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第26話 それは、とても悲しい何か
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町長であるゴーインは自警団に逮捕され、人攫いはすぐに壊滅した。それは、一人の男が自らの命を懸けてまで自警団に証拠を提供してくれたおかげだった。
その者の死から一年。人攫いが壊滅したおかげで、自警団の仕事は以前よりもだいぶ少なくなっていた。
「では、行ってきますね」
副団長であるユズハは余りにも暇だったため、予定の時間よりも早く見回りをすることにした。ベルナルドに書類を提出を出すついでに、見回りに行ってくると報告して団長室から出ようとする。
「……ユズハ」
「はい? なんですか?」
不意にベルナルドに呼び止められ、ユズハは振り向く。机に積んである大量の書類をいつも処理しているベルナルドが、珍しく手を止めてこちらを見ていた。その表情は、どこか悲しげだ。
「いや……なんでもない」
ユズハの顔を見て、言いたかったことが言えなかったのか、ベルナルドは口を閉じた。
「そうですか。では、行ってきます」
「ああ……気を付けろ」
ベルナルドは一体何を言いたかったのか。それを理解しているユズハは、それでも団長室から出た。
(わかってますよ、団長……休めって言いたいんでしょう……)
最後に休暇を取ったのはいつだったか。それを思い出せないぐらい、ユズハは自警団の仕事に明け暮れていた。そうでもしなければ、気が狂ってしまいそうだから。
「ふぅ……」
ため息を吐き、ユズハは町へと見回りに出た。
町を見て回れば、元気に駆け回る子供たちもいれば、団子屋で呑気に茶を飲んでいる老人もいて、一言で言えば、平和がそこにあった。
桜美川で氷結の義賊の死体が発見されてから二年が経ったせいか、もはや町で氷結の義賊の話題が出ることはほとんど無い。ユズハには、それが彼の生きていた証が消えて無くなっていくようで嫌だった。
今日のユズハの見回りの道は、いつもと違う。今日は早めに出てきた分、ある場所に立ち寄ろうと決めていたのだった。
程なくしてユズハはその場所に着く。
「久しぶりですね、リリィちゃん、リアム……」
そこは墓場であり、ユズハの目の前には、リリィの墓と、その横に新たに作られたリアムの墓があった。最期は満足したような笑みで亡くなった、ユズハの想い人の墓だ。
「見てますか、リアム。あなたのおかげで町は平和になりましたよ」
最近になり、やっとリアムの死を受け入れることができたユズハは、優しげにリアムの墓に言葉をかける。しかし、言葉に答えるものは誰もいない。
「それだけじゃない。私の復讐だって、貴方のおかげで果たすことができた……」
静けさが支配する墓場で、ただユズハは想い人の墓を見つめる。誰かが答えてくれるわけでもない。それでも、言葉をかけることで、リアムと話しているような気になれて、ユズハは少しだけ気が楽になるのだった。
「復讐はできたのに、以前よりも今の方が寂しいです……」
悲しげに口にしたその言葉が、ほとんど無意識から出たものだとユズハは気づき、目に涙がたまってくる。
「うぅ……復讐よりも貴方の方が大切だって気づくことができたのにっ……もう会えないなんて……もっと早く気づいていれば、貴方を失わずに済んだかもしれない……!」
ユズハの中で後悔は膨れ上がり、彼女自身を苦しめる。己の復讐よりも彼の方が大事だともっと早く気づいていれば、彼は死ななかったのかもしれない。ユズハの瞳から、大粒の涙がぽろぽろと流れ出る。どれだけ拭おうと、涙は止まらずに溢れ出てくる。
「会いたいよぉ、リアム……!」
どんなに願っても、もう会えないことは分かっている。神様でも悪魔でも何でもいい。この願いを叶えてとユズハが泣いても、誰も救いはしてくれない。彼女を救うことができるのは、亡くなったリアム本人だけだ。
「桜を一緒に見たいよぉ……!! うあぁぁ、リアムぅぅ!!」
