追放された“呪われ令嬢”を鑑定したら【豊穣の聖女】だったので、一緒に最高のすき焼きを作って幸せになります

黒崎隼人

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番外編「初めての牛丼」

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「カイン、今日は何を作ってくれるの?」

 すき焼き村の領主邸となった、俺たちの家のキッチンで、セレスティーナがわくわくした顔で尋ねてきた。彼女と結婚して、もうすぐ一年が経つ。最近では、彼女もすっかり料理に興味を持つようになった。

「ふっふっふ。今日はな、すき焼きに並ぶ、我が故郷のソウルフード第二弾だ」

 俺はそう言って、まな板の上で玉ねぎをリズミカルに刻んでいく。
 今日のメニューは、牛丼。
 魔香牛の切り落とし肉と、セレスティーナが育てた甘みたっぷりの玉ねぎ。そして、俺が改良を重ねた特製のタレ。材料は完璧だ。

「ソウルフード?」

「ああ。民衆に愛される、魂の料理ってことさ」

 俺は鍋にタレと玉ねぎを入れて火にかけ、甘い香りが立ってきたところで、魔香牛肉を投入する。さっと火を通し、肉の色が変わったら、炊きたてのご飯の上に、たっぷりと乗せる。仕上げに、紅ショウガの代わりに、赤カブの甘酢漬けを添えれば完成だ。

「よし、できたぞ! 『異世界版・魔香牛丼』だ!」

「わあ……!」

 湯気の立つ丼を受け取ったセレスティーナは、目を輝かせた。
 醤油と出汁の香ばしい匂いが、彼女の食欲を刺激する。

「真ん中に窪みを作って、そこに卵の黄身を落とすのが、俺のおすすめの食べ方だ」

 俺が言うと、彼女はこくりと頷き、慎重に黄身を乗せた。
 黄金色の黄身が、つやつやと輝く肉の上で鎮座している。まさに、完璧なビジュアルだ。

 セレスティーナは、スプーンで肉とご飯、そして崩した黄身を一緒にすくい上げ、ぱくりと一口。
 その瞬間、彼女の頬が、きゅっと緩んだ。

「……んっ、おいしい……!」

 すき焼きが『ご馳走』なら、牛丼は『日常の幸せ』とでも言うべきか。
 甘辛いタレが染み込んだ柔らかい牛肉と、とろとろになった玉ねぎの甘みが、ご飯と完璧に絡み合う。そこに、濃厚な黄身が加わることで、味に深みとコクが生まれる。

「すき焼きとはまた違う……もっと、こう、がっつりとした美味しさね。ご飯が、いくらでも食べられそう……!」

 彼女は夢中になって、牛丼をかきこんでいる。その幸せそうな食べっぷりを見ているだけで、俺まで幸せな気分になってくる。

「だろ? 手軽に作れて、腹いっぱいになれる。これぞ、働く男のロマンだ」

「む……働く女性にもよ」

 セレスティーナは口を尖らせるが、スプーンを動かす手は止まらない。

 あっという間に丼を空にした彼女は、満足げなため息をついた。

「ごちそうさまでした。カインの故郷には、まだまだ美味しいものがあるのね」

「ああ、もちろんだ。カレー、ラーメン、トンカツ……挙げだしたらキリがないぞ」

「きゃれー? らーめん?」

 目を輝かせるセレスティーナに、俺は笑って言った。

「まあ、焦るなよ。一つずつ、ゆっくり教えてやる。俺たちの時間は、これからもずっと続くんだからな」

 キッチンに差し込む午後の日差しの中で、俺たちは顔を見合わせて笑い合った。
 次は何を作ろうか。
 彼女の笑顔を思い浮かべながら、俺のレシピノートは、これからもどんどんページが増えていくのだろう。
 この温かくて美味しい毎日が、俺にとって何よりの宝物だった。
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