無能と蔑まれ追放寸前の俺、実は徳川吉宗。非効率な魔法社会を江戸の知恵で改革し、最強の国家を作り上げます

黒崎隼人

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第8話『新たなる治世』

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 アース・タイタンの一件は、アークライト王国に地殻変動とでも言うべき変化をもたらした。これまで絶対的価値であった「魔力量」という指標はその輝きを失い、人々はヨシムネが説いた「理の魔法」という新たな概念に注目し始めた。
 王城に招かれたヨシムネは、国王や重臣たちの前で、アース・タイタン出現の真相を語った。無秩序な魔力乱用が、いかに土地の理を歪め、危険な存在を生み出すか。彼の言葉は多くの魔術師の耳に痛かったが、目の前で起きた事実が、その正しさを何よりも雄弁に物語っていた。

 この一件で、ギデオン・シュヴァルツは完全に失脚した。彼の家は森を汚染した責任を問われ、その権勢は大きく傾いた。何より、彼のプライドはズタズタに引き裂かれた。最強と信じた力が全く通用しなかったばかりか、災害の原因を作っていたという事実。彼は、人々の前から姿を消した。

 一方、エリアーナは、自らの意思でクラインフェルト公爵家を説得し、ヨシムネへの弟子入りを志願した。彼女は、王都の広場で、全ての人の前でヨシムネに深々と頭を下げた。
「賢者ヨシムネ様。私は、これまで魔法の力を履き違えておりました。どうか、私に真の魔法の在り方、理の道を教えてください」
 かつての誇り高きエリート令嬢の姿は、そこにはない。ただ、真理を求める一人の求道者がいるだけだった。ヨシムネは、静かにうなずき、彼女を受け入れた。

 学園長のアルフレッド・ヴァイスマンは、この好機を逃さなかった。彼は国王に進言し、王立魔法学園に新たに「理魔法学」の学部を創設することを決定。そして、その学部長としてヨシムネに白羽の矢を立てたのだ。
「ヨシムネ君。君の知識と哲学を、どうか次の世代に伝えてはくれまいか。この国が、二度と過ちを犯さぬために」
「それが、わしの成すべきことと心得ている」

 ヨシムネは、将軍としてではなく、一人の教育者として、この世界に新たな治世を築くことを決意した。
 彼の学部には、これまでのエリート主義とは無縁の、様々な生徒が集まった。魔力量は少ないが探究心旺盛な者。リントのように、特定の分野に実直な才能を持つ者。そして、エリアーナのように、これまでの価値観を捨て、新たな道を模索する者。
 彼らは派手な攻撃魔法の訓練はしない。代わりに、土壌を学び、気象を観測し、建築力学を研究した。ヨシムネの指導の下、彼らの「理の魔法」は、王国の様々な問題に応用されていった。

 干ばつに苦しむ地域には、地下水脈を利用した灌漑システムを構築した。
 魔獣の被害が絶えない村には、魔獣の生態という「理」を読み解き、彼らが嫌う音や匂いを魔力で微量に発生させる結界を設置した。
 鉱山の採掘では、岩盤の構造を読んで、最小限の力で安全に掘り進める技術を開発した。

 ヨシムネの教えは、破壊ではなく、常に創造と調和、そして効率化を目指すものだった。それは、かつて彼が江戸の町で行った「享保の改革」の精神そのものであった。
 魔法という異世界の力を得て、彼の理想は、より大きな規模で実現されようとしていた。
 王国は、確実に豊かになっていった。人々は魔力を無闇に誇示するのではなく、暮らしを良くするための知恵として、敬意をもって扱うようになった。
 魔法世界の新たな扉は、確かに、一人の異邦人によって開かれたのである。
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