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再度【ドローン】を充電し、辺りの索敵をしているジェニー姐さん

それを横目に、かなり遅めのお昼ご飯を準備中なワタシです

(気がつけば、もうとっくにお昼の時間は過ぎちゃってるよ)
(むしろ、おやつの時間なんじゃない?)


【アントン】の巣穴から少しだけ離れて、

ちょっと開けた場所に、薬店で使っていたガーデンテーブルセットを取り出します

そして、今日のランチに選んだモノは、

[外食]メニューから、



【よしぎゅー 牛丼朝セット 特盛 ミニサラダ・味噌汁付き 794円】


これはアレです。みんな大好き! よしぎゅーの朝の牛丼セットです

ワタシ的には、小鉢に納豆をチョイスしても良かったのですが、

ニオイがアレなので、ジェニー姐さんに気をつかって、ミニサラダにしておきました

ちなみにワタシ、よしぎゅーのメニューは、特盛派です

(ランチタイムなのに朝食メニューを持ってきちゃうところがおつだよね?)

【買い物履歴】には日時の制限とかがないので、季節や時間を無視したチョイスが可能なのです


そんな感じで、さっそくジェニー姐さんを召喚です

「姐さ~ん、遅くなっちゃいましたけど、お昼ご飯なのですよ~!」

少し離れた場所で【ドローン】を楽しんで(周囲を警戒して)いたジェニー姐さん

「はーい! 今行くわー!」

ワタシが呼びかけると、まさにまっしぐらな感じでお返事です

そして気がつくと、何と、ジェニー姐さんが目の前に

用意したばかりのガーデンテーブルセットに着席していました

(え? もう着席してる? あれ? それなりに距離あったよね?)
(これって、もしかして、スキル?)
(瞬間移動とか、瞬歩とか、そういったヤツ?)
(だとしたらジェニー姐さん、スキルの使いどころ間違ってるよ・・・)

そんなことを思っているワタシに、ニコニコ笑顔のジェニー姐さんが話しかけてきます

「お昼のご飯かしら? ありがとー♪ とても楽しみにしていたのよー♪」
「最近、この習慣に慣れちゃって、お腹空いていたのよねー♪」
「今日のお昼ご飯は、何を用意してくれたのかしら?」

ルンルンなジェニー姐さんに、いつものお仕事をお願いするワタシ

「でもその前に、姐さん、清潔(クリーン)の魔法をよろしくです!」

「わかったわ。でもあなた、本当に綺麗好きね?」

「お食事の前には手を洗う。これ、基本です!」

毎度食事の前には必ず、ジェニー姐さんに清潔(クリーン)の魔法をかけてもらいます

いくら外出先とはいえ、食事の前の手洗いは欠かせませんからね

(手を洗う代わりに魔法でキレイに・・・)
(ある意味贅沢な魔法の使い方だよね)

普通は魔力量の関係で、日に何度も清潔(クリーン)の魔法をかけるなんてありえないそうですが、

ワタシはここぞとばかりに、ジェニー姐さんを使い倒します

(ジェニー姐さんがいれば、お手拭きいらずだよね?)


普通の人族の何十倍もの魔力量を持つ魔人族

その膨大な魔力を用いた清潔(クリーン)の魔法を

『おしぼりとお冷はタダ』、そんな感覚でラーメン屋のおしぼりがごとく使い倒すワタシ

苦労して魔力を節約している人族の魔法職が聞いたら、きっと張り倒されることでしょう



「それでですね、今日のお昼ご飯はね、牛丼というお名前の食べ物です」
「お米の上に甘じょっぱく煮た牛肉と玉ねぎがのってて、ガツガツいただけちゃいますよ?」

そんな説明をしつつ、牛丼のセットをサーブします


「これは、この2本の棒で食べるのかしら?」

ジェニー姐さんが箸を手にして聞いてきます

忘れていました。ジェニー姐さんはお箸の国の人ではありませんでした

(そう言えば、よしぎゅーって、以前は割りばしじゃなかったっけ?)

ん?
おてもと?



「ごめんなさい。今、フォークスプーンを用意しますね?」

「いいのいいの。あなたと一緒のモノを使ってみたいわ」
「あなたの真似をすればいいんでしょ?」

そんな流れで、ジェニー姐さんがお箸にチャレンジです

(まあ、今回は、どんぶりですから、最悪掻っ込んじゃえばいいですしね)

そんなことを考えていたのですが、やっぱりというか、いつも通りというか

目の前には、あっけないほどいとも簡単に、しかも美しくお箸を使いこなしているジェニー姐さん

「これは使いこなせるととても便利ね?」
「食べたいものを片手だけで掴み上げることができるのね?」


そんなこんなで、牛丼セットをペロっと完食なのでした


牛丼をおかわりしたいというジェニー姐さん

「お夕飯が食べられなくなっちゃうから、牛丼のおかわりはなしにしましょう」
「その代わり、このお菓子食べましょ?」

そんな感じでご用意したのは、

ワタシのおすすめスイーツ



【富士山の頂 180円】


これはアレです。地元で有名だったの和菓子屋さんのお菓子です

カスタードクリームが入ったカステラのような丸っこい小山のスポンジ

上からホワイトチョコで雪化粧して、山頂にはチョコでできたコーヒー豆

洋菓子の構成素材を、和菓子屋さんらしく上品に仕上げた一品

甘さが程よく、何個でも食べられちゃうヤツです


(このお菓子、商品名より、『おっぱい饅頭』というあだ名の方が有名だったよね~)
(見た目、そのまんまだし)
(そう言えば、はじめて買った時、ちょっと恥ずかしかったかも)



そんな感じでおやつタイムに突入です

「あら、おいしっ!」
「なんてやさしい甘さなのかしら♪」

ニコニコ笑顔のジェニー姐さんを眺めつつ、ワタシは気になっていたことを確認してみます

(ワタシ、かなりの数の【アントン】をやっつけたでしょ?)
(レベルとか結構上がっちゃてるんじゃない?)

大好きなお菓子の包装を取りながら、口ずさむのはこの言葉、

「ステータス!」


そう口にした瞬間、目の前が真っ暗になります

立ち眩みのような眩暈のような

頭がくらくらして意識が遠のきます


「スキニー? どうしたの?」
「大丈夫? しっかりして!」


ジェニー姐さんの慌てたような声が聞こえているような気がしますが

ワタシはそれどころではありません


(わ、ワタシの、おっぱい富士山・・・)

目が回りながらも、気にするのは大好きなスウィーツのこと

気絶し、テーブルに突っ伏してもなお、大好きなお菓子だけは手放さないワタシなのでした


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