無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?

黒崎隼人

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第12話:暴かれる陰謀

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 傭兵エリザとしてミモザ村に滞在を始めた彼女は、アルノ・アードラーという男を注意深く観察し続けた。
 彼は、村人一人ひとりの名前と顔を覚え、家族構成まで把握していた。
 畑仕事に精を出し、子供たちと遊び、老人たちの話し相手になる。
 村の統治者というよりは、まるで大きな家族の長男のようだった。
 しかし、その一方で、彼が時折見せる判断は、常人のそれとは一線を画していた。

「ここの水路は、あと三日で補強しないと大雨で決壊する可能性がある。土の水分量から予測できる」
「フィーの一族が持ってきた薬草、あれはうちの畑の隅に植えるといい。土の栄養素が絶妙にマッチして、薬効が三倍になる」
「新しく建てる温泉宿は、あの丘の上が最適だ。冬至の日の出が一番美しく見える。それが最高の売りになる」

 彼の言葉は、まるで未来予知のようだった。
 そして、その予言はことごとく的中した。
 エリザは、彼のその不可解な能力の正体に思い至る。
(……まさか、鑑定スキル? いや、ただの鑑定でここまでのことがわかるはずがない。彼のスキルは、何か特別なもの……規格外の能力を持つ傑物。それが、このアルノ・アードラーという男の正体か)
 接するうちに、エリザはアルノの誠実な人柄と、底知れない能力に、畏敬と、そしてかすかな興味を抱き始めていた。

 時を同じくして、ミモザ村の急成長が生み出す莫大な利益に、邪な目を向ける者たちがいた。
 この地を管轄する代官、バルトロ。
 そして、彼と裏で手を組む悪徳商会『黒蛇商会』の会頭、モーガンだ。

「代官様、あのミモザ村の利権、いつまであの若造に好きにさせておくのですか」
「うむ……。温泉とゴールデンポテトは、我々のものとすれば莫大な富を生む。そろそろ、潮時かもしれんな」

 彼らは、ミモザ村を合法的に乗っ取るための計画を練っていた。
 村に些細なことで難癖をつけ、多額の賠償金を要求する。
 払えなければ、村の土地と利権をすべて差し押さえる、という古典的だが確実な手口だ。

 その密談が、代官の屋敷で行われているまさにその時。
 ミモザ村の自宅で、アルノは静かに目を開けていた。

「……なるほど、そういう魂胆か」

 彼の【万物鑑定】は、もはや遠隔地の人物の思考や会話内容すら、断片的に読み取れるようになっていた。
 代官バルトロと商会主モーガンの企みは、すべて俺の耳に筒抜けだったのだ。

【対象:代官バルトロ】
【ステータス:悪巧みLv5、収賄Lv8】
【表層思考:『黒蛇商会』と組み、ミモザ村の利権を奪い取る計画を進行中。三日後、騎士を引き連れて村に乗り込み、不当な税の徴収を強行する予定】
【弱点:賭け事が好きで多額の借金あり。その証拠の借用書は、モーガンが握っている】

【対象:商会主モーガン】
【ステータス:狡猾Lv7、詐欺Lv6】
【表層思考:代官を利用して村を乗っ取り、最終的には代官も失脚させてこの地を完全に支配するつもり】
【弱点:密輸品の取引帳簿を、自らの屋敷の隠し金庫に保管している。金庫の解除番号は……】

 彼らの陰謀、弱点、そして計画の全貌。
 すべてが、俺の手の内にあった。

「ふっ……ご苦労なことだ」

 俺は立ち上がり、書斎で何やら難しい顔をして村の法律書を読んでいたエリザに声をかけた。

「エリザ、ちょっと相談があるんだが」
「なんだ?」
「三日後、代官が役人たちを連れて村にやってくる。面倒なことになりそうだ。君の知恵を貸してほしい」

 俺の言葉に、エリザは驚いた顔をした。

「なぜ、それを知っている?」
「俺にはわかるんだ。……それよりも、最高の逆転劇の脚本を、一緒に考えてくれないか?」

 俺はにやりと笑った。
 エリザは、俺のその自信に満ちた表情を見て、ふっと口元を緩めた。
 彼女のクールな仮面が、ほんの少しだけ剥がれた瞬間だった。

「面白い。乗ってやろう。その代わり、あんたの力の秘密、少しは教えてもらうぞ」
「交渉成立だ」

 二人の傑物の共闘が、静かに始まった。
 悪党たちが、この楽園に足を踏み入れる三日後。
 彼らを待ち受けているのは、完膚なきまでの破滅のシナリオだった。
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