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聖女と暗殺者、勇者の対策を考える

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 ゲイランはあの日以来、荒れていた。
 店に入り気に入らないことがあれば店主を殴ったり、味が気に入らない料理が出てきたらひっくり返したりと子供のような言動をとるようになった。


 聖女と暗殺者は勇者に隠れて話し合いをしていた。
「勇者の評判が着々と落ちてきましたね」
「ああいう言動をしてればそうなるでしょう。それをわざと止めなかった貴女もですけど」
「あら?勇者の評判が落ちてあいつは死んでも仕方なかったとする方が楽ではありませんか?」
「それはそうかもしれないですがそこに行くまでかなり時間がかかりますよ?」
「そうなんですよねぇ。聖騎士を殺害した時と同じ手は流石に使えませんし」
「それはどうしてです?」
「簡単なことです。貴女、町の近辺の森に魔王軍の幹部が出たという話を聞いたことがありまして?」
「そう言われるとないな....」
「でしょう?それだけ起こり得ないことだったから勇者も国も信じたのです」
「そこまで狙っていたのですか」
「ええ、だから言ったではありませんか。失敗は許されないんですよ」


 聖女は頭が回りすぎる。それに最近聖女が何故、偽勇者を殺したいかというのも調べてわかってきた。
 奴らにとって神の教えに絶対だ。勇者は神によって選定される。調べて驚いたことだが初代以降は2人だ。
 だが本来、聖王国に認められる勇者というのは聖属性という珍しい属性が使える方だったらしい。
 つまり聖属性を使えない今代の勇者は偽物というわけだ。


「さて、勇者を殺す方法ですが」
「前言っていた剣をとり上げてからというのではないのですか?」
「面白いことが最近分かったのですがゲイランはあの剣を手放すことができません」
「手放すことができない?」
「ええ。文字通りの意味でいついかなる時も絶対に手から離れません。つまりあれを切り離すには手を切り落とすしかないのです」
「確か手を切り落としても再生するはずでしたね?再生してすぐ剣をまた握られては勝てないのでは?」


「確かにその通りです。しかし闇属性に再生を遅らせる魔法が存在します」
「そういえば聞いたことがありますね。ただあれはモンスターの再生を遅らせるだけと聞いたことがありますが」
「その魔法を極めることで植物や動物そして人間に至るまで再生を遅らせることができるようになるんです。ただし問題は私達に勇者の両腕を落とせるかという点にあります」
「そうですね。私は人を斬ることには特化していますが人の部位を切り落とすことは想定していません。かといって貴女は剣を使えませんし」
「魔法で落とそうにも全て弾かれてしまいますからねぇ。とりあえず今日からゲイランを観察して方法を探しましょう」
「それしかないですね....。ところで聖騎士の鎧はどうしたんですか?」
「私が持ってますよ?」
「何故か聞いても?」
「万が一の時に盾になってもらう為です」


 あっけらかんとして答える聖女。恐らくこの聖女は【死者の再生】を使えるのだろう。死んだ人間の一部もしくは身に付けていた物を媒介にその人のゾンビを生み出すという禁呪だ。
「聖女なんて名前名乗るのやめた方がいいのではないですか?」
「あら、心外ですね。優しい人には裏があるように私にも何か秘密があった方が乙女っぽいでしょう?」
 そう平然と答える少女の顔は歪んでいるように見えた。
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