15 / 23
第14話:ざまぁ、そして墜ちた英雄
しおりを挟む
『太陽の剣』の凋落は、誰の目にも明らかだった。
度重なるクエストの失敗。
ダンジョン攻略中に仲間割れを起こし、命からがら逃げ帰ってくることもしばしば。
ギルド内での彼らを見る目は、かつての尊敬から、今や侮蔑と憐みに変わっていた。
Sランクの称号も、もはや風前の灯火。
彼らは起死回生を狙い、無謀にも高難易度として知られるドラゴンゾンビの討伐クエストに挑んだ。
「レイド! 後ろ!」
「うるさい! わかっている!」
戦場には、怒号と悲鳴が飛び交っていた。
しかし、それはかつてのような、勝利への咆哮ではない。
焦りと不信が渦巻く、不協和音だった。
レイドは自慢の聖剣を構え、ドラゴンゾンビに斬りかかる。
しかし、
――キンッ!
甲高い音を立て、聖剣はドラゴンゾンビの腐った骨に弾かれた。
聖剣が放つ神聖な輝きは、以前よりも明らかに弱々しくなっていた。
「なっ……なぜだ!? 俺の聖剣が……!」
レイドが愕然とする。
アルノによる日々のメンテナンスを失った聖剣は、その本来の力を発揮できなくなっていたのだ。
それはまるで、主であるレイドたちの現状を象徴しているかのようだった。
その一瞬の隙が、命取りとなった。
ドラゴンゾンビが吐き出した猛毒のブレスが、パーティを直撃する。
「ぐわああああっ!」
「きゃあああっ!」
聖女セラフィナの張った防御結界は、アルノが選んだ触媒がないため威力が足りず、いとも簡単に打ち破られた。
賢者グレンも詠唱が間に合わず、吹き飛ばされる。
パーティは半壊。
クエストはもちろん失敗。
命があっただけ、幸運だった。
ギルドに戻った彼らを待っていたのは、ギルドマスターからの非情な通告だった。
「――以上を以て、本日付でパーティ『太陽の剣』のSランク認定を取り消す。Aランクへの降格を命ずる」
「そ、そんな……!」
レイドが絶句する。
ギルド最強の証であったSランクの称号。
それが、自分たちの手から滑り落ちていく。
「不服か? ならば問うが、貴様たちがアルノ・アードラーを追放して以降、成し遂げた成果は何かあるか? 失敗、仲間割れ、そして今回の醜態。これ以上、ギルドの看板に泥を塗るのはやめてもらいたい」
ギルドマスターの言葉は、正論だった。
ぐうの音も出ない。
彼らは、ようやく気づいた。
気づかされてしまった。
失ったものが、ただの「ゴミスキル」を持つ鑑定士ではなかったことに。
罠を避け、敵の弱点を的確に見抜き、装備を最高の状態に保ち、魔法の効果を最大限に引き出す。
アルノの存在こそが、このパーティの生命線そのものであったのだと。
自分たちがSランクでいられたのは、自分たちの力が優れていたからではない。
アルノという、最高のサポーターがいてくれたからなのだと。
「……アルノは、今頃どうしているんだ」
誰かが、ぽつりと呟いた。
その名前は、もはや彼らにとって禁句のようになっていた。
すると、ギルドの掲示板を見ていた他の冒険者が、噂話をするのが聞こえてきた。
「おい、聞いたか? 最近話題の『辺境の楽園』ミモザ村の話だよ」
「ああ、知ってるぜ! どんな病も治す温泉と、黄金の芋で大儲けしてるらしいな! なんでも、その村を作り上げたのが、アルノって名前の若い男らしいぞ!」
「え!? あのアルノって、まさか元『太陽の剣』の……?」
その会話を聞いた瞬間、レイドたちの顔から表情が消えた。
自分たちが追放した男が、自分たちが転落していく一方で、楽園を築き、英雄として讃えられている。
その事実は、どんな強力な魔法よりも、彼らの心を深く、深く抉った。
後悔するには、あまりにも遅すぎた。
彼らの栄光の時代は、完全に終わりを告げたのだ。
度重なるクエストの失敗。
ダンジョン攻略中に仲間割れを起こし、命からがら逃げ帰ってくることもしばしば。
ギルド内での彼らを見る目は、かつての尊敬から、今や侮蔑と憐みに変わっていた。
Sランクの称号も、もはや風前の灯火。
彼らは起死回生を狙い、無謀にも高難易度として知られるドラゴンゾンビの討伐クエストに挑んだ。
「レイド! 後ろ!」
「うるさい! わかっている!」
戦場には、怒号と悲鳴が飛び交っていた。
しかし、それはかつてのような、勝利への咆哮ではない。
焦りと不信が渦巻く、不協和音だった。
レイドは自慢の聖剣を構え、ドラゴンゾンビに斬りかかる。
しかし、
――キンッ!
