俺が冒険家じゃなかったら、あいつは魔王を倒せなかった件について

齋歳 うたかた

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第九話

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 不満げな顔をして、彼女が少し離れてくれる。
 ずっと触れていたかったけど、彼女の胸から手を離した。手には柔らかな感触が残っている。

「……何よ」
「俺は……お前が思っているような男じゃない」
「馬鹿なことを言わないで」
「違う……違うんだ……俺は……!」

 言わないといけない。今言わないと、もう二度と俺は言うことができなくなるだろうから。
 俺は罪の告白をするように告げる。彼女に、今まで言えなかったことを。

「お前のことを、路地裏に置いていこうとしたことがある……!」

 ずっと言えなかった。言う勇気がなかった。彼女に嫌われてしまうのが怖くて。
 今までだって、彼女から好意を向けられることはあった。正直、嬉しかったし、俺も彼女のことが好きで、誰よりも大切な存在だった。でも、俺には、彼女を見捨てようとしたことを隠したまま、彼女と特別な関係になることはできなくて、その好意に気づかないふりをして誤魔化してきた。罪悪感で狂ってしまいそうになるから。

「俺は、最低な男だ。お前を捨てて、自分だけ助かろうとした男なんだよ……」

 ああ、言ってしまった。でも、いずれ言わないといけなかったことだ。
 彼女は怒り狂うだろう。俺を罵倒して、そして二度と俺の前には現れないだろう。
 それでいい。俺が彼女の側にいる資格なんてない。彼女に相応しい男は別にいる。王族から求婚だってされているんだ。運命の人を見つけるのは簡単だろう。彼女が幸せになってくれればそれでいい。
 そして、彼女がその唇を動かそうとした。おそらく、俺を罵倒するために。
断罪の時が遂に来た。来て欲しくなかったけど、待ち望んでいた。
 彼女を直接見ることができなくて、俺は俯く。でも、彼女の言葉は俺の予想を裏切ることになった。
 
「馬鹿ね、そんなこと知ってるわよ」
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