10 / 10
最終話
しおりを挟む
「え?」
思わずリーナを見てしまう。
知っていた、だって?
リーナの目は嘘を言っているように見えなかった。
「言ったでしょ、少しの物音でも起きちゃうって。あの時、路地裏で貴方が毛布から出た時に、私は目を覚ましたのよ」
そんな……あの時、リーナは起きていたのか!?
でも、それが本当なら、なんであの時に止めなかった?
なんで今まで俺を責めなかった?
「本当は、貴方が出て行くのを止めたかったけど、あんなに迷惑をかけた私に貴方を止める権利はなかった。ただ寝たふりをすることしかできなかった……」
「リーナ……」
「でも、優しい貴方はどんなことがあっても、最後には、必ず私の所に帰って来てくれた……!」
彼女は声を震わせながら、俺の胸に飛び込んできた。
「あんなに私のことを世話してくれたアレルが最低な男? だったら私はそれ以上に最低な女よ……!」
そんなわけない……
リーナが人形みたいになってしまったのは、リーナが優し過ぎて、皆が死んだことに耐えきれなかったからだ。
俺が彼女の言葉を否定する前に、彼女は弱々しい声で訴えてきた。
「ねぇ、お願い、アレル……もう恋人じゃなくてもいいから、友達でもいい、貴方が望むなら奴隷でもいい、だから、貴方の側にずっと居させて……! 私が安心できる場所は、これまでもこれからもアレルだけなの……」
今にも夜の暗闇に溶けて消えてしまいそうなほど、彼女のことが儚く見えた。
「冗談でも奴隷になるなんて言わないでくれ……そんな関係を、俺は求めない」
「じゃあ、私たちの関係って何……? 貴方の方が上の立場、それとも私の方が上の立場?」
「……対等な関係であって欲しい」
「そう、対等な関係。たとえ、何度も私を見捨てようとしたとしても、どれだけ貴方に迷惑をかけていたとしても……魔王を倒した勇者だったとしても、人知れず平和を守っていたとしても、私たちは対等な関係よ……」
「……!」
「だから、難しいことを考える必要はないの。自分のしたいことをして、して欲しいことを求めればいい……ねぇ、抱きしめて。そうして欲しい……」
リーナが縋るように見てきて。
彼女をぎゅっと抱きしめる。冷えた空気の中、彼女の優しい体温が感じられた。
もし彼女の言うことを信じていいのなら、もし俺が彼女の隣にいていいのなら……
いや、もしもの話なんてしても意味はない。対等な関係、俺も彼女もそれを求めているのだから。
今の俺がしたいこと……
今まで色々なことがあったけど、それら全部を過去のことにして、過去に囚われない未来を歩みたい。
もちろん、彼女と一緒に。対等な関係で。
そのためには、俺は言わないといけない。彼女が待ち望んでいる言葉を。
覚悟を決め、俺は告げる。
「好きだ、リーナ……」
「うん……私も、アレルのことが好き……」
お互いに想いを囁き合って。
そして、どちらからともなく俺たちは唇を重ねた。
夜空をかける流れ星のように、彼女の頬を一筋の涙が伝った。
アレルという青年は、魔王を倒した女勇者と結ばれた。
その後、アレルは、彼女と共に三大遺跡を全て踏破し、生体兵器の破壊に成功する。だが、平和な時代を守るには、それだけでは不十分だった。
やがて、彼は新たな魔王として君臨し、世界と戦うことになる。
しかし、それはまた別の話。
思わずリーナを見てしまう。
知っていた、だって?
リーナの目は嘘を言っているように見えなかった。
「言ったでしょ、少しの物音でも起きちゃうって。あの時、路地裏で貴方が毛布から出た時に、私は目を覚ましたのよ」
そんな……あの時、リーナは起きていたのか!?
でも、それが本当なら、なんであの時に止めなかった?
なんで今まで俺を責めなかった?
「本当は、貴方が出て行くのを止めたかったけど、あんなに迷惑をかけた私に貴方を止める権利はなかった。ただ寝たふりをすることしかできなかった……」
「リーナ……」
「でも、優しい貴方はどんなことがあっても、最後には、必ず私の所に帰って来てくれた……!」
彼女は声を震わせながら、俺の胸に飛び込んできた。
「あんなに私のことを世話してくれたアレルが最低な男? だったら私はそれ以上に最低な女よ……!」
そんなわけない……
リーナが人形みたいになってしまったのは、リーナが優し過ぎて、皆が死んだことに耐えきれなかったからだ。
俺が彼女の言葉を否定する前に、彼女は弱々しい声で訴えてきた。
「ねぇ、お願い、アレル……もう恋人じゃなくてもいいから、友達でもいい、貴方が望むなら奴隷でもいい、だから、貴方の側にずっと居させて……! 私が安心できる場所は、これまでもこれからもアレルだけなの……」
今にも夜の暗闇に溶けて消えてしまいそうなほど、彼女のことが儚く見えた。
「冗談でも奴隷になるなんて言わないでくれ……そんな関係を、俺は求めない」
「じゃあ、私たちの関係って何……? 貴方の方が上の立場、それとも私の方が上の立場?」
「……対等な関係であって欲しい」
「そう、対等な関係。たとえ、何度も私を見捨てようとしたとしても、どれだけ貴方に迷惑をかけていたとしても……魔王を倒した勇者だったとしても、人知れず平和を守っていたとしても、私たちは対等な関係よ……」
「……!」
「だから、難しいことを考える必要はないの。自分のしたいことをして、して欲しいことを求めればいい……ねぇ、抱きしめて。そうして欲しい……」
リーナが縋るように見てきて。
彼女をぎゅっと抱きしめる。冷えた空気の中、彼女の優しい体温が感じられた。
もし彼女の言うことを信じていいのなら、もし俺が彼女の隣にいていいのなら……
いや、もしもの話なんてしても意味はない。対等な関係、俺も彼女もそれを求めているのだから。
今の俺がしたいこと……
今まで色々なことがあったけど、それら全部を過去のことにして、過去に囚われない未来を歩みたい。
もちろん、彼女と一緒に。対等な関係で。
そのためには、俺は言わないといけない。彼女が待ち望んでいる言葉を。
覚悟を決め、俺は告げる。
「好きだ、リーナ……」
「うん……私も、アレルのことが好き……」
お互いに想いを囁き合って。
そして、どちらからともなく俺たちは唇を重ねた。
夜空をかける流れ星のように、彼女の頬を一筋の涙が伝った。
アレルという青年は、魔王を倒した女勇者と結ばれた。
その後、アレルは、彼女と共に三大遺跡を全て踏破し、生体兵器の破壊に成功する。だが、平和な時代を守るには、それだけでは不十分だった。
やがて、彼は新たな魔王として君臨し、世界と戦うことになる。
しかし、それはまた別の話。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる