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Ⅱ.未編集
第53夜 爽side
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彗の中に熱い迸りを放った瞬間、無遠慮にバスルームの扉が開く。
その場に固まるのは、予想通り蓮だった。
僕たちが長く席を外せば様子見役で彼が来ると思っていた。
さらに、最近の彼は彗に対して劣情を抱いている。
きっとそのドアを開けるだろうと、そこまで爽は読んでいた。
突き刺さる視線には興味や彗へ向けられる熱は混じっているものの、男同士、しかも兄弟でヤっているという異常事態への嫌悪などは感じない。
(やっぱり気づかれていたんだね)
その態度で察する事が出来た。
元々、蓮は僕の兄と違って鋭い。
大方は彗の言動から想像はしていたのだろう。
だからこそ、釘をさす意味でも見せつけようと思っていだのだが…蓮の表情を見る限りそれは失敗だったと悟る。
(これは引くどころか余計な興味を沸かせちゃったかな)
彗は僕のものだ、手を出すな!
そんな意味合いを込めて睨むもののもう彼の中には彗の痴態しか入っていない。
尚も必死で隠れようともがく彗を抑え、穿ったままの腰を押し付ける。
フリーズしたまま動かない幼馴染へ鋭い一声を送れば、慌てて謝罪の言葉と扉を閉める音が重なった。
「あー、他の奴にはテキトーに言っとくから…」
そう動揺した声で扉越しに伝えられ、自分から見せつけたくせにやはり後悔の方が勝った。
黒崎に至っては完全に面白がっていたからまだ許せたのだが、己の好きな人に明確な好意や劣情を抱く奴に彗のこの姿を見せたくはない。
醜い独りよがりの独占欲だ。
蓮が完全に去るのを気配で感じてから眼前の青年へと視線を戻す。
これでもかと言うくらいに顔も身体も赤に染め、けれどその鋭い眼光は僕を貫いていた。
「…てめぇ、何を考えてやがる!?」
最早「爽」とも呼ばれず、喧嘩上等とでも言うかの如くドスの効いた声だった。
それでも頬は色づいたままで、内心でこんなところも可愛いくて僕を煽っている自覚はないんだろうな、と考えて苦笑する。
「彗だって見られて興奮したでしょ?ほら、ココもまだ元気だし…ホントはもっと蓮に見られたかったんじゃない?」
「…くっ…」
耳元で揶揄すれば苦虫を潰したように顔を歪めた。
(悔しいけど興奮したのは図星、ってところかな)
快楽に溺れるようにと彗の身体を作り変えたのは自分であり、その事に興奮する。
(もっと僕を求めて。もっと僕だけを見て。もっともっと…)
そうして、どこまでも堕ちて、最後には僕を選んでくれたらどんなに幸せだろうか。
(…ああ、やっぱり僕は狂ってるのかもしれない。それでもこの手は離せない、かな)
名残惜しいが彗の中から自身を引き抜き、文句を言いつつも力の入らない彼を宥め後処理をした。
その後、彗は無言で部屋に戻りご丁寧に内鍵までかけられる。
今回はさすがにやり過ぎてしまった。
しばらく彼の機嫌は治らないかもしれない。
「…ごめんね」
そっと呟いて、僕は皆んなのいるリビングへと踵を返した。
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