俺が冒険家じゃなかったら、あいつは魔王を倒せなかった件について

齋歳 うたかた

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第七話

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 彼女は、平和な時代が来るのを待つのではなく、自分が平和な時代にするという考え方だったのだ。
 家から秘宝の剣が無くなっていた。その剣の力を彼女に話したことがある。魔王を倒せると思って、彼女が持って行ったのだろう。
 彼女を追いかけようと思った。でも、その時、ちょうどレポートの解読が終わったところだった。

 レポートの内容は俺に衝撃を与えた。
 簡潔に説明すると、遺跡は強力な兵器を開発するための研究所であり、秘宝や魔物はその研究の成果だった。そして、研究所は最終的に、強力な生体兵器を作り出す研究を始めた。生体兵器を作り出すことに成功はしたが、生体兵器は自我を持ち、暴走。研究所は破壊され、転移装置で、暴走した生体兵器を無理やり遠くの地へと転移させた。その暴走した生体兵器こそ、魔王と呼ばれるものだった。
 魔王は何処からともなく現れたという噂を聞いたことがあるが、その謎が解明された。

 そして、最大の問題は、三大遺跡の再奥には、魔王と同じシリーズの生体兵器が冷凍保存されているという記述だった。これが本当なら、誰かが間違って起動でもしたら、新たな魔王が生まれてしまう可能性がある。もし暴走しなくても、その生体兵器を利用して、世界征服をすることを考える人間だっているだろう。
 どんなことがあっても、それは阻止しないといけない。俺が誰よりも先に三大遺跡の再奥にたどり着いて、生体兵器を壊さなければ。
 ギルドにはこれを報告できない。誰が邪な考えを持つか分からないから。
 リーナを追いたかったが、俺は自分がすべきことを見つけてしまった。彼女ならきっと大丈夫。あの剣を持っていれば、魔王軍など簡単に蹴散らすだろう。
 俺はそれから五年間、ずっと三大遺跡に挑んできた。












「……」

 昔のことを夢見て、思わず起きてしまった。
 まだ夜中だ。隣を見れば、リーナがすやすやと寝ていた。
 こいつがここにいるのはおかしい。俺は一人で寝たはずなのに。
 俺が寝ている時に侵入してきたのか。

「まったく……」

 よだれを垂らす彼女に毛布をかけ直す。気分転換に夜空を見たかったから、俺は部屋を出た。
 外に出れば、空気がひんやりとしており、吐いた息が少し白かった。ちょっとした丘まで歩き、夜空を見る。数多の星が自己主張をしている風景は綺麗だった。

「ごめん、起こしたか」

 俺は、毛布を被って音を立てないように背後から近づいてきていたリーナに話しかけた。どうせ俺をビックリさせようとしていたのだろう。

「バレちゃったか」
「ああ。家から出る音で気づいた。悪いな、寝ていたのに」
「いいのよ、子供の時に何度も魔王軍の夜襲を受けて、ちょっとの物音でも起きるようになっちゃったから」
「そっか、俺と同じだな」

 故郷から逃げた時に、何度も魔王軍が夜に襲ってきた。あんな経験をすれば、そんな体質になってしまうのも無理はなかった。
 彼女は俺の隣に座って、毛布を共有してくれた。
 彼女の体温が冷えた俺の体を温めてくれる。

「綺麗な夜空ね」
「ああ」
「そこは君の方が綺麗だって言うべきじゃない?」
「なんだ、言って欲しかったのか」
「まさか。それを言うぐらいなら、キスして欲しいわ。デコピンじゃなくてね」
 
 まだ根に持っているらしい。
 謝罪の代わりに、俺は毛布の中で彼女を抱き寄せた。彼女も体重を俺に預けてくる。
 しばらく夜空を眺めて、彼女がポツリと呟いた。

「……ほんと平和ね」
「ああ、お前が魔王を倒してくれたおかげだ。よく頑張ったな」
「ねぇ、村の皆のことを覚えている? 私ね、実はーー」
「知ってる。村の皆と戦ったんだろ?」
「なんだ、知ってたんだ……皆、洗脳されてた」
「辛かったんだな」
「うん」

 今にも泣きそうな彼女の頭を撫でる。
 女勇者が洗脳された同郷の者たちを泣きながら倒したというのは、有名な話だ。その話を初めて聞いた時、俺も胸が苦しくなった。でも、それ以上に彼女は辛かっただろう。

「あとね……魔王はこの村の遺跡のことを知ってた」

 彼女は俺が気になっていたことを教えてくれた。
 やっぱり、遺跡のレポートに書いてあったことは正しかったか。

「私の剣を見て、どこで手に入れたのかしつこく聞いてきた。この村のことを言ったら、村がどこにあるかまで聞いてきたわ」
「その話し合いの最中に、お前は剣の光線をぶっ放したらしいな」
「だって面倒だったから。というか、さんざん皆を殺しておきながら、なんで話を聞かなくちゃいけないのよ」
「気持ちはわかるけど、そのせいで王族たちに、不意打ちの勇者って呼ばれているらしいじゃないか」
「なんでそんなことまで知っているのよ……」
「知り合いに噂好きの奴がいるんだよ」
「まさか、そいつは女じゃないでしょうね?」
「昼間から酒飲んでいる野郎だよ」
「なら良し」

 俺の答えに満足したのか、彼女は抱きついてきた。
 本当に女性らしく成長したと思う。五年前に比べると色々な所が大きくなって。

「ねぇ、アレル」
「なんだ?」
「平和な時代にしたよ? もう冒険家はやめるよね?」
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