追放された先は、人々が希望を失った「灰色の谷」。しかし、そこは彼女にとって、前世の農業知識を活かせる最高の「研究室」だった。 土を耕し、水路を拓き、新たな作物を育てる彼女の姿に、心を閉ざしていた村人たちも、ぶっきらぼうな謎の青年カイも、次第に心を動かされていく。 やがて「辺境の女神」と呼ばれるようになった彼女の奇跡は、一つの領地を、そして傾きかけた王国全体の運命をも揺るがすことに。 これは、一人の気高き令嬢が、逆境を乗り越え、最高の仲間たちと新しい国を築き、かけがえのない愛を見つけるまでの、壮大な逆転成り上がりストーリー!

勇者パーティを追放された地味な器用貧乏は、 魔王軍の女騎士とスローライフを送る

ちくわ食べます
ファンタジー
勇者パーティから「地味、英雄譚の汚点」と揶揄され追放された器用貧乏な裏方の僕。 帰る場所もなく死の森を彷徨っていたところ、偶然にも重傷を負った魔王軍四天王で最強の女騎士「黒鉄剣のリューシア」と遭遇する。 敵同士のはずなのに、なぜか彼女を放っておけなくて。治療し、世話をし、一緒に暮らすことになった僕。 これは追放された男と、敗北を重ね居場所を失った女の物語。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

『レベルMAXの引退生活』 〜追放先でダラダラしていたら、いつの間にか世界最強の聖域になっていました〜

小林 れい
ファンタジー
「働いたら負け」と言って追放された最強聖女、成層圏で究極のニート生活を極める 〜神々がパシリで、寝顔が世界平和の象徴です〜 「お願いだから、私を一生寝かせておいて」 前世でブラック企業の社畜として命を削ったヒロイン・ユラリア。異世界に転生し、国を救う「聖女」として崇められるも、彼女の願いはただ一つ――「もう一歩も動きたくない」。 しかし、婚約者の第一王子からは「働かない聖女など不要だ!」と無情な婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。 「え、いいんですか? 本当に休んでいいんですね!?」 喜びに震えながら、ユラリアは人類未踏の死の荒野へと引きこもる。だが、彼女の「怠惰」を極めるための魔力は、いつしか世界の理(ことわり)さえも書き換えていった。 神龍王を巨大な「日除け」に。 料理の神を「おやつ担当の給食係」に。 妖精王を「全自動美容マシーン」に。 「面倒くさい」を原動力に開発された魔導家電や、異世界の娯楽(ゲーム)。挙句の果てには、地上を離れ、邸宅ごと空へと浮かび上がる! 地上の元婚約者が、聖女を失った王国の没落に泣きつこうとも、成層圏に住む彼女には豆粒ほどにも見えない。 神々さえもパシリにする史上最強のニート聖女が、夢の中でも二度寝を楽しむ、贅沢すぎる究極の休日が今、始まる!

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

処理中です...