無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?

黒崎隼人

文字の大きさ
5 / 23

第4話:呪われたエルフとの出会い

しおりを挟む
 商業都市ザイオンを出発し、ミモザ村へと続く街道をのんびりと歩いていた。
 春の柔らかな日差しが心地よく、鳥のさえずりが耳に優しい。
 追放されたばかりだというのに、俺の心は驚くほど晴れやかだった。
『太陽の剣』にいた頃は、常に時間に追われ、こんな風に景色を楽しむ余裕などなかった。
 これが自由か、と噛み締めていると、前方から金属がぶつかる甲高い音と、少女の悲鳴が聞こえてきた。

「きゃあっ!」
「グギギ……オンナ、ウマソウ……」

 森の中から現れたのは、醜悪な緑色の肌をしたゴブリンの群れ。
 その数、十体以上。
 そして、彼らに囲まれて必死に応戦しているのは、一人のエルフの少女だった。
 長い銀髪をポニーテールにし、緑を基調とした軽装に身を包んでいる。
 手には美しい装飾が施された弓。
 しかし、彼女の放つ矢は、ことごとく明後日の方向に飛んでいき、ゴブリンの体に当たる気配がなかった。

「くっ……なんで、当たらないの……!」

 少女は悔しそうに唇を噛む。
 本来なら、エルフの弓使いにとってゴブリンなど敵ではないはず。
 それなのに、彼女は明らかに苦戦していた。
 じりじりと追い詰められ、ついにゴブリンの一体に腕を掴まれてしまう。
 絶体絶命。その時だった。

「――そこまでだ」

 俺は少女とゴブリンたちの間に割って入る。

「グギッ? ニンゲン、ジャマスルナ!」

 ゴブリンの一体が、錆びた剣を振りかざして襲い掛かってきた。
 俺は冷静に相手を【万物鑑定】する。

【ゴブリン:筋力12、敏捷15。攻撃パターンは単純な振り下ろしのみ。右足の重心移動が甘い】

 すべてお見通しだ。
 俺は最小限の動きで攻撃をひらりとかわし、すれ違いざまに腰に差していたただのナイフで、ゴブリンの首筋を的確に切り裂いた。
 一撃で絶命した仲間の姿に、他のゴブリンたちが怯む。
 俺はその隙を逃さず、懐から取り出した魔力結晶の原石に魔力を込めた。

「光よ」

 先日のシャドウパンサー戦で使ったのと同じ、簡易的な光魔法。
 しかし、ゴブリンのような闇を好む魔物には効果てきめんだ。
 強烈な閃光にゴブリンたちは目を焼かれ、苦しみもがく。

「今です! 弓で!」

 俺の声に、エルフの少女ははっと我に返り、矢をつがえる。
 しかし、やはりその矢は狙いを大きく外れ、近くの木の幹に突き刺さった。

「だ、だめ……やっぱり……」

 仕方ない。
 俺はため息をつき、今度は足元の石ころを数個拾い上げると、怯んでいるゴブリンたちの額に、寸分違わぬ精度で投げつけた。
 ゴッ、ゴッ、と鈍い音が響き、ゴブリンたちは次々と地面に崩れ落ちていく。
 あっという間に、十数体の群れは無力化されていた。

「あ、あの……助けていただき、ありがとうございます……。私、ルナと申します」

 少女は深々と頭を下げた。
 震える声には、安堵と、自分の不甲斐なさに対する悔しさが滲んでいる。

「俺はアルノだ。怪我はないか?」
「は、はい……。でも、すみません、足手まといになってしまって……。本当なら、私一人で……」

 うつむく彼女の視線の先にある、美しい弓。
 なぜ、エルフである彼女の矢が当たらなかったのか。
 俺は、その弓に鑑定の視線を向けた。
 そして、そこに浮かび上がった文字に、思わず目を見開く。

【呪怨の弓】
【効果:装備者の命中率を著しく下げる呪いがかかっている。矢を放つたびに、狙いとは逆の方向に軌道が強制的に補正される】
【備考:古代の邪悪な魔術師によって作られた呪いの装備。見た目の美しさで装備者を欺く】

「……なるほどな」

 俺はルナに尋ねた。

「その弓、手に入れてから調子がおかしいんじゃないか?」
「えっ!? なんでそれを……。はい、そうなんです。父の形見の弓が壊れてしまって、最近これを買ったんですけど、それから全く矢が当たらなくなって……」

 やはりそうか。
 彼女は呪いの装備とは知らずに、これを使っていたのだ。

「少し、その弓を見せてくれないか?」
「は、はい……」

 ルナから弓を受け取り、俺はさらに鑑定を深める。
 ただ呪われているだけではないはずだ。
 どんな物にも、その成り立ちや解除法が隠されている。

【呪い解除条件:聖なる力を持つ『月光草』の夜露で弓全体を清めること】
【真名解放:呪いが解かれた時、この弓は本来の姿『星霜の神弓』としての力を取り戻す】

「……!」

 衝撃の事実。
 これはただの呪われた弓ではなかった。
 本来は、とてつもない力を秘めた伝説級の武器だったのだ。
 俺は顔を上げ、不安そうにこちらを見つめるルナに、にっこりと微笑みかけた。

「大丈夫だ。その呪い、俺が解いてやる」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

処理中です...