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第7章:裏切りと真の敵、そして守るべき世界
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カイルが辺境に留まりながらも、王都と連絡を取り合い、新たな政策の準備を進め始めた頃、王都では不穏な空気が一層濃くなっていた。その中心にいたのは、穏やかな笑みの裏に冷酷な野心を隠す男、宰相ゲルハルトだった。
彼は魔術師ギルドを裏で操り、辺境の魔物襲撃を仕組んだ張本人だった。目的は、レイナの持つ「神獣の力」を確かめること。そして今、彼はその力を完全に我が物にするため、次なる手を打とうとしていた。
ゲルハルトは、カイルが辺境にいることを好機と捉えた。彼は自ら選んだ手練れの暗殺者たちを密かに辺境へと送り込む。「皇太子の身辺警護」という名目で。
その日、私は収穫したばかりのハーブを乾燥させるため、小屋の外で作業をしていた。カイルは少し離れた場所で、真新しい鍬を手に、私が教えた通りに畑を耕している。フェンリルは私の足元で気持ちよさそうに昼寝をしていた。
いつもの、平和な光景。
しかし、その静寂は、森の茂みから放たれた数本の矢によって、無慈悲に引き裂かれた。
「レイナ!」
いち早く危険を察知したカイルが叫ぶ。矢は一直線に、無防備な私へと向かっていた。
もう避けられない――そう覚悟した瞬間。
私の目の前に、カイルが立ちはだかっていた。
ガッ、ガッ!と鈍い音が響く。彼の背中に、二本の矢が深々と突き刺さった。
「……カイルッ!?」
信じられない光景に、私の頭は真っ白になった。カイルはうめき声を上げながらも、倒れずに私を庇うように立ち続ける。
「……ぐっ……早く、フェンリルの、後ろへ……」
その言葉と同時に、森の中から黒装束の暗殺者たちが姿を現した。彼らの狙いは、最初から私だったのだ。
「グルォォォォォ!!」
フェンリルが怒りの咆哮をあげ、その巨体で暗殺者たちに飛びかかる。しかし、相手も手練れだ。巧みにフェンリルの攻撃をかわし、数人が私とカイルに向かってくる。
「……なぜ」
私は血を流しながらも剣を構えるカイルの背中を見つめ、震える声で尋ねた。
「なぜ、私を庇ったりしたの……!?」
あなたは皇太子で、私は追放された元妃。あなたには、国を背負う未来がある。私一人の命と、あなたの命は比べ物にならないはずだ。
カイルは、苦痛に顔を歪めながらも、振り返って、力なく笑った。
「……馬鹿なことを、聞くな」
彼の剣が、襲いかかってきた暗殺者の一人を切り裂く。しかし、多勢に無勢。彼の動きは、背中の傷のせいで明らかに鈍っていた。
「お前が……お前がいる世界でないと、俺が王になっても、国を豊かにしても……何の意味も、ないだろうが……」
その言葉は、彼の心の奥底からの叫びだった。
私がいなければ、意味がない。
その一言が、私の心の硬い殻を、粉々に打ち砕いた。
今までずっと、彼を許せないでいた。冷たく突き放した彼を。でも、それは私を守るためだったと知り、それでもなお、心のどこかで彼を拒絶していた。
だけど、今。命を懸けて私を守る彼の姿と、その魂からの言葉に、私の心は激しく揺さぶられた。
「……させない」
私の口から、低い声が漏れた。
「あなたを死なせるものですか。私の……私の大切なものを、これ以上奪わせてたまるものですか!」
カイルも、フェンリルも、この農園も、全てが今の私にとってかけがえのないものだ。
私は倒れ込む寸前のカイルの体を支え、暗殺者たちを睨みつけた。
私の全身から、今まで感じたことのないほどの強大な魔力が溢れ出す。それは、怒りと、そして守りたいという強い意志に呼応して、聖域の大地そのものが脈動を始めたかのようだった。
彼は魔術師ギルドを裏で操り、辺境の魔物襲撃を仕組んだ張本人だった。目的は、レイナの持つ「神獣の力」を確かめること。そして今、彼はその力を完全に我が物にするため、次なる手を打とうとしていた。
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その日、私は収穫したばかりのハーブを乾燥させるため、小屋の外で作業をしていた。カイルは少し離れた場所で、真新しい鍬を手に、私が教えた通りに畑を耕している。フェンリルは私の足元で気持ちよさそうに昼寝をしていた。
いつもの、平和な光景。
しかし、その静寂は、森の茂みから放たれた数本の矢によって、無慈悲に引き裂かれた。
「レイナ!」
いち早く危険を察知したカイルが叫ぶ。矢は一直線に、無防備な私へと向かっていた。
もう避けられない――そう覚悟した瞬間。
私の目の前に、カイルが立ちはだかっていた。
ガッ、ガッ!と鈍い音が響く。彼の背中に、二本の矢が深々と突き刺さった。
「……カイルッ!?」
信じられない光景に、私の頭は真っ白になった。カイルはうめき声を上げながらも、倒れずに私を庇うように立ち続ける。
「……ぐっ……早く、フェンリルの、後ろへ……」
その言葉と同時に、森の中から黒装束の暗殺者たちが姿を現した。彼らの狙いは、最初から私だったのだ。
「グルォォォォォ!!」
フェンリルが怒りの咆哮をあげ、その巨体で暗殺者たちに飛びかかる。しかし、相手も手練れだ。巧みにフェンリルの攻撃をかわし、数人が私とカイルに向かってくる。
「……なぜ」
私は血を流しながらも剣を構えるカイルの背中を見つめ、震える声で尋ねた。
「なぜ、私を庇ったりしたの……!?」
あなたは皇太子で、私は追放された元妃。あなたには、国を背負う未来がある。私一人の命と、あなたの命は比べ物にならないはずだ。
カイルは、苦痛に顔を歪めながらも、振り返って、力なく笑った。
「……馬鹿なことを、聞くな」
彼の剣が、襲いかかってきた暗殺者の一人を切り裂く。しかし、多勢に無勢。彼の動きは、背中の傷のせいで明らかに鈍っていた。
「お前が……お前がいる世界でないと、俺が王になっても、国を豊かにしても……何の意味も、ないだろうが……」
その言葉は、彼の心の奥底からの叫びだった。
私がいなければ、意味がない。
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だけど、今。命を懸けて私を守る彼の姿と、その魂からの言葉に、私の心は激しく揺さぶられた。
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私は倒れ込む寸前のカイルの体を支え、暗殺者たちを睨みつけた。
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