17 / 21
第16章:二つの国の夜明け
しおりを挟む
戦争は、「テラ・ノヴァ」の完全な勝利で幕を閉じた。しかし、リーゼリットの心に、勝者としての高ぶりはなかった。彼女が見据えていたのは、戦いの後、二つの国をどう導いていくかという、遥かに困難な道筋だった。
リリアーナは、その罪状――国家反逆罪、王族に対する殺人未遂、そして禁断魔法の使用――により捕らえられ、アルカディア王国の法の下で、正当な裁きを受けることになった。彼女は最後まで自らの正当性を叫び続けたが、その声に耳を貸す者は、もはや誰もいなかった。
エドワード王子は、自ら王位継承権の放棄を宣言した。そして、衰弱した国王に代わり、両国の和平交渉の席に、アルカディア王国側の代表としてついた。彼の態度は、以前の傲慢さが嘘のように、真摯で謙虚なものだった。
「テラ・ノヴァ女王、リーゼリット殿。この度の戦における、我が国の非礼を、心より謝罪する。どのような賠償にも応じるつもりだ」
和平交渉の場で、エドワードは深く頭を下げた。
しかし、リーゼリットは静かに首を振った。
「賠償は必要ありません。私が望むのは、お金や領土ではなく、未来です」
彼女は、驚くエドワードに向かって、自らの構想を語った。
「テラ・ノヴァとアルカディア王国は、新たな友好条約を結び、互いの主権を尊重し、対等なパートナーとして、共に発展の道を歩むのです。私たちの持つ農業技術と、あなた方の持つ工業技術を交換し、文化交流を深め、二度とこのような悲劇を繰り返さない、恒久的な平和を築きましょう」
それは、敗戦国に対する要求としては、あまりにも寛大で、未来志向な提案だった。エドワードは、リーゼリットの器の大きさに、改めて打ちのめされた。彼女は、もはや自分が知っている公爵令嬢ではなく、大陸の未来を見据える、偉大な女王となっていた。
「……ありがたい。その提案、謹んでお受けする」
エドワードは、涙をこらえながら答えた。
こうして、二つの国の間に、新たな歴史の幕が開かれた。
テラ・ノヴァでは、リーゼリットの指導の下、戦後復興が急ピッチで進められた。レオンとセシリアは、それぞれ軍事と内政の責任者として、新国家の安定に尽力した。ジョージ爺さんとエルザは、アルカディア王国から派遣されてきた農業研修生たちに、テラ・ノヴァの進んだ農業技術を惜しみなく教えた。
そして、カイルは、常にリーゼリットの傍らにいた。女王としての公務に追われる彼女を、公私にわたって支え続けた。
ある晴れた日、復興が進む街を見下ろす丘の上で、リーゼリットはカイルと二人きりで立っていた。
「全てが、夢のようだわ。私がこの谷に来た日には、こんな未来、想像もできなかった」
「お前が、それを現実に変えたんだ」
カイルは、リーゼリットの肩を優しく抱き寄せた。
「俺は、お前が女王として成し遂げたことを、誇りに思う。だが、それ以上に、リーゼ、お前という一人の女性を、愛している」
それは、彼が初めて口にした、はっきりとした愛の言葉だった。
リーゼリットは、驚きに目を見開いた後、幸せそうに微笑んで、カイルの胸に顔をうずめた。
「私もよ、カイル。私も、あなたを愛してる。私の、たった一人のヒーロー」
二人は、どちらからともなく唇を重ねた。それは、幾多の困難を共に乗り越えてきた二人の、魂の結びつきを確かめるような、優しく、そして深い口づけだった。
後日、テラ・ノヴァの初代女王リーゼリットは、国民の誰もが敬愛する英雄、カイル・ウッドを夫として、王配に迎えることを発表した。その知らせに、国中が祝福の歓声に包まれた。
追放された悪役令嬢は、絶望の淵から立ち上がり、荒れ地を楽園に変え、仲間たちと共に国を築き、そして、かけがえのない愛を手に入れた。彼女の物語は、まだ始まったばかり。テラ・ノヴァとアルカディア王国、二つの国の夜明けは、希望の光に満ち溢れていた。
リリアーナは、その罪状――国家反逆罪、王族に対する殺人未遂、そして禁断魔法の使用――により捕らえられ、アルカディア王国の法の下で、正当な裁きを受けることになった。彼女は最後まで自らの正当性を叫び続けたが、その声に耳を貸す者は、もはや誰もいなかった。
エドワード王子は、自ら王位継承権の放棄を宣言した。そして、衰弱した国王に代わり、両国の和平交渉の席に、アルカディア王国側の代表としてついた。彼の態度は、以前の傲慢さが嘘のように、真摯で謙虚なものだった。
「テラ・ノヴァ女王、リーゼリット殿。この度の戦における、我が国の非礼を、心より謝罪する。どのような賠償にも応じるつもりだ」
和平交渉の場で、エドワードは深く頭を下げた。
しかし、リーゼリットは静かに首を振った。
「賠償は必要ありません。私が望むのは、お金や領土ではなく、未来です」
彼女は、驚くエドワードに向かって、自らの構想を語った。
「テラ・ノヴァとアルカディア王国は、新たな友好条約を結び、互いの主権を尊重し、対等なパートナーとして、共に発展の道を歩むのです。私たちの持つ農業技術と、あなた方の持つ工業技術を交換し、文化交流を深め、二度とこのような悲劇を繰り返さない、恒久的な平和を築きましょう」
それは、敗戦国に対する要求としては、あまりにも寛大で、未来志向な提案だった。エドワードは、リーゼリットの器の大きさに、改めて打ちのめされた。彼女は、もはや自分が知っている公爵令嬢ではなく、大陸の未来を見据える、偉大な女王となっていた。
「……ありがたい。その提案、謹んでお受けする」
エドワードは、涙をこらえながら答えた。
こうして、二つの国の間に、新たな歴史の幕が開かれた。
テラ・ノヴァでは、リーゼリットの指導の下、戦後復興が急ピッチで進められた。レオンとセシリアは、それぞれ軍事と内政の責任者として、新国家の安定に尽力した。ジョージ爺さんとエルザは、アルカディア王国から派遣されてきた農業研修生たちに、テラ・ノヴァの進んだ農業技術を惜しみなく教えた。
