デスらば! ~かわいい死神少女が言い寄ってくるけど、OKしたらオレ、即死亡らしい~

夏のスイカ太郎

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エピソード3 死神サララの罠

2、最悪の転校生!?

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 七月に入り、気温はぐっと暑くなった。

 梅雨も終盤に差し掛かり、晴れ間も多くなっている。

 逆に厄介なのは照り付けるような日差しだった。特に桔平の席は窓際だから、座ってい
るだけでバーべキューの肉の気分を味わえる。

(オレ、このままじゃ絶対日焼けするよな。しかも顔の片側だけっていう恥ずかしい焼け方をするぞ)

 登校したばかりの桔平が、少しでも日差しから逃れようと机をずらしている時だった。

「おっす、桔平」

 と声がかけられる。海斗だった。

「今日も朝から暑いよな。脱水症状で倒れるかと思ったぜ」

 ペットボトルに入ったスポーツドリンクをゴクゴクと飲んでから、海斗はふと尋ねる。

「あれ? 璃夢瑠ちゃんはどうしたんだ? 今朝も仲良く一緒に登校したんだろ?」

「別に仲良くってわけじゃないよ」

 桔平はブスっとした顔で呟く。

「オレが家を出るとあいつ、マンションの前で待ってるんだよ。それで仕方なく一緒に登校してるってだけなんだ。しかも道すがらずっとおしゃべりのしっ放しだし。いい迷惑だよ」

「そんなこと言って、本当は嬉しいんじゃないのか? 璃夢瑠ちゃんみたいな可愛い女の子が毎朝自分を待っていてくれるなんて、男冥利に尽きることだろ? お前、そろそろどうなんだ?」

 海斗の言わんとしていることなんて簡単に想像がつく。璃夢瑠を彼女にしたらどうだ? と暗にほのめかしているのだ。

「だから海斗、何度も言ってるだろ? オレはあいつを彼女にはしないんだって」

「お前も強情な奴だな。どうしてそんなにかたくななのか俺にはさっぱり分からないぜ」

 心底不思議そうに海斗が首を横に振る。

(あいつを彼女にしたら最後、オレは魂を刈り取られて死んでしまうんだよ!)

 心の中で桔平は絶叫した。

「まっ、いっか。最終的にはお前が決めることだしな。で、璃夢璃ちゃんどうしたんだ?」

 改めて海斗がその質問をする。

「ああ、来たよ。でも、別に仲良くじゃないからな。普通にだからな」

 そこの部分は譲れないと前置きしてから、桔平は続ける。

「一緒に玄関まで来たところであいつ『あっ』て声を上げたんだよ。家に忘れ物をしたって。まあ、弁当なんだけどな。で、取りに戻ったんだ。戻ってくるまでもう少しかかるんじゃないか?」

「何だよ、お前も薄情な奴だな。だったらお前も一緒に行ってやれば良かったのに。俺達のために作ってきてくれる弁当なんだぜ」

 昼休みは、桔平と海斗、こずえにリムルの四人で弁当を食べるのが恒例となっていた。

「海斗もこずえも、あいつの弁当をアテにしすぎだぞ」

「まあそう言うなって。ちゃんとお礼は考えてるから。こずえだって、新米が取れたら一袋璃夢瑠ちゃんに進呈するって言ってたしな」

 こずえの家は古くから続く米農家だ。秋ともなれば新米が山のように収穫できる。大袋一つぐらい彼女の采配でどうにでもできるのだろう。

 そんな話をしている時だった。唐突に教室に飛び込んでくる人物がいた。クラスメイトの男子だ。

「み、みんな、聞いてくれ! 大ニュースだぞ!」

 興奮した様子で男子は叫ぶ。

「転校生が来る!」

「来るって、うちのクラスに?」

「ああ、そうだ。すごいニュースだろ!?」

 誇らし気に言う男子だけど、クラスメイト達は懐疑的な視線を向ける。

「何かの間違いじゃないか? A組にはこの間西上さんが来たばかりだろ?」

「そうよ。いくら何でも立て続けに転校生だなんておかしいわ」

「いや、間違いなんかじゃないんだ! さっき玄関で桜下と会ったんだよ!」

 桜下と言うのは桔平らのクラス、2年A組の担任教師だ。

「見知らぬ生徒を連れてて俺がキョトンとしてたら、苦笑しながら教えてくれたんだ。今日からA組の仲間になるって」

 どうやら間違いではなさそうだ。だけど、やっぱり疑問は残る。

 こんな短期間にたて続けに転校生というのもおかしな話だ。A組が他のクラスに比べて極端に人数が少ないと言うのなら話は分かるが、決してそんなことはない。

「どうしてまたA組に?」

「あ、それは俺も思ったさ。思わず、『えっ、また転校生?』って呟いたら桜下は苦笑しながら、校長からのお達しだとかぼやいてたっけ。でもそんなことはどーだっていーんだよ! 驚くべきはその転校生なんだ! 何と!」

 確信に迫ろうとした時だった。教室の前の扉が開く。入ってきたのは担任教師だ。

 もうホームルームの始まる時間だった。生徒達はそれぞれ自分の席へと戻る。

「いいとこだったのに…」

悔しそうに歯噛みしながら、情報を持ってきた男子も自分の席に着く。

 教壇の上に立った担任教師は、空いている
机に気づいた。

「あれ? 西上はまだ来てないのか? 今市、何か聞いてるか?」

 仕方なしに桔平は答えた。

「忘れ物を取りに家に戻りました。もうすぐ来ると思います」

「そうか、ならいいか。よし、ホームルームを始めるぞ」

 担任教師はコホンと咳払いをした。

「驚くかもしれないが、またこのクラスに転校生がやって来ることになった。一学期中に二人もと戸惑うかもしれないが、まあ、そういうことに決まったらしい」

 歯切れの悪い説明をしてから、担任教師は廊下の方に顔を向ける。

「御堂、入りなさい」

 一人の少女が、教室の中へと入ってくる。

 クラス中が思わず息を呑む。それほどの美少女だったのだ。

 少女は黒板の前に立つとチョークを握り名前を書く。

『御堂沙羅良』

 先輩転校生とは比べ物にならないぐらい整った文字だった。
 生徒らに顔を向けた少女は、完璧な笑顔を見せる。

「御堂沙羅良です」
 歯切れのいい涼やかな声だった。男子達が早速うっとりと聞き惚れてしまう。

 桔平だって男だ。さすがに聞き惚れるまではいかないけれど、純粋に綺麗な声だなとは思う。

 転校生の声が、頭の中で自然と繰り返される。

 ごどうさららですごどうさららですごどうさらら…ですごどう…さらら

 桔平は目を見開く。

(デスゴッドサララ!?)

 だけどすぐに苦笑した。

(こうも無理やり結びつけるなんてどうかしてるぞ。そりゃ、転校生って立場は同じだけど、だからって死神ってはずがないじゃないかよ)

 少々神経質になっている自分に呆れ返っている時だった。教室の後ろの扉からリムルが飛び込んでくる。

「すみません、忘れ物を取りに行ってました!」

 手ぶらなのを見ると、弁当は廊下にある個人ロッカーの中に入れてきたようだ。

 自分の席へと向かおうとするリムルは、当然教壇に立つ転校生に気づく。

「あっ!?」

 リムルの顔がパッと明るくなる。

 そして、嬉しさと驚きの篭った声で叫んだ。

「サララさんじゃないですか!? どーしてこんな所にいるんですか!?」

 その瞬間、桔平は最悪の現実ってのを確信した。

 確信するしかないってものだった。
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