無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!

黒崎隼人

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第9章:王都での試練と無自覚な国家改革

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 王女アイリスの宣言通り、翌日から俺に対する「試練」が始まった。仕掛けてくるのは、俺の台頭を快く思わない、古い考えの貴族たちだ。
 最初の試練は、騎士団との模擬試合だった。
「田舎の冒険者ごときに、我が騎士団が後れを取るものか!」
 騎士団長は、自信満々で俺の前に立ちはだかった。観覧席には、アイリス王女や貴族たちがずらりと並んでいる。
「手加減してくださいね。俺、素人なんで」
 俺がそう言うと、騎士団長は鼻で笑った。
「面白い冗談を。いくぞ!」
 騎士団長は、神速の突きを繰り出してきた。素人目にも分かる、達人の一撃だ。
「おっと」
 俺はそれを、ひょいと首を傾けて避けた。そして、反撃のつもりはなかったのだが、バランスを崩した彼の肩を、ポン、と軽く叩いて支えてあげようとした。
「危ないですよ」
 ゴシャッ!という鈍い音と共に、騎士団長の立派な鎧は粉々に砕け散り、彼は白目を剥いてその場に崩れ落ちた。
 しーん……。
 王都の練兵場が、静寂に包まれる。
「あ、あれ?すみません!なんか、鎧が脆かったみたいで……。大丈夫ですか!?」
 俺が本気で心配して駆け寄ると、周りの騎士たちが恐怖に引きつった顔で後ずさる。観覧席の貴族たちは顔面蒼白で、アイリス王女だけが「……やはり、噂は本物か」と満足げに微笑んでいた。

 次の試練は、王立魔術院からの挑戦状だった。数十人の魔術師たちが、一斉に俺に向かって最大火力の攻撃魔法を放ってきた。
「うわっ、派手だなあ」
 色とりどりの魔法が俺に殺到する。俺はとっさに、先日見様見真似で覚えた防御魔法を使った。
「『プロテクション』……だったかな?」
 俺の周りに現れたのは、小さな光の膜……ではなく、王都全体を覆い尽くさんばかりの、巨大な黄金のドームだった。
 魔術師たちの攻撃は全てドームに弾かれ、空の彼方へ消えていく。
「……あ、あれ?なんか、範囲、広すぎた?」
 俺が首を傾げていると、魔術師たちは魔力を使い果たしてバタバタと倒れていった。
 試練は、その後も続いた。知恵比べとして「絶対に解けない」という古代のパズルを出された時は、俺が適当にガチャガチャいじっていたら、たまたま偶然、数秒で解けてしまった。
 次々と降りかかる無理難題を、俺は持ち前の運と、無自覚な規格外の力でいとも簡単にクリアしていく。その度に、俺を陥れようとした貴族たちの権威は失墜し、逆に俺の評価は「武勇だけでなく、知恵も兼ね備えた万能の天才」として、うなぎ登りに高まっていった。全くもって、不本意である。

 そんな騒動の最中、俺は王都が抱える深刻な問題をいくつか耳にした。長年の日照りによる食糧不足、そして、その影響で貧民街に疫病が広まっているという話だ。
「何か、俺にできることないかな」
 貴族の嫌がらせに付き合うより、よっぽどそっちの方が大事だ。俺は王宮を抜け出し、貧民街へと足を運んだ。そこで俺は、病で苦しむ人々を目の当たりにする。
「血を止めた時みたいに、うまくいかないかな……」
 俺は祈るような気持ちで、病に苦しむ人々の体に手をかざした。「病よ、なくなれ」と。
 すると、俺の手から放たれた温かい光が、人々の体を包み込み、みるみるうちに彼らの顔色が良くなっていく。数分後には、死にかけていたはずの人々が、元気に起き上がっていた。
「神よ……!」「聖者様だ!」
 人々は俺にひれ伏し、涙ながらに感謝した。俺は「いやいや、皆さんの気合いがすごかったんですよ」と適当にごまかして、その場を去った。
 次に俺が向かったのは、干上がった広大な畑だ。
「うーん、水がないなら、降らせればいいのかな?」
 俺は空を見上げ、雨雲を呼ぶ魔法を試してみることにした。
「『レイン』!」
 すると、どうだろう。からっぽだった空に、みるみるうちに黒い雲が密集し、やがて王都全域に、恵みの雨が降り注いだ。それも、ただの雨ではない。魔力を含んだ、生命力を活性化させる「聖なる雨」だったらしい。
 雨は疫病を浄化し、干上がった大地を潤し、枯れていた作物を瞬く間に芽吹かせた。
 俺が軽い気持ちで行った二つの行動は、王都が長年抱えていた食糧不足と疫病の問題を、たった一日で根本から解決してしまった。
 王宮に戻ると、国王陛下自らが出迎えてくれた。
「ユウキ殿……!君は、我が国を救った、真の英雄だ!」
 彼は涙を流して俺の手を握った。アイリス王女も、これまでの探るような目ではなく、純粋な尊敬と、そして少しだけ熱っぽい視線を俺に向けていた。
 俺は、ただ困っている人を助けたかっただけ。でもその結果が、意図せずして国家規模の変革に繋がってしまった。
 この男、ユウキは、もはや一個人の冒険者ではなく、国の運命すら左右する存在として、誰もが認めざるを得なくなっていた。
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