そして、カイルは、常にリーゼリットの傍らにいた。女王としての公務に追われる彼女を、公私にわたって支え続けた。
ある晴れた日、復興が進む街を見下ろす丘の上で、リーゼリットはカイルと二人きりで立っていた。
「全てが、夢のようだわ。私がこの谷に来た日には、こんな未来、想像もできなかった」
「お前が、それを現実に変えたんだ」
カイルは、リーゼリットの肩を優しく抱き寄せた。
「俺は、お前が女王として成し遂げたことを、誇りに思う。だが、それ以上に、リーゼ、お前という一人の女性を、愛している」
それは、彼が初めて口にした、はっきりとした愛の言葉だった。
リーゼリットは、驚きに目を見開いた後、幸せそうに微笑んで、カイルの胸に顔をうずめた。
「私もよ、カイル。私も、あなたを愛してる。私の、たった一人のヒーロー」
二人は、どちらからともなく唇を重ねた。それは、幾多の困難を共に乗り越えてきた二人の、魂の結びつきを確かめるような、優しく、そして深い口づけだった。
後日、テラ・ノヴァの初代女王リーゼリットは、国民の誰もが敬愛する英雄、カイル・ウッドを夫として、王配に迎えることを発表した。その知らせに、国中が祝福の歓声に包まれた。
追放された悪役令嬢は、絶望の淵から立ち上がり、荒れ地を楽園に変え、仲間たちと共に国を築き、そして、かけがえのない愛を手に入れた。彼女の物語は、まだ始まったばかり。テラ・ノヴァとアルカディア王国、二つの国の夜明けは、希望の光に満ち溢れていた。
127
あなたにおすすめの小説
醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした
きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。
顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。
しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——
騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました
藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、
騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。
だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、
騎士団の解体と婚約破棄。
理由はただ一つ――
「武力を持つ者は危険だから」。
平和ボケした王子は、
非力で可愛い令嬢を侍らせ、
彼女を“国の火種”として国外追放する。
しかし王国が攻められなかった本当の理由は、
騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。
追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、
軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。
――そして一週間後。
守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。
これは、
「守る力」を理解しなかった国の末路と、
追放された騎士団長令嬢のその後の物語。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです
有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」
そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。
社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。
そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。
過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。
そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。
「君が隣にいない宮廷は退屈だ」
これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。
【読切短編】婚約破棄された令嬢ですが、帳簿があれば辺境でも無双できます ~追い出した公爵家は、私がいないと破産するらしい~
Lihito
ファンタジー
公爵令嬢アイリスは、身に覚えのない罪で婚約破棄され、辺境へ追放された。
だが彼女には秘密がある。
前世は経理OL。そして今世では、物や土地の「価値」が数字で見える能力を持っていた。
公爵家の帳簿を一手に管理していたのは、実は彼女。
追い出した側は、それを知らない。
「三ヶ月で破産すると思うけど……まあ、私には関係ないわね」
荒れ果てた辺境領。誰も気づかなかった資源。無口な護衛騎士。
アイリスは数字を武器に、この土地を立て直すことを決意する。
これは、一人の令嬢が「価値」を証明する物語。
——追い出したこと、後悔させてあげる。
トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……
王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる