俺が冒険家じゃなかったら、あいつは魔王を倒せなかった件について

齋歳 うたかた

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最終話

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「え?」

 思わずリーナを見てしまう。
 知っていた、だって?
 リーナの目は嘘を言っているように見えなかった。

「言ったでしょ、少しの物音でも起きちゃうって。あの時、路地裏で貴方が毛布から出た時に、私は目を覚ましたのよ」

 そんな……あの時、リーナは起きていたのか!?
 でも、それが本当なら、なんであの時に止めなかった?
 なんで今まで俺を責めなかった?

「本当は、貴方が出て行くのを止めたかったけど、あんなに迷惑をかけた私に貴方を止める権利はなかった。ただ寝たふりをすることしかできなかった……」
「リーナ……」
「でも、優しい貴方はどんなことがあっても、最後には、必ず私の所に帰って来てくれた……!」

 彼女は声を震わせながら、俺の胸に飛び込んできた。

「あんなに私のことを世話してくれたアレルが最低な男? だったら私はそれ以上に最低な女よ……!」

 そんなわけない……
 リーナが人形みたいになってしまったのは、リーナが優し過ぎて、皆が死んだことに耐えきれなかったからだ。
 俺が彼女の言葉を否定する前に、彼女は弱々しい声で訴えてきた。
 
「ねぇ、お願い、アレル……もう恋人じゃなくてもいいから、友達でもいい、貴方が望むなら奴隷でもいい、だから、貴方の側にずっと居させて……! 私が安心できる場所は、これまでもこれからもアレルだけなの……」

 今にも夜の暗闇に溶けて消えてしまいそうなほど、彼女のことが儚く見えた。
 
「冗談でも奴隷になるなんて言わないでくれ……そんな関係を、俺は求めない」
「じゃあ、私たちの関係って何……? 貴方の方が上の立場、それとも私の方が上の立場?」
「……対等な関係であって欲しい」
「そう、対等な関係。たとえ、何度も私を見捨てようとしたとしても、どれだけ貴方に迷惑をかけていたとしても……魔王を倒した勇者だったとしても、人知れず平和を守っていたとしても、私たちは対等な関係よ……」
「……!」
「だから、難しいことを考える必要はないの。自分のしたいことをして、して欲しいことを求めればいい……ねぇ、抱きしめて。そうして欲しい……」

 リーナが縋るように見てきて。
 彼女をぎゅっと抱きしめる。冷えた空気の中、彼女の優しい体温が感じられた。

 もし彼女の言うことを信じていいのなら、もし俺が彼女の隣にいていいのなら……
 いや、もしもの話なんてしても意味はない。対等な関係、俺も彼女もそれを求めているのだから。
 今の俺がしたいこと……
 今まで色々なことがあったけど、それら全部を過去のことにして、過去に囚われない未来を歩みたい。
 もちろん、彼女と一緒に。対等な関係で。
 そのためには、俺は言わないといけない。彼女が待ち望んでいる言葉を。
 覚悟を決め、俺は告げる。

「好きだ、リーナ……」
「うん……私も、アレルのことが好き……」

 お互いに想いを囁き合って。
 そして、どちらからともなく俺たちは唇を重ねた。
 夜空をかける流れ星のように、彼女の頬を一筋の涙が伝った。











 アレルという青年は、魔王を倒した女勇者と結ばれた。
 その後、アレルは、彼女と共に三大遺跡を全て踏破し、生体兵器の破壊に成功する。だが、平和な時代を守るには、それだけでは不十分だった。

 やがて、彼は新たな魔王として君臨し、世界と戦うことになる。
 
 しかし、それはまた別の話。
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