役立たずと村を追い出された俺が、現代の農業知識を駆使して砂漠を緑に変え、伝説の聖女に溺愛されながら世界一の食料大国を作るまで

黒崎隼人

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第5話「領主謁見と、新たな壁」

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 数日後、俺はギルマスさんとリナさんと共に、領主であるバルトラン辺境伯の館を訪れていた。徴税官のゴーンは、苦々しい顔で俺たちを案内している。
 通された謁見の間は、村の家とは比べ物にならないほど豪華だった。きらびやかな装飾に気圧されていると、奥の玉座から、威厳のある男性が立ち上がった。彼がバルトラン辺境伯、その人だった。
「お前が、ミスト村に現れたという奇妙な男か」
 辺境伯は鋭い目で俺を射抜く。その圧力に、足がすくみそうになった。
「はい。藤堂拓海と申します」
 俺は精一杯の虚勢を張り、胸を張った。
「ゴーンから報告は受けている。ミスト村の収穫量を三倍にしたそうだな。にわかには信じがたい話だが……。お前は一体、何者だ?」
「ただの農民です。少し、他の人とは違う知識を持っているだけの」
 俺は単刀直入に本題に入った。重税で村が苦しんでいること、そして、自分たちの技術がこの領地全体の富に繋がることを力説した。
 話の途中、辺境伯は眉をひそめ、ゴーンはあからさまに嘲笑していた。だが、俺が懐から取り出した『それ』を見た瞬間、部屋の空気が変わった。
「これは……なんだ?干しただけの果物か?」
 辺境伯が訝しげに手に取ったのは、俺が試作した「干し芋」と「ジャム」だった。
「食べてみてください。ただの保存食ではありません」
 辺境伯は恐る恐る干し芋を口に運び、その瞬間、目を見開いた。
「……甘い!なんだこの凝縮された甘みは!それに、こちらの赤い方は……パンにつけて食べると、これまた絶品だ!」
 ジャムを塗ったパンを頬張り、辺境伯は感動の声を上げる。
「これは、単なる食料ではない。付加価値の高い『商品』だ。これを他の街で売れば、どれだけの利益になるか……!」
 俺は続けた。
「俺の知識を使えば、このような加工品を大量に作ることができます。さらに、二年、三年と計画的に土壌を改良していけば、収穫量は今の五倍、いや十倍にだってなります。そうなれば、領地全体の食糧問題は解決し、交易によって莫大な富がもたらされるでしょう。税を搾り取ることだけが、富を得る方法ではないはずです」
 俺の言葉に、辺境伯は深く考え込んでいた。やがて、彼は一つの決断を下す。
「……面白い。タクミ、お前の力を試させてもらう。ミスト村の税は例年通りに戻そう。その代わり、お前にはこの領地全体の農業指導官になってもらう。もし、一年以内に領地全体の収穫量を1.5倍にできたら、お前を正式に取り立て、相応の褒美を与えよう。だが、できなければ……どうなるか、わかるな?」
 それはあまりに大きな賭けだった。だが、ここで引くわけにはいかない。
「お受けします。必ず、ご期待に応えてみせます」
 こうして、俺はミスト村の救世主から、一気に領地全体の農業を背負う立場になった。
 しかし、新たな壁がすぐに立ちはだかった。
 領主のお墨付きを得たとはいえ、他の村々の反応は冷ややかだった。ミスト村の成功はただの噂話としか思われておらず、よそ者である俺の指導に反発する者も少なくない。
「どこの馬の骨とも知れん若造の言うことなど聞けるか!」
「俺たちには、先祖代々伝わってきたやり方があるんだ!」
 さらに、俺の台頭を快く思わない者たちからの妨害も始まった。特に徴税官のゴーンは、俺の計画を潰そうと、裏で様々な嫌がらせをしてきた。彼にとって、俺の成功は自分の無能さを証明するようなものなのだ。
 思うように進まない計画、村人たちの非協力的な態度、そして既得権益にしがみつく者たちの妨害。
 ミスト村で得た小さな成功体験は、あっけなく打ち砕かれた。領地全体を変えるということは、一つの村を変えることとはわけが違う。人間の嫉妬や偏見という、最も厄介な壁が、俺の前にそびえ立っていた。
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