復讐を果たしたというのに、それ以上に心が空っぽになってしまった少女は、想い馳せていた男の墓の前で、その名を泣き叫び続けるのだった。
「って夢を見たんですよ」
「……ぅん?」
その者の死から一年。人攫いが壊滅したおかげで、自警団の仕事は以前よりもだいぶ少なくなっていた。
「では、行ってきますね」
副団長であるユズハは余りにも暇だったため、予定の時間よりも早く見回りをすることにした。ベルナルドに書類を提出を出すついでに、見回りに行ってくると報告して団長室から出ようとする。
「……ユズハ」
「はい? なんですか?」
不意にベルナルドに呼び止められ、ユズハは振り向く。机に積んである大量の書類をいつも処理しているベルナルドが、珍しく手を止めてこちらを見ていた。その表情は、どこか悲しげだ。
「いや……なんでもない」
ユズハの顔を見て、言いたかったことが言えなかったのか、ベルナルドは口を閉じた。
「そうですか。では、行ってきます」
「ああ……気を付けろ」
ベルナルドは一体何を言いたかったのか。それを理解しているユズハは、それでも団長室から出た。
(わかってますよ、団長……休めって言いたいんでしょう……)
最後に休暇を取ったのはいつだったか。それを思い出せないぐらい、ユズハは自警団の仕事に明け暮れていた。そうでもしなければ、気が狂ってしまいそうだから。
「ふぅ……」
ため息を吐き、ユズハは町へと見回りに出た。
町を見て回れば、元気に駆け回る子供たちもいれば、団子屋で呑気に茶を飲んでいる老人もいて、一言で言えば、平和がそこにあった。
桜美川で氷結の義賊の死体が発見されてから二年が経ったせいか、もはや町で氷結の義賊の話題が出ることはほとんど無い。ユズハには、それが彼の生きていた証が消えて無くなっていくようで嫌だった。
今日のユズハの見回りの道は、いつもと違う。今日は早めに出てきた分、ある場所に立ち寄ろうと決めていたのだった。
程なくしてユズハはその場所に着く。
「久しぶりですね、リリィちゃん、リアム……」
そこは墓場であり、ユズハの目の前には、リリィの墓と、その横に新たに作られたリアムの墓があった。最期は満足したような笑みで亡くなった、ユズハの想い人の墓だ。
「見てますか、リアム。あなたのおかげで町は平和になりましたよ」
最近になり、やっとリアムの死を受け入れることができたユズハは、優しげにリアムの墓に言葉をかける。しかし、言葉に答えるものは誰もいない。
「それだけじゃない。私の復讐だって、貴方のおかげで果たすことができた……」
静けさが支配する墓場で、ただユズハは想い人の墓を見つめる。誰かが答えてくれるわけでもない。それでも、言葉をかけることで、リアムと話しているような気になれて、ユズハは少しだけ気が楽になるのだった。
「復讐はできたのに、以前よりも今の方が寂しいです……」
悲しげに口にしたその言葉が、ほとんど無意識から出たものだとユズハは気づき、目に涙がたまってくる。
「うぅ……復讐よりも貴方の方が大切だって気づくことができたのにっ……もう会えないなんて……もっと早く気づいていれば、貴方を失わずに済んだかもしれない……!」
ユズハの中で後悔は膨れ上がり、彼女自身を苦しめる。己の復讐よりも彼の方が大事だともっと早く気づいていれば、彼は死ななかったのかもしれない。ユズハの瞳から、大粒の涙がぽろぽろと流れ出る。どれだけ拭おうと、涙は止まらずに溢れ出てくる。
「会いたいよぉ、リアム……!」
どんなに願っても、もう会えないことは分かっている。神様でも悪魔でも何でもいい。この願いを叶えてとユズハが泣いても、誰も救いはしてくれない。彼女を救うことができるのは、亡くなったリアム本人だけだ。
「桜を一緒に見たいよぉ……!! うあぁぁ、リアムぅぅ!!」
復讐を果たしたというのに、それ以上に心が空っぽになってしまった少女は、想い馳せていた男の墓の前で、その名を泣き叫び続けるのだった。
「って夢を見たんですよ」
「……ぅん?」
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