甲高い音を立て、聖剣はドラゴンゾンビの腐った骨に弾かれた。
聖剣が放つ神聖な輝きは、以前よりも明らかに弱々しくなっていた。
「なっ……なぜだ!? 俺の聖剣が……!」
レイドが愕然とする。
アルノによる日々のメンテナンスを失った聖剣は、その本来の力を発揮できなくなっていたのだ。
それはまるで、主であるレイドたちの現状を象徴しているかのようだった。
その一瞬の隙が、命取りとなった。
ドラゴンゾンビが吐き出した猛毒のブレスが、パーティを直撃する。
「ぐわああああっ!」
「きゃあああっ!」
聖女セラフィナの張った防御結界は、アルノが選んだ触媒がないため威力が足りず、いとも簡単に打ち破られた。
賢者グレンも詠唱が間に合わず、吹き飛ばされる。
パーティは半壊。
クエストはもちろん失敗。
命があっただけ、幸運だった。
ギルドに戻った彼らを待っていたのは、ギルドマスターからの非情な通告だった。
「――以上を以て、本日付でパーティ『太陽の剣』のSランク認定を取り消す。Aランクへの降格を命ずる」
「そ、そんな……!」
レイドが絶句する。
ギルド最強の証であったSランクの称号。
それが、自分たちの手から滑り落ちていく。
「不服か? ならば問うが、貴様たちがアルノ・アードラーを追放して以降、成し遂げた成果は何かあるか? 失敗、仲間割れ、そして今回の醜態。これ以上、ギルドの看板に泥を塗るのはやめてもらいたい」
ギルドマスターの言葉は、正論だった。
ぐうの音も出ない。
彼らは、ようやく気づいた。
気づかされてしまった。
失ったものが、ただの「ゴミスキル」を持つ鑑定士ではなかったことに。
罠を避け、敵の弱点を的確に見抜き、装備を最高の状態に保ち、魔法の効果を最大限に引き出す。
アルノの存在こそが、このパーティの生命線そのものであったのだと。
自分たちがSランクでいられたのは、自分たちの力が優れていたからではない。
アルノという、最高のサポーターがいてくれたからなのだと。
「……アルノは、今頃どうしているんだ」
誰かが、ぽつりと呟いた。
その名前は、もはや彼らにとって禁句のようになっていた。
すると、ギルドの掲示板を見ていた他の冒険者が、噂話をするのが聞こえてきた。
「おい、聞いたか? 最近話題の『辺境の楽園』ミモザ村の話だよ」
「ああ、知ってるぜ! どんな病も治す温泉と、黄金の芋で大儲けしてるらしいな! なんでも、その村を作り上げたのが、アルノって名前の若い男らしいぞ!」
「え!? あのアルノって、まさか元『太陽の剣』の……?」
その会話を聞いた瞬間、レイドたちの顔から表情が消えた。
自分たちが追放した男が、自分たちが転落していく一方で、楽園を築き、英雄として讃えられている。
その事実は、どんな強力な魔法よりも、彼らの心を深く、深く抉った。
後悔するには、あまりにも遅すぎた。
彼らの栄光の時代は、完全に終わりを告げたのだ。
82
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる