役立たずと村を追い出された俺が、現代の農業知識を駆使して砂漠を緑に変え、伝説の聖女に溺愛されながら世界一の食料大国を作るまで

黒崎隼人

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第7話「逆転の収穫と、悪党の末路」

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 季節は秋。領地中の誰もが、固唾を飲んで収穫の時を待っていた。
 干ばつの影響は深刻で、麦などの主要な作物の収穫量は、例年の半分以下に落ち込むことが予想された。領内には、重苦しい空気が漂っていた。
 だが、俺は確信していた。俺たちの戦いは、まだ終わっていない。
 収穫の日。辺境伯が直々に視察に訪れる中、人々は祈るような気持ちで畑に入った。そして、土を掘り返した瞬間、あちこちから驚きの声が上がった。
「な、なんだこれは!?」
「芋が……芋がこんなにたくさん!」
 土の中から現れたのは、大きく、丸々と太ったカラカラ芋だった。一つの株から、五つも六つも、ずっしりと重い芋が連なって出てくる。
 俺が指導した、深く耕し、畝を高くする栽培法。そして、ポチの不思議な力が、厳しい干ばつの中でも、カラカラ芋をたくましく育て上げていたのだ。
 結果、カラカラ芋の収穫量は、予想をはるかに上回るものとなった。麦の不作を補って余りある、まさに奇跡的な大豊作だった。
「おお……!信じられん……!」
 辺境伯は、山のように積まれたカラカラ芋を前に、言葉を失っていた。
 領民たちは、歓喜の声を上げて抱き合った。これで、今年も冬が越せる。飢えずに済む。皆の顔には、安堵の涙と笑顔が溢れていた。
 この歴史的な大豊作は、領民たちの食料を確保しただけではなかった。
 俺はすぐさま、カラカラ芋を使った新しい加工品の開発に取り掛かった。デンプンを取り出して、麺やパンを作る。乾燥させて、長期保存可能なチップスにする。そして、アルコール発酵させて、蒸留酒を造る。
 特に、この世界で初めて造られた芋焼酎は、その芳醇な香りと味わいで、視察に来ていた商人たちを驚かせた。
「こ、この酒は……!高く売れますぞ!」
 商人たちは目の色を変え、こぞって取引を申し込んできた。カラカラ芋は、単なる食料から、領地に莫大な富をもたらす「金のなる木」へと変わったのだ。
 辺境伯との約束、「一年以内に領地全体の収穫量を1.5倍にする」。正確に言えば、作物の総重量という点では、それをはるかに上回る結果を叩き出した。付加価値で言えば、もはや計測不能なほどの成果だ。
 俺の勝利が確定した瞬間だった。
 そして、それは同時に、ある男の破滅をも意味していた。
「ゴーンを捕らえよ!」
 辺境伯の厳かな声が響き渡る。兵士たちが、青ざめて震える徴税官ゴーンを取り押さえた。ため池建設の妨害工作、資材の横領、そして辺境伯への虚偽の報告。彼の悪事は、俺に協力した村人たちの証言によって、全て明るみに出ていた。
「わ、私は……辺境伯様のために……!」
 見苦しい言い訳も、もはや誰の耳にも届かない。
「貴様の私利私欲が、この領地を滅ぼしかけたのだ。その罪、万死に値する」
 辺境伯の冷たい声が、ゴーンの運命を決定づけた。彼は全ての地位を剥奪され、鉱山での強制労働に送られることになった。自業自得の末路だった。
 領民たちは、悪党の失脚に歓声を上げた。そして、その視線は、静かにその光景を見つめる一人の若者に注がれる。
 俺は、この領地の英雄になった。
 だが、そんな大げさな称号は、どうにも居心地が悪かった。俺がやったことと言えば、知っていることを教え、皆と一緒に汗を流しただけだ。
「タクミさん!」
 リナさんが、満面の笑みで駆け寄ってくる。その手には、ふかしたてのカラカラ芋が握られていた。
「ほら、食べてください!今年の一番美味しいところです!」
 湯気の立つ芋を頬張る。蜜のように甘く、ほくほくとした食感が口の中に広がった。
 それは、今まで食べたどんなごちそうよりも、美味しく感じられた。
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