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Ⅱ.未編集
第52夜 蓮side
しおりを挟む双子が退場してから40分ほど経過した。
試食作りは順調に進み、残るは最後の仕上げのみとなっていた。
(さすがにちょ~っと遅くないか?)
先程からキッチンの入り口に視線をやるが、幼馴染の姿はまだ見えない。
彗だけなら面倒になって逃げたのか、と思うのだが…人前では王子の皮を被っている爽まで戻らないのはあやしいと俺の感が告げている。
「俺ちょっと2人の様子を見てくるわ。もしかしたら本を探すのに手間取ってるのかもしれないし」
「そうだね。レンちゃんならこの家のことを把握しているだろうし、お願いするよ」
笑顔の秋斗に見送られ、とりあえず彗の部屋に向かった。
「彗、居るか?…す~い~?」
ノックをしても声を張り上げても返事がない。
仕方なく中を覗くが誰も居なかった。
その調子で2階の部屋をひと通り回ってみたものの、肝心の2人の姿は見えない。
(もしかして…トイレとか、風呂場か?)
他に考えられる所はない。
外に出た様子もないので、1階に戻り浴室へと向かう。
そっと脱衣所の扉を開ければ奥の方からくぐもった声が響いた。
(お!ビンゴ。って…なんかイヤな予感がするんですけど…)
反響する音ははじめ、人の呻き声にも似ていたが、よくよく聴くと色のついた喘ぎ声だと気づく。
(おいおい…まさかこんな時にヤってるのか!?)
前々から彗と爽には肉体関係があると勘付いてはいた。
爽の独占欲は昔から相当のものだったし、正直、大切な幼馴染が兄弟でしかも男同士という禁断の道に進もうが構わないと思う。
自由恋愛、博愛主義がモットーの俺にとっては些細なことだった。
ここは引き返して、皆んなにフォローするのが妥当だろう。
ところが、喘ぎ声が一段と大きく響き、むくむくとイケない考えが過ぎる。
(…彗ってどんな顔をするんだ?)
あの色恋に関して堅物で奥手な彗の乱れた姿には興味がわいた。
ダメだ。
この扉を開いてはいけない!
そう思うのとは裏腹に身体は動いていた。
「…彗?」
「れ、蓮…?」
勢いよく開けた先には幼馴染のあられもない姿があった。
「み、見るなっ!!」
叫んで顔を伏せるが身体は爽に貫かれたままで、弟にしがみつく形になる。
多少は覚悟していたものの、やはり現実を突きつけられると堪えるものがあった。
(…ホントにヤッてるんだな)
不躾なほどマジマジと見つめてしまう。
羞恥と相まって赤く染まる彗の身体。
程よく引き締まったそれに汗が伝い落ち、普段では想像出来ない艶やかな姿を映し出す。
「ねぇ、それ以上見るならその目、潰すよ?」
尚も動けずにいる俺に冷ややかな視線が向けられる。
「わ、わりぃ!!」
爽の鬼の様な形相を見た瞬間、金縛りが解けたように慌てて扉を閉めた。
「あー、他の奴にはテキトーに言っとくから…」
扉越しにそう伝え、他に何を言えばいいのか、どう言えばいいのか分からなくて足早に去る。
頭の中では彗の甘い声と姿が何度も浮かび、さらには2人の結合部や達したあとの独特の香りまで鮮明に思い出しては激しく首を振った。
「マジで勘弁しろよ…」
しばらく廊下で放心していたが、気を取り直してキッチンへと向かう。
「レンちゃんお帰り。2人はどうだった?」
秋斗に笑顔で迎えられ、俺は何もしていないと言うのに後ろめたく思った。
「ああー。彗は…風呂に入って面倒くさくなったから後は任せるって。爽は本を探してる内にアルバムを見つけて、思わず見入ってたらしくて…」
しどろもどろに伝えれば、「そっか」と納得したようだった。
「ま、まぁ。もう少ししたら爽は来ると思うよ」
俺の予想は当たり、数分後に爽は姿を見せたが、彗は最後まで戻ることはなかった。
(明日からどうすればいいんだよ…)
悶々としながらその日は双子の家を後にする蓮だった。
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