追放された筆頭行政官は、スラムから『選挙』で国を乗っ取ることにした~言葉と民意の魔法契約で、腐敗貴族を合法的にざまぁします~

黒崎隼人

文字の大きさ
11 / 16

第10話「真実の涙」

しおりを挟む
 決戦前夜。

 王都の大広場で、改革党の最終演説が行われることになった。

 ダグラス側も同刻に別の広場で集会を開いているが、アレンたちの元には予想を遥かに超える数の人々が集まっていた。松明の明かりが星空のように広場を埋め尽くしている。

 アレンは舞台裏で、最終調整を行っていた。

 今回はただの演説ではない。ある「仕掛け」を用意していた。

 それは、エリスの父、ベルンシュタイン公爵が遺した日記だ。

 アレンが独自の情報網を駆使して探し出したものだ。王宮の押収品倉庫の奥底に眠っていたそれを、怪盗のような手口で回収してきた。

「エリス。これを」

 アレンが古びた手帳を渡すと、エリスは目を見開いた。

「これは……父様の日記?」

「ああ。君への手紙も挟んである。これを皆の前で読んでほしい」

 エリスは震える手でページをめくった。そこには、公爵の筆跡で、国を憂い、娘を愛する言葉が綴られていた。ダグラスの陰謀に気づきながらも、家族を守るためにあえて自らを犠牲にしようとした苦悩も。

「……父様……っ」

 エリスが嗚咽を漏らす。

「辛いかもしれないが、これが最強の武器になる。君の涙と、父上の真実の言葉。これに勝るものはない」

 アレンは非情な策士として振る舞ったが、その目は優しかった。

 演壇に上がったエリスは、神々しいほどに美しかった。

 彼女はマイクの前に立ち、日記を広げた。

「皆さん、聞いてください。これは、売国奴と呼ばれた父が、最期に残した言葉です」

 彼女が読み上げる一言一言が、静まり返った広場に染み渡る。

『愛するエリスへ。私が罪を背負うことで、お前たちが生き延びられるなら、喜んでこの首を捧げよう』

『この国は病んでいる。だが、民は悪くない。いつか誰かが、この闇を晴らしてくれると信じている』

『エリス、強く生きろ。誇りを失うな。お前は私の自慢の娘だ』

 読み終えた時、エリスの頬は涙で濡れていた。

 会場のあちこちから、すすり泣く声が聞こえた。

 もはや疑う者はいなかった。

 あんな温かい言葉を残す人間が、国を売るはずがない。

 ダグラスのついた嘘は、完全に暴かれた。

 その時、空が輝いた。

 エリスの涙に呼応するかのように、王城の尖塔にある巨大な魔石が、淡い光を放ち始めたのだ。

 『建国の契約』が反応している。

 民衆の感情、共感、そして「真実を求める意志」が一定量を超え、システムが起動準備に入ったのだ。

「見ろ!城が光っている!」

「建国様の奇跡だ!」

 アレンは好機を逃さなかった。

 彼はエリスの隣に立ち、拳を突き上げた。

「契約は成った!民の意志は示された!明日の投票は、単なる紙切れを入れる作業ではない!この国を、我々の手に取り戻す聖なる儀式だ!」

 オオオオオオッ!!

 地鳴りのような歓声が夜空を震わせた。

 それはダグラスがいる王宮の奥深くまで届き、彼の眠りを妨げたに違いない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

腹黒薬師は復讐するために生きている

怜來
ファンタジー
シャルバリー王国に一人の少女がいた。 カナリヤ・ハルデリス カナリヤは小さい頃から頭が冴えていた。好奇心旺盛でよく森に行き変な植物などを混ぜたりするのが好きだった。 そんなある日シャルバリー王国に謎の病が発生した。誰一人その病を治すことができなかった中カナリヤがなんと病を治した。 国王に気に入れられたカナリヤであったが異世界からやってきた女の子マリヤは魔法が使えどんな病気でも一瞬で治してしまった。 それからカナリヤはある事により国外追放されることに… しかしカナリヤは計算済み。カナリヤがしようとしていることは何なのか… 壮絶な過去から始まったカナリヤの復讐劇 平和な国にも裏があることを皆知らない ☆誤字脱字多いです ☆内容はガバガバです ☆日本語がおかしくなっているところがあるかもしれません

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

崖からポイ捨てされた不運令嬢ですが、銀髪イケメン竜王に『最愛の伴侶』としてスカウトされました!

阿里
恋愛
不作も天災も、全部わたしのせい!? 「不運な女」と虐げられ、生贄として崖から捨てられたわたし、ミラ。 でも、落ちた先で待っていたのは、まぶしいほど綺麗な銀髪の竜王・アルベルト様でした! 「君がいたから、この国は守られていたんだよ」 えっ、わたしって実はすごい聖女だったの!? 竜宮城で贅沢三昧&溺愛生活スタート! そんな中、わたしを捨てて大ピンチになった元婚約者が「ミラ、戻ってきて!」と泣きついてきて……。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

追放された私が辺境で見つけたのは、呪われた王太子(本物)でした

er
ファンタジー
魔力微弱を理由に王太子クラウスから婚約破棄され、辺境へ追放されたエステル。絶望の中、寡黙な薬師レオンに救われ、薬草園で働き始める。彼の優しさに触れ、才能を認められるうちに、エステルは失った自信と新しい幸せを取り戻していく。やがて二人は結婚し、穏やかな日々を送るが、三年後、「本物の王太子」を名乗る男が現れて……。

追放された令嬢、辺境の小国で自由に生きる

腐ったバナナ
ファンタジー
宮廷で「役立たず」と烙印を押され、突如として追放された令嬢リディア。 辺境の小国の荒れた城跡で、誰の干渉もない自由な生活を始める。 孤独で不安な日々から始まったが、村人や兵士たちとの触れ合いを通して信頼を築き、少しずつ自分の居場所を見つけていく。 やがて宮廷ではリディア不在の混乱が広がり、かつての元婚約者や取り巻き令嬢たちが焦る中、リディアは静かに、しかし確実に自身の価値と幸せを取り戻していく――。

処理中です...