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【女将軍編】
第7話 敗軍の将のあり方
しおりを挟む大打撃を受けた下士官以上の者たちの運命は苛烈だった。
下士官たちは、そのほとんどがその場で殺された。
首を刎ねるのではなく、自分の剣や槍で腹を貫かれ、自らの血にまみれ息絶えた。
士官たちは捕虜となった者もいたが、ある意味死ぬよりもつらい境遇となる。
狭い檻に押し込められ、劣悪な環境で座ることもできずに立ち続けねばならない。
意識を失いでもすれば、仲間に踏みにじられ息絶えた。
帝国は本気で王国を撃ち滅ぼすつもりでいる。
滅ぼす相手と身代金交渉はしない。
人質や捕虜に意味がないのだ。
ただただ、戦闘で荒んだ自軍兵士の士気向上に役立てるだけだ。
そんな中——。
シャリィアは、生きていた。
正確には、死なせてもらえなかった。
帝国軍に捕らえられた彼女は、他の士官たちとは異なる扱いを受けていた。
理由はただ一つ。
敵将マーガレットが、彼女に『興味』を持ったからだ。
「女の将軍とは珍しいわね」
マーガレットは、まるで珍しい玩具でも見つけたかのように目を細めた。
自分のことは棚に上げている発言だが、身分が違う。
彼女は『司令官』であって『将軍』ではない。
「殺せ。さっさと終わらせろ」
シャリィアは地面に膝をつき、唇を噛みしめながら言い放った。
だが、マーガレットは首を横に振った。
「いいえ。あなたには、まだ『役目』があるわ」
その声は甘く、けれど冷たい。
まるで氷のように、じわじわと心を凍らせていく。
「敗者には、敗者の務めがあるの。あなたはそれを、学ばなければならないわね」
そう言って、マーガレットはシャリィアの顎を指先で持ち上げた。
その仕草に、シャリィアは顔を背けることしかできなかった。
その後、彼女は『特別な待遇』を受けることになる。
将軍としての威厳を剥がされ、名も、階級も、衣服すらも奪われた。
与えられたのは、帝国の従者たちが着る粗末な布切れと、名もなき囚人としての番号札。
シャリィアは命こそ繋いだが、将としての尊厳はすでに地に堕ちていた。
帝国の将マーガレットは、彼女を『生かす』ことで、より深い恥辱を与えていた。
命はある。だが、尊厳は奪われた。
それが、敗軍の将に与えられた『罰』だった。
「これであなたも、ようやく『平等』ね」
マーガレットは笑った。
その笑みは、勝者の余裕ではなく、敗者を弄ぶ者のそれだった。
シャリィアは、ただ黙って耐えた。
怒りも、屈辱も、すべてを押し殺して。
だが、彼女の瞳だけは、決して折れていなかった。
その奥底に燃えるものを、マーガレットは見逃さなかった。
「ふふ……いいわ。もっと見せてちょうだい、その目。あなたがどこまで耐えられるか、楽しみにしているわ」
「嬲るつもりかっ!」
下劣な者め! と敗残者が罵声を吐くが何とも思わない。
むしろ楽しいとマーガレットは感じている。
「そなたは負けたのだ。負けたのだから敗者として振舞わねばならんぞ?」
敗者とは、処刑されるか奴隷となるか、国外追放で野垂れ死ぬものと決まっている。
「だから、殺せというに!」
眼光鋭く睨みつけられた。
しかし、床に這いつくばったままでは、怖くなどない。
「この戦争が終わったら、『解放』してあげるわね」
場所は王都の広場がいいだろう。
煩わしいものすべてからの解放だ。
「楽しみね?」
帝国の侵略は勢いに乗りつつあった。
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